A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記53 「プロダクション・ノート」

2007-07-09 22:49:41 | 書物
タイトル:プロダクション・ノート 勅使河原宏・映画事始
編著:野村紀子
発行:studio 246
発行日:2007年4月14日
価格:2500円(税込)
内容:
いけばな草月流3代目家元にして、映画、陶芸、書、絵画、舞台美術、オペラ演出、作庭などさまざまなジャンルで活躍した勅使河原宏の映画関連の記事、インタビュー、座談会、関係者のインタビューなどを中心にまとめたアンソロジー。
編著者の野村紀子氏は、元勅使河原宏プロダクションのプロデューサー。

贈呈日:2007年7月3日
草月関係者の方に頂いたもの。総ページ数422頁という力作な本に、いまから読むのが楽しみな一冊。本年は勅使河原宏の生誕80周年にあたり、今週末からは、埼玉県立近代美術館において回顧展が開催され、この本もそういった記念出版だと思われる。
「いったい勅使河原宏とは何だったのか?」
いけばなの家元を父に持ち、その息子として生を受けた宏の名が世に知れるのは、いけばなではなく映画だった。いまで言えば異業種監督と言われかねないが、もともと映画監督デビュー時にはいけばな作家としては活躍してはおらず、むしろ絵画作品を制作する画家だった。閉鎖的ないけばな界にあって、草月が行ったいけばなの革新は人々のいけばなに対する目を変えたが、その草月の創始者勅使河原蒼風とは異なった才能を発揮したのが宏だった。最終的にはいけばなの家元に納まるものの、長くいけばなのフィールドには入らなかった。なぜ、宏はいけばなを受け入れなかったのか?あるいは、なぜ、いけばなの道へ進まなかったのか?
そして、現在のいけばな界は勅使河原宏を忘れ、映画業界も彼の名前を忘却してしまった。勅使河原宏の映画及びいけばな、その他さまざまな作品と時代を通じて、勅使河原宏という人物が残した作品を考えてみたい。そのための資料収集・調査がこれから始まる。

「勅使河原宏展 限りなき越境の軌跡」
2007年7月14日(土)~10月8日(月・祝)
埼玉県立近代美術館