三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【キューブ住宅の外観デザイン】

2019年04月01日 06時21分04秒 | Weblog
写真は先日、仙台市内で見学した鈴木環境建築さんのオープンハウス。
まことにスッキリとしたキューブ形状の外観が特徴的。
同社はことし、「ハウス・オブ・ザ・イヤー・イン・エナジー」大賞を受賞されましたが、
断熱技術について全国最先端の技術を積極的に導入する企業。
また、設計デザインについても北海道の建築家とコラボするなど、
高断熱が触発するデザイン変化についてセンシティブな企業です。
南東北、宮城は東京からのマーケティング主導企業戦略になびく企業も多いなか
高断熱高気密技術を極めながら、デザインの「進化」にも敏感な企業。
そんな経緯もあり興味深く見学していました。

北海道では「高断熱高気密」を大前提として住宅を
その暮らし方文化を含めて再定義せざるを得ず、
ごく自然な志向性として、外皮表面積の最小化、シンプル化に向かった。
もっとも外皮面積が少ないのはキューブになる。
これには屋根の「無落雪化」進化も大きかった。
水勾配程度を付けるのか、完全フラットにするのかは議論のあるところですが、
三角屋根や傾斜屋根よりは、雪の問題は合理的に考えられる。
で、そうなると、完全なボックス型のキューブが誕生する。
ふつう、住宅の外観デザインを特徴付けるのは屋根。
それが性能面からの技術必然の結果、デザイン的に「省略」されると、
はて、どうデザインしたらいいのかと思い悩むようになる。
「豆腐じゃないんだから(笑)」という笑えない現実に突き当たる。
そこでさまざまな試行錯誤がはじめられる。
コルビジェとか、FLライトなどの現代建築デザインが参照されるようになって
開口部の配置、壁素材のバリエーションなどでのバラエティが基本になる。
当然、内部間取りも数寄「放題」ではなく「合理的配置」に向かう。

ここでは、ボックス形状の外周側の壁が上と左右で内向きの角度を付けられて
その内側に向かってズームしていくようなカタチを取っている。
ちょうど、屋根が庇のようになって、2層分の内部の取得日射を
制御するかのようにデザインされています。
左右の壁も、そういったインスピレーションから角度を付けている。
平面的な形状だけれど、角度をこのように持たせることで、
外見的な変化を作り出している。
心理的に外周の壁に仕切られた部分がセットバックして
「守られている」感がイメージされるように思われます。
その上で壁の部位で表情にコントラストを付けるべく
外壁素材、色合いに変化を持たせています。
形状としてはカメラの入光角度を調整するフレームとレンズのように見える。
この一面以外は大きくは壁に区切られた防御的な外壁面。
外部に向かって「開く、閉じる」が明確にデザインされているとも感じられます。
住宅性能面からの必然が生み出していくデザインの方向性変化。
今後ともどのように推移していくのか、興味深いところですね。
コメント
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