A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

TOUCHING WORD 003

2007-07-04 22:42:38 | ことば

「見えぬ意味を見ぬ意味と」

見えた意味を見る意味と
見る意味が見える意味と
見えぬ意味を見る意味と
見えた意味が見えぬこと
見える意味を見る意味と
見えぬ意味を見ぬ意味と
見えた意味を見る意味と
見る意味が見える意味と
見る意味が見えぬ意味と
見える意味を見る意味と
見えた意味が見えぬこと
見えた意味を見ぬ意味と

(p.181 大辻清司「見えた意味を見ぬ意味と」草稿より 1980『大辻清司の写真 出会いとコラボレーション』フィルムアート社、2007年)

未読日記50 「ひとのかたち」

2007-07-04 22:36:38 | 書物
タイトル:アンリ・ミショー ひとのかたち
編著:東京国立近代美術館
AD・デザイン:近藤一弥
出版社:平凡社
出版年:2007年7月2日
内容:
すべては、ムーヴマンである。

孤高の詩人にして、異能の画家。20世紀フランスが生んだ偉大なる幻視者アンリ・ミショー。奔流となって流れ出すエネルギー、無垢なるイマージュ、そのなかからたちあらわれる怪物、亡霊、そして「ひとのかたち」。全59点の絵画・デッサンと、詩人本人の言葉によって織り上げられた、恐るべき詩画集。
瀧口修造「アンリ・ミショー、詩人への私の近づき」特別収録。

紙の上に残された線状の痕跡は、彼に誰かを思い出させる、母や父を、すでに人間を、あらゆる人間たちを代表する人間、人間そのものを。
―アンリ・ミショー―
(帯コメントより)

購入日:2007年6月30日
購入店:東京国立近代美術館ミュージアムショップ
購入理由:
アンリ・ミショーというと、メスカリンを服用したドラッグによる制作がエピソードとして名高いが、私の興味はそこにはない。残された作品を見て、どの部分がドラッグによる影響だなどと指摘することに意味はないからだ。それにミショーのドラッグ使用は、「絵画のため」だった。生活や人生の上で、ドラッグを求めたわけではない。彼にとってそれはひとつの「実験」だった。
ドラッグが問題だというのなら、作品制作をした晩にどんな食事を摂ったのか、アルコールは飲んだのか、お菓子は食べたのか、そういうことはなぜ問題にされないのか。話をもとに戻そう。
ミショーの言葉によれば、描かれた線に「ひとのかたち」を見いだす傾向があるらしいが、そのような作品もたしかにある。だが、そのような「ひとのかたち」に見えてしまう作品より、「ひとのかたち」に見えない作品の方が私には印象深かった。線が線として自立し、そこに存在するさまは見飽きない。ドローイングというと、作品制作の下描きという位置づけが一般的だが、ドローイングだけで十分作品になるということをミショーは証明している。


未読日記49 「アンリ・カルティエ=ブレッソン」

2007-07-04 00:02:49 | 書物
タイトル:アンリ・カルティエ=ブレッソン 知られざる全貌
編集:東京国立近代美術館(増田玲、竹内万里子、保坂健二朗)
   日本経済新聞社文化事業部
デザイン:今井千恵子(n.b.graphics)
出版社:日本経済新聞社
発行日:2007年6月19日
金額:1800円
内容:
同名展覧会の図録。「決定的瞬間」という言葉で有名な言わずと知れた写真家ブレッソンの大回顧展。アンリ・カルティエ=ブレッソン財団とマグナム・フォトにより組織され、作家自身の構成により初期作から代表作まで、貴重なヴィンテージ・プリントを含む350点以上の写真作品を中心に、初公開の資料なども併せた約500点が展示される展覧会。2003年にパリのフランス国立図書館で開催された時点では、ブレッソンはまだ亡くなってはいなかったが、結果的に回顧展となってしまった。

購入日:2007年6月30日
購入店:東京国立近代美術館ミュージアムショップ
購入理由:
ブレッソンの写真を膨大な質・量で見ることのできる展覧会。やや窮屈な展示が地味な印象を与え残念だが、この量ではいたしかたない。
 当然500点もの図版を掲載するカタログなど国際巡回展の日本展では望むべくもなく、バッサリと切り捨てて30点ほどの図版のみ掲載したコンパクト(過ぎる)なカタログ。岩波書店からは『アンリ・カルティエ=ブレッソン写真集成』として写真集が発売されているが、こちらはB4判変型・カバー・函入・432頁の大作。ちなみに価格は11,550円なり。
ブレッソンの写真で気になった点を2つほどあげたい。
1つは、寝ている人がよく撮影されている点。シャイな人だからか、寝ていたり、寝転がっていたりする人をよく撮影している。そのシチュエーションは、画家を目指していた彼にとって「静物」のようなモチーフだったのだろうか。
2つ目。影を被写体として捉えていること。建物が作り出す影。人の影。有名な「サン=ラザール駅裏」でも水たまりを飛び越えている人物の影が、反射として捉えられて画面に動きとユーモアを与えていた。ブレッソンの影。その影を追ってみたい誘惑に駆られている。