記紀神話においては神さまは不老不死です。
たとえ負けても、どこかに引き籠ったり(スサノオは高天原でボロ負けしたあとは地上で暮らしています)、分裂したり(イザナミを焼き殺した火の神はイザナギに切られますが、分裂して地上に散らばります。イザナミは焼き殺されますが、黄泉の国で永遠に生きています)して永遠の時間を生きます。
アマテラスの息子たちも不老ですが、殺されると死にます(アメノワカヒコはオモヒカネが投げた矢が当たって死にました)。
そして、アマテラスの子孫である歴代天皇は、みんな病気にかかったりして、普通に死んでいます。
では、なぜ、神の子孫である天皇は、普通に死ぬようになったのでしょうか?
神さまが人間のように死ぬようになったのは天孫降臨したニニギノミコトからなのですが、それには、天孫降臨にまつわる、もう一つの恋が関係しているのです。
ニニギノミコトが笠沙の海岸(鹿児島県の薩摩半島の西)を歩いていると、メチャクチャ可愛い女の子に出会いました。
「きみの名前は(^_^;)?、ど、どこの娘さんかな(#'∀'#)?」
一目ぼれしたニニギはさっそく名前を聞きます。
「え、えと、山の神オホヤマツミの娘でコノハナノサクヤヒメと申します(#'∀'#)」
そう、彼女こそ木花開耶姫(コノハナノサクヤヒメ)なんですなあ(^▽^)!
大阪市に此花区という区がありますが、元になったのは木花開耶姫が元だったんです。
女の子の名前でもサクヤというのはクラスに一人はいるくらいにポピュラーな名前ですが、その元々も、このサクヤでしょう。
花博の日本館を『咲くやこの花館』と言いましたが、もちろん、サクヤから採った名前であります。
一目ぼれしたニニギは、スグにプロポーズしてサクヤを妻にします。
そうすると山の神も心から喜んで、様々な嫁入り道具といっしょに、サクヤの姉の岩永姫(イワナガヒメ)も送ってきました。
「あ、おねえちゃん!?」
「エヘヘ、あたしもついてきちゃった~、ニニギくんもヨロ~(#´艸`#)」
いま、妹をもらうと洩れなくお姉ちゃんも付いてきます!
なんだか、テレビ通販のノリですなあ。
テレビ通販に付いてくるオマケは、たいてい型落ちの在庫整理品だったりします。
「こ、これが、サクヤの姉ちゃんなのか(⊙△⊙)」
「うん、ま、よろしくね(^_^;)」
「ちょ……ちょっとなあ……」
イワナガは、妹の十倍くらい大きくて厳ついオネエチャンであります。ルックスも名前の通り岩のようにゴツゴツしております。
さすがのニニギも、ちょっとビビってしまい、テレビ通販にはクーリングオフがきくのを思い出して、イワナガを送り返してしまいます。
後日、父の山の神から手紙が届きます。
――姉のイワナガを送ったのは、ニニギノミコトが巌のように丈夫に健やかに永遠の命を持たれることを願ったものです。イワナガを送り返されましたのでミコトの御寿命は、そう長くはないでありましょう――
それ以来、歴代天皇は人と同じほどの寿命になりました。というオチになっています。
黄泉比良坂の千曳の大岩を挟んで、イザナギとイザナミが言い争って、人は一日に500人ずつ増えることになったというエピソードと対になる話だと思います。
イワナガヒメは、山の芯(コア)になる岩を現しているのだと思います。芯がしっかりしていないと、地震や大雨で、一見不動に見える山でも簡単に崩れることを古代の人々は知っていたんですねえ。
コノハナノサクヤヒメは、その巌の上に根を張って可憐に咲く花や果実を現しているのでしょう。
一見、山の神の意地悪に見えますが、事の本質を現したものだと思います。