マラソン讃歌

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この村に…東京ハングル版

2024年07月28日 | トーストマスターズ

この村にサンタクロースがやって来ない3つの理由

2024年7月27日 東京ハングル例会 

 今から26年前の1998年8月。私は朝鮮半島北部の東海岸にある「琴湖」という村にいました。そこでは韓国、アメリカ、日本の3か国政府が共同で原子力発電所の建設を進めていました。その建設主体であるKEDOという国際機関に日本代表として私が赴任したというわけです。現地には私の他にアメリカから代表が1名、韓国から代表2名と約600人の労働者が派遣されていました。

最近そこでの駐在体験を1冊の本にまとめて出版しました。これですー「ぼんくら外交官の北朝鮮日記」。もうお読みになった方もいらっしゃるかもしれませんが、今日はこの本に書いていない不都合な実情についてお話したいと思います。

それはその年のクリスマスシーズンに韓国から派遣された人たちとの何気ない会話で明らかにされました。

「ソウルのカトリック教会から来られた看護婦のパクさん、お尋ねします。今年この村にサンタクロースはやってくるでしょうか?」

 「杉山代表、よく聞いてくださいました。私は常々寒さに凍えるこちらの住民のために何かしてあげたいと心を痛めていました。そこで先日サンタクロースを気取って古着をわざと道に落としていったのです。ところが、それが北朝鮮当局に見つかってしまし、厳しく糾弾されました。つまり、住民に不足しているものはない、乞食に物を恵むようなことはするなということです。住民にはプレゼントをもらう自由もないのでしょうか。」

「なるほど、ここは「地上の楽園」で子供たちへの贈り物は、毎年2月16日の将軍様の誕生日にきちんと配られるということですか。外国人のサンタクロースからプレゼントなんか貰う必要がないというわけですね。」

 「診療所のDR.キム、いつも労働者の診察お疲れ様です。ソウルのご自宅には毎年サンタクロースがやってくるとのことですが、こちらはどうでしょう?」 

 「あのね、杉山代表。あのそりを引くトナカイグループのリーダー・ルドルフ君なんだが、若いのに鳥目なんだよ。だから明かりがないと道がよく見えないのさ。それなのに、ここでは毎日夜8時から翌朝の5時まで一斉に停電するじゃないですか。だから真っ暗闇の中では夜道が怖くてやって来れませんよ。」

 「その事情はよく分かります。私が空港からここまで5時間かけてやって来た時も、街路灯は全く見当たらなかったし、通過する村からも明かりが漏れていませんでしたからね。われわれが建設している発電所が完成すればおそらく停電はなくなるでしょう。」

  「韓国電力公社のシンさん、発電所の工事はうまく進んでいますか。楽しいクリスマスを迎えられそうですか?」

 「杉山代表、なかなか順調にはいきませんね。大金持ちで資本家のサンタクロースからの大きなプレゼントを期待しています。でも、この国では資本家は人民を搾取している犯罪者になるんですよね。当局に見つかったらすぐに捕まえられて強制収容所に送られるから、そんな危ないところにくるはずがありません。」

 「うむ、確かに。あれだけのプレゼントをただで配れる人物は、何か悪どい方法でお金儲けをしていると疑われてもしかたがないでしょうね。ただ、わいろも一緒に配れば大丈夫みたいですが…。」

すなわち、この村にサンタクロースがやって来ないほんとうの理由は、ひとつ、慈悲深い将軍様がいらっしゃるから、ふたつ、電力不足で明かりがないから、みっつ、犯罪者と間違えられてしまうから、だそうです。

皆さんはどう思われますか?

どうか、この本をお読みになって今一度近くて遠い北の国を思いやってください。

(本文/1440単語) 

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