Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

カウラ巡礼の旅を終え

2014-08-14 | Weblog
帰国しました。

空路、シドニー~クアラルンプール7時間半、トランジット3時間半、クアラルンプール~成田7時間、直通ならヨーロッパやアメリカに行けている時間である。
さいきん噂のマレーシア航空だが、まあ、シドニー発便のFAにおそろしく愛想がない人がいた他には問題もなく、心配ご無用であった。
機内では珍しく映画を観た。吹き替えは嫌なのと観たいものがなかったので、英語字幕付きの物を選んだ。行きの便では何も観なかったのだ。

ソン・ガンホ主演の韓国映画『弁護人』。
「釜林事件」(釜山の「學林事件」?)がモチーフ。1981年第5共和国当時、公安当局が釜山で読書会をしていた学生や教師、会社員など22名を令状なしで逮捕後、不法監禁し拷問した事件。苦労して弁護士になり実益中心だった主人公が国家保安法と向き合い「人権弁護士」に変貌していく過程を描く。
国民的大スターがこうした反体制の民主化弁護士を演じる映画が普通に娯楽映画として作られ、おそらく多くの観客の支持を得たであろうこと自体が、韓国自体の「民主化」の懐の深さを感じる。……じっさい、帰国して調べると、同作は韓国では早々に歴代トップテン入り、更にランクアップ中の最近の大ヒット作だという。
そして、驚いたことには、主人公は役名こそソン・ウソクだが、若き日の弁護士時代の故ノ・ムヒョン元大統領をモデルにしているというのだ。そりゃ大ヒットするはずである。
ノ・ムヒョン大統領の死は、私が韓国アルコ劇場で『屋根裏』の稽古をしている真っ最中だった。稽古場で、食堂で、しばらくは、韓国俳優たちは、皆、涙、涙、だった。彼が韓国民主化の旗手であったのは説明するまでもないが、ほんとうに、こんなにも愛されている大統領だったのだ。
劇中、主人公が法廷で「韓国の全ての権力は国民のものだ。国家とは国民です」という意味のことを言う。憲法の説明ではない。民主主義というものが備えているべき根幹のことなのだ。

もう一本は香港映画『イップ・マン 序章』。主演のドニー・イェンがいい。後半は日本軍占領下の時代となり、見事に反日映画であった。

もう一本は『ジゴロ・イン・ニューヨーク』、ジョン・タトゥーロがウディ・アレンごっこをウッディ・アレン本人とやっている不可思議な映画だが、本家ウッディ・アレン映画の面白さはない。

なんだかんだ原稿が溜まっていて、飛行機の中でも進まず(進まないので映画を観たという言い訳もあるのだが)、帰国後も一本だけ上げたがまだ終わらず、ずっと原稿にかかっている。

写真は、『カウラの班長会議』カウラ公演レセプション時の写真。
この、挨拶している私の傍らに、日本兵の方が来てくださったということだが、写真には写っていない。
http://blog.goo.ne.jp/sakate2008/e/1b1924be07b1374c311fdad28cfa4bd0

カウラを離れて以来、演劇をやりに行ったのではなく、巡礼の旅だったのではないかという印象がいっそう強くなっている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする