今から9年前、私は定年退職を迎えました。その時東京論評トーストマスターズの友人から「不動産事業が面白いよ」と勧められ、不動産投資スクールに通うことにしました。2年間の学びを経て現在は合計7棟19室の家主として活動しています。
その事件は、一昨年に購入した千葉市内の大型団地にあるマンションで起こりました。購入直後にネットで「2LDK、フルリフォーム、家賃49,500円」として入居者を募集しました。すると、すぐに入居希望者が現れたのです。ペルーから来た若い日系人夫婦です。1歳の赤ちゃんとご主人のお母様もいます。リフォームしたてのきれいな部屋と目の前に保育園があるのが気に入ったようで、その場で入居申し込みがありました。そこで、いつものように家賃保証保険に加入してもらってから賃貸借契約を結びました。
それから1年たったある夏の日、突然電話が・・・
「もしもし杉山さんですか、初めまして私家賃保証会社の山内と申します。実は杉山さん所有のマンションで2か月間の家賃滞納がございました。弊社が責任をもって取り立てますので、ご心配は無用です。ただ、万が一家賃を払ってもらえない場合には契約を解除できるよう書面でも通知したいと思います。つきましては、催告書に署名捺印をお願いします。」 「えっ、そうなんですか。しっかりした夫婦に見えたのですが・・・」
そして、1か月後、また電話が…
「杉山さん、やっぱり払ってもらえません。というより連絡がつかなくなったのです。電話は切られていますし、郵便も宛先人不在で返ってきてしまいました。こうなったら裁判で強制退去に持ち込むしかないと思いますが、よろしいでしょうか?」 「うーむ、やむを得ませんね。了解しました。」
しばらくして、今度は手紙が・・・
「前略、この度建物明け渡し訴訟を受任いたしましたさくら法律事務所です。先日委任状が届きましたので、早速事件に着手させていただきます。訴訟で事実関係に争いがなければ、裁判所の審理は1回限りで終了となり、その後家主様の勝訴判決が得られる予定です。草々」
「いよいよ裁判か」と思っていた矢先、くだんの山内さんから思いがけずまた電話が・・・
「もしもし杉山さん、どうやら入居者が夜逃げしたらしいです。これから警察官と一緒に退室を確認しますので、合鍵をもってマンションまで来てください。事件の可能性もありますので、決して事前に一人で部屋には入らないでくださいね。」
警察官の許可を得て部屋に入ると、そこはごみの山でした。ペット禁止の団地なのに猫を飼っていた痕跡もあります。ソファや食器棚などの大きな家具はそのまま放置してあります。
「一体どうしてこんなことになってしまったんだろう!」
その時初めてお会いした向かい部屋の住人が話してくれました。
「お隣さんは入居当初から私たちとの付き合いを避けておられました。ゴミ出しなどの団地のルールにも無頓着で、何度お話しても聞き入れてもらえなかったんですよ。先日、荷物をまとめてこっそりと出ていくところを見かけたので、たまたまご挨拶に来られた山内さんにお伝えした次第らせしました。」
ということでこの事件は入居者の夜逃げで幕を閉じました。
そして、私にはコミュニケーションの基本を教えてくれる反面教師となりました。
それは、入居者が家主に家賃が払えなくなったことを報告すること、それを家賃保証会社に連絡すること、そして問題が解決できない場合には関係者に相談すること、いわゆる「ホウ・レン・ソウ」です。
私のコミュニケーションスタイルもこの3つの基本を念頭におき信頼される家主をめざしてがんばっていきます。
トーストマスター!
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