やくもあやかし物語 2
最初のお供はネル(コーネリア・ナサニエル)だ。
魔法特性と魔法耐性が高いこともあるんだけど、本人が強く希望して「強い意志も特性と耐性を補完してくれるだろう」とソフィー先生が判断して決まった。
ハイジも行きたがったんだけど、くわせものの影響が抜け切れていないので外された。
「ウウ……ネルの次はハイジだからなッ!」
涙目になって強がりを言うハイジ。
『王女さまや学校のみんなも見送りたがっていたんだが、派手なことをやると敵に悟られてしまうからな』
ソフィー先生が御息所の口を借りて事情を説明してくれる。
御息所は樺太の時と同様、手袋の防護服を着てポケットに収まっている。
『やくものミチビキ鉛筆でも飛べるが、同伴者と合わせなければならないので魔石を使ってくれ』
「これだ」
ネルが左手で襟をまくってペンダントの魔石を見せてくれる。右手の魔石を受け取って首に掛ける。
うわ?
首に掛けたとたん体が浮いてビックリする。
『少し飛べば慣れる。必要なものは日に一度魔石を通して送ってやる、では、気を付けて行け』
「「はい」」
『定時連絡を忘れんようにな』
「き、気を付けて行ってこいよなぁ(#°△°;#) 」
声を震わせるハイジ。
いっしょに付いていけない悔しさと友情が滲み出ている。
「もういい、我慢してないでトイレ行ってこい」
「ウ……ごめーーーん(>Д<)!!」
お尻を押えながらトイレにダッシュするハイジを見送って裏庭に出る。
『もうすぐ月が隠れる…………今だ!』
セイ
ネルと小さく掛け声を揃えて地面を蹴る。
あらかじめ見当をつけていた夏の大三角(ベガ、デネブ、アルタイル)の真ん中を目指して飛んで行ったよ、キーストーン奪還の旅にね。
☆彡主な登場人物
- やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
- ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
- ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
- メグ・キャリバーン 教頭先生
- カーナボン卿 校長先生
- 酒井 詩 コトハ 聴講生
- 同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
- 先生たち マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
- あやかしたち デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖)