三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【基礎断熱からハイブリッド床下断熱へ】

2019年04月15日 06時55分06秒 | Weblog


さて、最近もたくさんの「取材」をしてきていますが、
なかなかまとめる時間が取れない。
きょう取り上げるのは、先週水曜10日のアース21総会での
鎌田紀彦先生基調講演からの「基礎断熱から床下断熱への回帰」テーマ。
北海道では「暖かい家」への技術進化の過程で
床下断熱からほぼ常識のレベルで基礎断熱が一般化してきた。
「凍結深度」以下まで基礎を掘り下げる必要がある地域特性があって、
その基礎造作の「特殊性」に着目し、その基礎外周で
断熱材を張り付けてコンクリート打設を行えば、
その土地の「年平均気温」程度と言われる「土壌の熱」を取り込んで
いわば「土壌蓄熱」を利用できて、床下の湿度管理などの
木造住宅がかかえてきた問題点をもクリアできるということ。
人類伝統とも言える「竪穴」利用ともアナロジーできるので、
きわめて「安定的」と支持されてきたと言えるかも知れません。
こうした流れになって来たのには、それこそ新住協や鎌田先生自身も
それを大きく提唱してきた流れもあったと思います。
しかし、講演でも指摘されていましたが、
「地盤の熱容量が大きいため、家の中の室温と同程度の温度まで
平衡状態になるまでには、大きな熱量が必要になってしまう。
熱供給が行われなければ、土間表面温度は低下していく。」
「床下暖房していてもこの熱供給は不可欠。熱供給能力を大きく
キャンセルできる高性能住宅では、能力が小さくなってきている分、
暖房を停止するとうまくいかない」(以上要約)
というような問題意識に到達されている。

ということから床下暖房の方がより合理的ではないかという流れ。
暖房空間の体積をより小さくできるので
暖房設備容量をさらに削減していくことが可能になるとされている。
しかし、一方で各種配管設備など床下の凍結対策は
寒冷地では絶対不可欠で、また気候変動の「極端化」が進行しているので
温暖地域でも万一の場合がありえる。
そこで水道配管などを収める「水回り」空間を一定の範囲内に収める
設計プラン上の工夫をした上で、その周辺区域だけを
「基礎断熱」として集中配置することで、その他の床下断熱部分との、
いわばハイブリッドタイプの断熱を提唱されたのです。
こうした提唱はこれまでも鎌田先生からあったのですが、
今回札幌で棟晶さん建築の2.5×6間の「新住協モデル」で実験されています。

いまのところ、北海道では技術的にほぼ完成した基礎断熱採用が
はるかに優勢ですがコストダウン圧力が今後さらに高まっていって
暖房用熱量のさらなる削減が求められていく可能性が高い中、
こうした技術進化も求められてくるのではないかと思っています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする