マラソン讃歌

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再び「暗殺」

2016年10月08日 | トーストマスターズ
市川スマイルトーストマスターズでスピーチの機会をいただき、1週間前のスピーチ(「暗殺」)を若干手直しして発表しました。冒頭で次の展開につまづくところがありましたが、何とか無事最後までしっかりと話し、ベストスピーカー賞までいただきました。そのスピーチの全文を掲載します。

私は3年前に定年で退職をしまして、今はマラソンとトーストマスターズの活動で余生を送っています。現役時代には外交官として24年間にわたり海外で暮らしておりました。そのうち16年間は韓国に住んでいましたので、今でも韓国には特別な関心と好意を抱いています。
ここで若干つまずく)好意はあるのですが、あの衝撃的なニュースだけはこれからも忘れることはないでしょう。
これがその時の新聞です。日付は1979年10月27日、見出しは「朴大統領射殺される」となっていて、一面のほとんどがこの暗殺事件の報道に割かれています。
ちなみに、韓国で3人目の大統領になった朴正煕という人はもともと軍人出身でして、そのため「軍事独裁」とか「人権弾圧」というような否定的なイメージで語られることが多いのですが、一方で日本との国交を正常化し「漢江の奇跡」と呼ばれる経済発展を成し遂げた偉大な指導者であるという肯定的な評価もあります。

そこで、今日は皆さんを37年前に起こったこの歴史的な事件の現場にご招待したいと思います。
その日朴大統領は3人の親しい側近を夕食に招待します。その人たちというは、都承旨大統領秘書室長、金載圭中央情報部長、車智澈大統領警護室長の3人です。
午後6時から始まった夕食会で朴大統領が国内の治安情勢について尋ねます。
「金部長、最近南部の地方都市で反政府デモが活発化しているようだが見通しはどうだね。」
「はい、閣下。いささか危険な状況になりつつあります。」
ここで、車室長が口を挟みます。
「閣下、デモをしている奴らは私がブルドーザーで一気に押しつぶしてやりますから、ご心配いりません。」
(「よけいな口出しをするなよ」)と金部長は心の中でつぶやきます。
「そうか、わかった。さあ、暗い話はこれくらいにして歌でも聞きながら楽しく飲もうではないか。」
ここで女性も加わり、ウイスキーで杯が交わされ、宴会が始まります。しばらくして宴たけなわとなったころ、1本の電話が金部長に入ります。
「閣下、緊急の連絡が入ったそうなのでしばし失礼いたします」と言って金部長は電話を受けるために別の部屋に移動します。 そして、そこにあらかじめ隠しておいたドイツ製のピストルを懐に忍ばせ、何食わぬ顔をして席に戻ります。
そこでは宴席に呼ばれた女性の人気歌手が流行歌を歌っています。
“사랑해 당신을 정말로 사랑해 당신이 내곁을 떠나간뒤에…♪”
「閣下、こんな虫けら同然の奴と一緒にまともな政治ができますか…」―バン!
第一弾は車室長に向けて発射されます。
「なにをしておる!」歌を口ずさんでいた大統領が大声で叫びます。
今度は大統領の胸元に向けて第2弾が撃ち込まれます。―バン!
大統領はその場に倒れ、そばにいた女性が驚いて声をかけます。
「閣下、大丈夫ですか?」
「私は大丈夫、大丈夫だ」と言うや、とどめの第3弾が大統領の頭に命中します。―バン!

こうして18年間にわたった朴大統領の独裁政治は終わりを告げました。
その後、暗殺犯金載圭は死刑となり、彼が望んでいた韓国の民主化は実現するどころか、それからさらに13年間の軍事独裁政権が続くことになります。
暴力で政治は変わりませんでした。
歴史はめぐり、今、凶弾に倒れた父の遺志を継いで次女の朴謹恵さんが韓国で初めての女性大統領となり活躍されています。トーストマスター。 
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