ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

BLUES-etteの客

2007年10月07日 | 巡礼者の記帳
音にも重さがある。
スピーカーから飛んでくる音の先端には、堅さがある。
装置から、音の飛び走るスピードに違いがある。
それらが音楽の姿を装って耳に届くところを、大勢の好事家が違いを受け止めて、膨大な時間と大金を贖ってきた。

夏の終わりの或る日登場したその客とは、三度ほど会っているが、これまでは何も話さない正体不明の人物である。
「JBL38センチウーハーを四本、自作の箱に入れています。高音のホーンレンズは、慎重に検討しスラントプレートは選びませんでした」
遠回しに何の事をいっているのか、当方にはピンときた。
ゆっくりと言葉を選んで話された内容から、おぼろげに装置の姿が浮かんでくるとき、それは左右に分離した重厚なスピードのある音が、こちらをめがけてビウーンと飛んできて、底なしに深いかたちのくっきりした低音がズバン!と風圧をともなって、レコードのポリエチレンシールがはためく様子が脳裡に浮かんだ。
ブルース・エットのジャケットをみとめたその客は、B面の『TWELVE-INCH』をぜひと言っている。当方が好むのはEVERYWHEREのほうであるけれど。
カーティス・フラーのトロンボーンとゴルソンのテナーが、T・FLANAGANとJ・GARRISON、ALのバッキングによって、タイトなブルースが心地よい。やはり、B面を寝かせていたひとには福がある。
「このレコードは、とてもカッティングが良いですね。ジャケットを見せてください」
それは仙台の「ベンツにゴム草履さん」から、ムリを言って譲っていただいたバンゲルダー刻印の因縁のレコードであった。
その客が、席を立ったとき、連れの人に聞いてみた。
その装置とやらは「いったい、どんな音?」
「いや....あそこの音は、別格です......」
それだけ聞けば、充分である。
いつか招待のある日を待つというのもうれしい。

コメント
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