真凡プレジデント・24
待ってるだけじゃつまんないからさ~
姉貴が即興体育会系バラエティーを公園で始めたのは、そういうことらしいが、別に咎めているわけじゃない。
「学校の体育祭に欠けているのは、そういうことだと思うのよ」
「学校って、真凡の?」
「そう、大学芋食べる前に聞いてくれる」
「え、あ、うん、きくきく」
押しのけた大学芋を目で追いながら、それでも熱は籠ってる。可愛い妹への愛情ではなく五百円で三百グラムの大学芋への愛着からだけど、まあ、いい。
「もちろん体育祭でもアナウンスはあるんだけどね、なんちゅうか、無機的にお品書きみたいなプログラム読み上げたり、召集を掛けたりだけで、熱がこもってないのよね。肝心の競技になったら沈黙するし、さっきのお姉ちゃんみたいにやれば、みんな集中するし盛り上がると思うのよ」
「それはそうだろうね、でもさ、そういう楽しい話は食べながらだったら、もっと充実すると思うんだけど……」
「だからさ」
「ちょ……」
「だーかーらー」
クッションでオアズケバリアーを展開して、核心部分を言う。
「なんで、オアズケなのよ~(´;ω;`)ウゥゥ」
「お姉ちゃん、体育祭のアナウンスやってよ。お姉ちゃんも、うちの卒業生で気心も知れてるしい、みんなも喜ぶしい」
「そりゃダメだ」
「どうしてよう、放送局も辞めたことだし、こだわることないでしょ!」
「やっぱ、プロのアナウンサーがベシャリやったら異質すぎるって」
「そう?」
「そうだよ、焼き芋の中に大学芋が混じってるよりも異質。2Dのアニメに、そこだけが3Dみたいな。実写の中に、そこだけがアニメみたいな。肉まん食べたら、真ん中がアンコだったみたいな。餃子を食べたら中身がチョコレートだったみたいな。ワサビの代わりにウグイス餡を仕込んだみたいな」
「例えが、食べ物ばっかみたいになってるし」
「いや、だーかーらー、早く食べさせなさいよー!」
「だったらさ、学校に通って放送部のコーチとかやってよ」
「えーーだーるーいーよ、そんなのおおお」
「だったら、お芋はオアズケよ~~~(^^♪」
思わずメロディーが付いてしまう。わたしって、意外にSなのかも。
「そうだ、真凡がやんなよ! うん、姉妹だから声質にてるしい、ちょっち劣化版的わたしで、いいよいいよ!」
「ちょ、ちょ、迫ってこないでよ。く、来るなあああ!」
そういういきさつで、わたしはアナウンスの特訓を受けるハメになってしまった。
☆ 主な登場人物
- 田中 真凡(生徒会長) ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
- 福島 みずき(副会長) 真凡たちの一組とは反対の位置にある六組
- 橘 なつき(会計) 入学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き
- 北白川 綾乃(書記) モテカワ美少女の同級生
- 田中 美樹 真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、家でゴロゴロしている。
- 柳沢 琢磨 対立候補だった ちょっとサイコパス
- 橘 健二 なつきの弟
- 藤田先生 定年間近の生徒会顧問
- 中谷先生 若い生徒会顧問