A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記67 「勅使河原宏展」

2007-07-25 23:23:46 | 書物
タイトル:勅使河原宏展 限りなき越境の軌跡
デザイン:大溝裕(Glanz)
発行:埼玉県立近代美術館、財団法人草月会
発行日:2007年7月14日
内容:
同名展覧会の図録。

家元継承といけばな
竹のインスタレーション
陶芸と『利休』と茶会
映画と草月アートセンター
前衛芸術運動と「世紀」

購入日:2007年7月16日
購入店:埼玉県立近代美術館
購入理由:
勅使河原宏の生誕80年を機に開催されている展覧会の図録。
残念ながら展覧会は、この美術館では規模も小さく、出品作品も展示も物足りないものとなってしまった。壮大な竹のインスタレーションを数々手がけた宏なのだから、美術館の入り口や建物全体を使って、スケールの大きいインスタレーションを見せてほしかった。草月流の創流80周年と無理やり合わせたのと、展覧会準備期間の少なさがこのような物足りなさが残る展覧会となってしまった理由だろう。以前、世田谷美術館で開催された<勅使河原蒼風展>はまれに見る充実した展覧会であった。実に調査・研究されたボリュームのある内容と展覧会カタログはいまも愛着がある図録のひとつである。この宏展カタログは、サイズが大きく収まりが悪く、ページ数も少ないし、学芸員の書き下ろし論文ひとつない。過去に書かれた宏関連のテキストを収めたのはよいとしても、それでも少ない。さらに、この勅使河原宏展は、宏を以前から知っている人はともかく、初めて名前を知った一般の人、学生などにははなはだ不親切な内容である。「映画と草月アートセンター」のセクションにいたっては、資料、展示の情けなさにがっかりしてしまう。これだけで展覧会ひとつ開けるくらいの充実した活動なのだから、もっと研究の成果を見せてほしいところだ。
しかし、勅使河原宏という傑出した人物の全貌とはいかないまでも、その片鱗は触れることができるのでまずはよしとしよう。次は生誕100年を機により大規模に、その全貌を見せてほしいと思う。そのための布石としてこの展覧会を予告編としてとらえることにしよう。

勅使河原宏展 限りなき越境の軌跡
2007年7月14日(土)―10月8日(月・祝)
埼玉県立近代美術館