大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

2013 ピッコロフェスティバル O・B・F『花ちゃん』

2013-08-17 21:39:23 | 評論
2013 ピッコロフェスティバル
 O・B・F 『花ちゃん』
      

 作:福井真里子   演出:OBF演劇部

 大汗かいて、ピッコロシアターにはいると、とても涼しかった。いや、寒かった。

 400はあろうかという観客席は一割に満たない38人。終演時に、やっと60ほど。
 グチはホドホドに中身に入ろう。

 多すぎる暗転
 10回までは数えたが、あとは数え切れなかった。おそらく15回はあったであろう。場転も含めれば、20ほどもあり、うまく繋いではいるが、この映画並みの転換は観客の集中、そしてストーリー理解の妨げになった。暗転を含め、場転は4回ほどが限度であろう。

 届かない思い
 作者は生徒の様々な苦悩を知りすぎて、それを盛り込みすぎ、話が冗漫、冗長に流れ、肝心の花ちゃんが描き切れていない。主人公花ちゃんの話に絞り、それを際だたせる工夫が必要である。また、主人公の名前が、花ちゃんと、さやかと二つ使われ、少し混乱した。
 話の根幹は、足にガンを煩った花が、凹みながらも、仲間の励ましや、努力を目の当たりにして、ガンと正面から取り組む気持ちを持ち、カタルシスで幕になる。
 正直、話が硬く、硬いわりには、登場人物がうまく花のカタルシスに有機的に絡んでこない。本から書き直さなければならないだろう。

 花が、くじけそうな気持ちを持ち直し、また前向きに人生に取り組むための、支点になる設定(お話)が必要であろう。と、同時に、こういう芝居が陥りがちな「ああ、なんて可愛そうな! なんとけなげな!」というのは個人的には趣味があわない。

 芝居とはエンタメであるので、どこか突き抜けたところや、暖かく爆笑できるような設定が欲しい。

 わたしなら、こうする
 春華を演じた柳井さんのガタイが女子で一番大きいことを利用する。
 足の切断の可能性がある花ちゃんを、並の励ましや、「わたしも、こんなに不幸」をいくら並べても、花ちゃんの救いにはならない。花ちゃんより天文学的に辛い目、それも、今の高校生が見て共感しそうな、クールで、少し笑える設定にする。

 実は、春華は、25年前に大事故に遭い、脳みそ以外全てツクリモノという義体であると設定する。ギタイという言葉は『攻殻機動隊』の中の擬体と言う言葉で、高校生には、たいがいお馴染みである。そこをヒントに義体を設定する。日本政府が、老齢化社会を予想して、秘密裏に研究。これに防衛省もイッチョカミしていたとする。
 25年前から、義体の先行実験がはじめられ、春華は、その時実施された10体の最後の生き残りである。仲間9人は、初期不良が原因であいついで死に、生き残っているのは春華一人だけである。
 最初は技術が未熟で、マツコデラックスほどの大きさがあったが、研究が進み、今の大きさにまですることができた。ただ義体であるために成長することが出来ず、三年間高校生をやっては、また別の高校に転校するということをくり返している。間にメンテナンスの期間も入るので、7回目の高校生活になる。
 最初は、歩くことも困難だったようなことを、花に実演して見せる。また義体ゆえの特技も披露、例えば黒子を使って器用に早くものが動かせたり、アルソックのように目から光線を出し(保険のCMのように額でもかまわない)ものを破壊(競技用のピストルなどを、黒子に撃たせるとか、シンセと照明のコラボでやるとか)する。
 で、春華は、このコンクールが終わるとメンテナンスのために、学校を辞めることになっていることを花に告白。そのために二人してがんばる生活を真ん中に据える。こうすると春華の存在が大きくなるので、タイトルも『花と春華』……では、昭和臭いので『二つのメタモルフォーゼ』あるいは『メタモルフォーゼ』あたりかなあ。

 二つあるエンディング
 コンクールの終わりを芝居の終わりと勘違いして、拍手した人がかなりいた。
 やはりエンディングは、劇中劇としてのコンク-ルのドン落ちに持ってくるべきであろう。序盤で花の病気の発覚、中盤で、花の葛藤と春華の真実、終盤で、春華との別れを前提にした、花の努力とコンクールの成功と、カタルシス。ラストは以前使った『お別れだけどサヨナラじゃない』を全員のコーラスでもってきてもいい。

 演技とは、どう受け止めるか
 よくできた役者さんたちだが、やはり待ちの芝居になってしまうところが多く、観客が共感しきれない。ひどいところでは、上手さに誤魔化され、舞台でおこなわれていることが理解できない。特に行動の中断は、それだけの反対行動が相手役の中になければ、無視するぐらいの厳しさが欲しい。生徒が足が痛いと言って、ひっくり返ったときに、男の教師はなにをするだろうか? あんなに次の転換を待っていてはいけない。傷ついた娘を母が抱きしめるタイミングが遅い。遅いため、その後のハグがニセモノになってしまい、ダンドリになってしまった。

 邪魔なパネル
 間が空くだけでなく、前のパネルが邪魔で、後ろの役者が見えなくなっている。わたしなら使わない。
 とっても古い技法だが、舞台の角に椅子を置き、役者を常に待機させる。そして、空きの役者には、観客と同様に、芝居を見せ集中させる。芝居の最中に役者に自己紹介をさせる。古くさい異化効果だが、今の高校生には新鮮だろう。

 役の彫り込み
 高校生としては、水準以上の演技ができている。役も立ち上がっているのだが、役者の個性に頼りすぎ、役の彫り込みが浅い。鶴見の『ROCK U!』は、今少し、ちょっとした台詞、ちょっとした動きに人間を感じさせてくれた。あの本も昭和的「かわいそう」に溢れ、往年の日活映画を思わせてくれ、なんとかロックで、新しさを出そうとしていたが、プロットそのものが古くさく、わたしは本としては評価していない。
 しかし、日本一をとるだけのことはあり、脇役も含め、役の彫り込みが確かで、その点秀逸であった。

 この作品も、想像力を高め、彫り込みをいっそ確かなものにしてもらいたい。

『風立ちぬ』が、ヒットしているが、あの作品に限らずジブリの作品には、ガヤの台詞にもちゃんと台本があり、人物の彫り込みを確かなものにしている。

 近代化大改装と、役者諸君のいっそうの努力を期待。

 音の使いすぎ
 場転や、雰囲気を出すための効果音、ちゃんと芝居をしていました。しかし多すぎて芝居の邪魔になってしまいまった。わたしなら、一切効果音は使わない……コンクールの劇中劇には必要かなあ。

 照明の触りすぎ
 サス芝居が多く、一見劇的に見えるが、あれはやるほどの効果がない。くり返すが、わたしなら、照明はツケッパでやる。

緻密であって欲しい無対象
 パネルと椅子とベンチしか出てこない。パネルが出てきて台詞の中でわずかに生きてくるが、道具としての意味は無い。大半の状況を役者の無対象演技で見せなければならないが(特に狭い……だろう)部室などは、緻密な設定をして、それぞれの場所や、カバンを置く位置、窓の位置などは、やっておく必要がある。ゴテゴテ飾らなかったことには共感できたが、無対象であるがゆえに、設定と、それをもとにした稽古をつんでおかなければ、芝居が痩せて見える。

☆厳しい批評
 いつものコンクール以上に厳しく書きました。誉めることは簡単ですが、それでは伸びません。
 観客の大半は、千円以上の交通費と半日に近い時間を使って観にくるのです。この点においては、プロも高校生も関係ありません。観客が使ったお金と時間に見合うモノを見せなければ、マズイという点では、高校演劇は甘いと思います。
 身体表現やエンタメ性では隣接する、軽音楽、ダンス、吹奏楽、チアリ-ディングなどの、トップクラスの完成度は非常に高くなってきています。そのせいか、軽音楽のスニーカーエイジの観客動員力はプロ並みであります。また、ネットで公開されているグランプリのパフォーマンスは、素人のわたしですが、プロ級だと思いました。
 息子が軽音楽部で、百人以上いる部員の中から選抜されて、スニーカーエイジに出場しましたが、選外でした。ギターの練習、ボイトレを含むボーカルの練習に、日に5時間はかけて、時間を作っては貸しスタジオを自分たちで探し、その集中とレッスンは『スゥイングガールズ』を思わせるものがありました。ギターもボイスも、一年の時と比べると段違いに上手くなりました。簡単にいえば聞かせる曲ができるようになりました。
 しかし、エンタメとしては硬すぎ、MCも拙いモノです。そこを指摘すると露骨にいやな顔をします。でも、結果は、そこを指摘され、予選落ちしました。今少し高校演劇は表現のための努力が必要でしょう。だから厳しく書きました。OBFには、まだまだ伸びしろがあります。だから厳しく書きました。

 大阪からは、OBFしか出ていませんでしたが、こういう取り組みを連盟はもっとPRしていただけないでしょうか。


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大人ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『ホワイトハウスダウン』

2013-08-17 05:44:51 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『ホワイトハウスダウン』


これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


 舞台は最高、役者は揃った、脚本…う~ん、上手い!今回の事件の背景と、主役級の生活がサラッと、しかも過不足無くながれる。

 J・ヴァンダービルト(アメイジング・スパイダーマン)の脚本VERYGOO! 騒動の起点にも無理が無い、何より「エンド オブ ホワイトハウス」的な兵器威力のアンバランスや設定の嘘が無い。ええんとちゃうのん! アクションも切れない、状況は刻々変化していく。C・テイタム……よろしいんじゃないっすか!J・フォックスの闘う大統領も自然だすわ。政治オタクの娘エミリーのJ・キングにも拍手!アメリカじゃ映画館でスタンディングオベイションが有ったんじゃないかってくらいの最高の見せ場がラストに有る……拍手しながら泣いたんじゃないですか?
 しかし、J・ウッズ……歳食ったなぁ……つい最近「スペシャリスト」やら「ビデオドローム」を続けて見たから余計に感じますわ。でも、この人の存在感は独特、しかも健在。彼からすると E・ハリスの痩せさらばえた姿が気に成るなぁ(っと 本作には関係ないですね…病気じゃなきゃいいんっすが)

 ……と、まぁ ここまで褒めたら大絶賛かっちゅうと、残念ながらちょと待った。やっぱりなぁ~と言うべきか、所詮と申し上げるべきか……R・エメリッヒは大スケールエリアでなんもかんもブッ壊す映画がお得意さん、サスペンスを一つ一つ組み上げていくのは苦手なようですね。素材となるシーンはタップリあるし、役者も巧い、緊迫シーンに何気に挟んだジョークも効いてはいるけど……なんか繋がりがよろしくない。  だからスリルが盛り上がってこない。ストーリーテリングに破綻はないので(脚本の勝利)こいつは編集のミエですねぇ。パンフを見た限りではeditorのA・ウルフは大した仕事をしていない。製作費、それなりにかかっていると思うが、それなら何故こんな半端な人間に編集を任したんですかねぇ?
 監督も製作ウテ(エメリッヒの妹)にも、こういうサスペンス組み上げ作品に慣れていないから人選をミスった(当て推量ですが 恐らくは当たっているはず) 進行が噛み合わない位は可愛いもんで、J・ウッズの後ろに、もう一人大物が隠れているのがチョンバレ。しかも、それが誰だか割りと早くにバレてしまう。 ホワイトハウスに殴り込む連中も、元軍人設定ながら、なんやら弱いし……軍人なら絶対やらない銃扱いをしている。他が割としっかり作ってあるだけに、かなりデッカイ嘘に見える。
 事の真相が薄皮を一枚ずつ剥いでいくようにして見えなければならないのに、画面から受ける印象はゴタゴタしていて交通整理が出来ておらず、大きな裂け目が何ヶ所もあり、そこから伏線の帰結が覗けてしまう。嗚呼~!
 結論、この本はもっとサスペンスドラマの巧い監督に任せるべきでした。百倍面白い、最後までラストが読めない映画に成った筈ですわ。
 見に行く方は、映画のどのあたりでラストを見抜けるかってな楽しみ方も有ります。全否定はしませんが、余りに惜しい。
 そういや「崖っぷちの男」なんてな映画も同じように失敗しとりましたなぁ。「完全なる復讐」でも見てお勉強し直していただきたい(偶然、J・フォックスも出とります) 他にも「ユージュアルサスペクツ」やら「フォーンブース」やら、教材は腐るほど有ります。大して期待していなかっただけに、各パーツの仕上がりには感心しました。それだけに惜しい(泣)

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