ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

フォルクスワーゲンの客

2007年10月11日 | 巡礼者の記帳

秋田湯沢から登場したその客は『ソナス・ファベール』でジャズを聴いている。
「わたしの聴き方は、音楽が最初にあって、音は二の次です」ほんとうだろうか。
フィニアス・ニューボーンJrの『ハーレム・ブルース』が鳴っているとき、漠然と彼は言った。「ああ、これには、忘れられない思い出があります...」
レイ・ブラウンとエルヴィン・ジョーンズがリズム・セクションを固めるゴスペル風の桂曲が、悪かろうはずはない。いかなる御講評があるのか、期待して次の言葉を待った。
「東京のアパートに暮らしていたとき、部屋に帰るとレコードがきれいに盗まれていて、残っていたのはターンテーブルに載っていたこのレコードだけでした...」あまりの出来事であるが、取り乱す様子が見えないのは、もしや。
「いえいえ、盗まれるモノは、部屋にレコード程度しか無かったという生活で」
そうとうなジャズ好きの曲者を侵入させてしまったものだ。
「このあいだ思い立って家庭教師をやりました。それがうまく良い大学に入ってくれて、入学祝パーティの家に招かれ、彼とはじめて雑談をしたのですが、三島由紀夫が何者か、まったく知らなかったのです」
スイート・アンド・ラブリィのミゾに移った曲を聴きながら、もしまだ、三島由紀夫が生きていたらどうなのか、そのとき居合わせた3人は漠然と考え込んだ。

コメント
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