大橋むつおのブログ

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大人ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評『THE MASTER/相棒/ジャックと天空の巨人』

2013-03-24 15:30:45 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評
『THE MASTER/相棒/ジャックと天空の巨人』


 これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が身内に流している映画評ですが、もったいないので、本人の了解を得て転載したものです
☆THE MASTER
 これも 色んな顔を持った作品です、見る人によって全く違う感想が出てくる事と思います。「サイエントロジー」を研究して 下敷きにしてあるとか。「サイエントロジー」っつっても T・クルーズが信者……くらいしかしりませんが、まぁ 大体の想像はつきます。
 本作は 別段 アメリカの新興宗教のプロパでも糾弾でもありません。いうなれば 人間の存在の意味を問う作品です……と 言い切ってもいかんのでしょう。
 舞台は 先次大戦が終わって間無しの'50年、当時は戦争によるPTSDは隠されていた。病気隠蔽を告発する映画は有ったが、総て「お蔵入り」にされた。 朝鮮戦争に従軍した兵士は先次大戦従軍の兵士から「勝てなかった兵隊」と揶揄され、ベトナム従軍組は「勝てなかったばかりか、殆ど病気、しかも卑怯者」と罵られた……戦争の構造は全く同じだが、この間に情報の一般化が恐ろしく進み、今回の「アフガン・イラク」では 隠すのではなくコントロールしようと画策された。結果はご存知の通りです。
 フレディ(J・フェニックス)は太平洋で戦っていた海兵、帰国はしたものの深刻なPTSDで仕事が続かない、パーティーの行われている船に潜り込む。どうやら一悶着あって、翌日引き合わされたのはパーティーの主催者 新興宗教の”マスター”ランカスター(P・S・ホフマン)。彼はフレディを許したあげく、一行に加える。フレディはマスターに気を許した訳ではないが 強く惹かれる。マスターもフレディを相手に様々な精神的実験を繰り返すが 単なるモルモットとして扱わない。明らかに「自分には欠如した何かを持つ者」として遇する。 それを 横にいて冷静に見つめる マスターの妻(何度目かの)マギー/E・アダムスがいる。二人の男は保護・被保護/支配・被支配の立場を微妙に変化させながら同行するが、やがてフレディの方から別れて行く。数年して再度会うが、互いに同道できる存在では無くなっていた。
 さて、幾つもの解釈が出来る本作が私にはどのように見えたのか。マスターは言う“人間はマスター(自分の事と言うより、その人にとっての先導者)無くして一人では生きて行けないのだ”と 自分を破綻者だと気づき始めているフレディはマスターに付き従うかに見えて、幾分かの距離を保っている。マスターはそんなフレディを相手に様々な精神的実験を行うのだが、それを通してフレディのなかにマスターの占める面積が増えていく。フレディはマスターに依存しているかに見えて、決して帰依はしない。フレディは この「ザ・コーズ」と名乗る団体にあって マスターが行う様々なメソッドの最大の理解者=体現者と成っていく。本人にその自覚が有るか否かは明らかにされない、が しかし 袂をわかって再会した時に 互いに出会った時とは異質の相手を見いだしている。この結末から マスター・フレディの関係は“クリエーター(ゴッド)と人間”というより“クリエーターとサタン”ないし“デーモニッシュなる存在と人間”の関係に感じられる。ちょっと解りにくいですよねぇ。
 日本の場合、新興宗教というと、幾つかの例外を除いて 必ず「日本神道」が絡みます、同じくアメリカで起こるそれは殆どキリスト教からの発生か、それに別な宗教の絡んだ物です。キリスト教の一派に「グノーシス」があります。長らく悪魔的異端と呼ばれ誤解を受けていますが、元々はギリシャ哲学を基にした理性的思考に導かれる一派です。歴史はキリスト教とほぼ同じ、ところが 後に呪術的地域信仰やまさにデーモニッシュな教えを隠し持った信仰までもが「グノーシス」を隠れ蓑として名乗った為 十把一絡げに「悪魔教」の汚名を着る事となったのです。
 これと同じく 近年のアメリカカルトに仏教的世界観(輪廻転生)を持つものや、プレ仏教としてのインド哲学~果ては メソポタミアの原始宗教を含むもの。 更に、宇宙物理の進行に伴って「老子」に傾倒するものなど百花繚乱。中には 日本の「オーム」並みにむちゃくちゃなカルトもあり、これらが同一視されるためどうしても妖しげなムードを身にまとう事になる。
 さらには、これらの教団が そのメソッドの中に「マインドコントロール」の手法を持つので この点がまずクローズアップされる。「洗脳」は旧ソ連がトップで、それを輸入した中共が二番手ですが、アメリカだって手を染めていた分野、戦後 大量発生したカルトのトップは この研究に関わっていた者が多いと指摘されています。
 こういった背景から、従来の信仰からは大きく逸脱した世界観を持つ事となるのです。 ふう~、この辺で止めます。まぁ こういう事情が新興宗教にはつきまとい 本作の“ザ・コーズ”を率いるマスターも同じ臭いをまとっています。ただ、映画そのものは それを否定も肯定もしていないため、あくまで「人間対人間」の葛藤と捉えざる得ない。
 これが私には「デーモニッシュ」に見えてしまうのです。いずれにしても、ここまで互いに相手の内面に入り込む作業は見ていて極めて恐ろしくあり、本作終了後 なんだか人を避けて歩いていました……まぁ、エレベーターのドアを塞ぐように立っているアベックや 傍若無人に振る舞うジャリを叱りもしない馬鹿親には「どかんかい!!」てなもんで……ま、その程度です。

 ちなみに 今年のアカデミー無冠とは言えキャスト三部門ノミネートは当然の結果、だれも受賞できなかったのも これまた当然の結末と申しておきます。
 
☆相棒 X DAY
 良く出来ている。捜一の伊丹刑事、立派に堂々たる主役で有ります。“捜一/伊丹憲一”なんてなドラマが出来ても不思議ではない。所がです、実に意外なところから水がかかった。直前に放送された「相棒最終回」の出来があまりにも良すぎた、それと 物語の背骨に成っている「金融危機X DAY」なる物が……アカンアカン これにさわるとネタバレになりますわ。
 ご覧になろうとされる方々に申し上げます。この点のリアリティには拘らない方がよろしおます。そのまんま受け入れましょう。
 ここをクリアすれば組犯の角田課長も大河内監察官、内村刑事部長まで なかなか美味しい。今回シリーズの成宮と元シリーズの二人以外全員登場! しかし 決して某CXの踊る某のように同窓会に成っていないのが脚本の手柄。シリーズがこのまま続けば 強力巨大な杉下グループが出来上がる予感がします。
 まぁ、楽しんで下さいませ。

☆ジャックと天空の巨人
 よ~~お 出来とりますわ。あんまり童話の書き換えは歓迎しないのですが、同じやるなら こんな風にしなはれという見本みたいな作品です。 これが以外やアメリカで大苦戦…てか、興行的には失敗作 制作費2億$に対して3週で5千万に届かない、世界収入で格好は付くだろうが、コスト分は国内で賄うのが鉄則、「オズの~」が快調に飛ばしているのとは対照的。
 子供に知名度が無くなっちゃったんですかねぇ。キャストの知名度がE・マクレガー以外 今一低いのもマイナスだったかも知れません。さて、日本ではどうなんでしょうか。
 今回 例によって「2D字幕」で都合のいい時間の物を探すのに一苦労。ほんまに誠に3Dなんか やめんかい~~〓 評論家の中でも3Dに対する苦言は多いんどすけどねぇ。アニメ旧作品の3D化をしてもあまり客を呼べない現実もあり、勝手に断末魔だと思うとるんですがねぇ……まぁ よろしおます。童話を1シーンとすれば、優に4シーン分のストーリーが詰まっており しかも 無理がありません。
 これが何故アメリカでコケるのか? 全く持って????????です。


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