
先日も触れたのですが、
竹中大工道具館でずっと見ていたいと思わされるのは、写真のような
「中世職人仕事図」のような絵画ルポルタージュものです。
日本には大和絵の伝統としてなのか、
カリカチュア的な表現領域がずっとあると思います。
たぶん鳥獣戯画を嚆矢とする表現領域なのだと思います。
日本が世界に誇る「マンガ」文化は、こういった表現領域が
その優れた直感的表現力で世界性を帯び始めているあらわれでしょう。
わたし的には、こういった表現と出会うと、ずっと対話していたくなる。
そこに描かれた職人さんたちの思いとかも、
単純な線画表現だからこそ逆に、ありありとしたリアリズムでつたわってくる。
木造建築工事の微細な部分もしっかりと観察して
また、それに立ち向かう人間の力感もすばらしく表現されている。
大体が、表現視点は日本の伝統でやや上空的な場所から、
ひょっっとしたら、全体を観察するのに近くに立っていた樹木上に上って
そこから仔細に表現者は観察し続けていたのかも知れません。
こういうやや斜め上空から、全体をパノラマ的に表現するというのは、
日本の絵画表現で非常に多用されていると思います。
日本絵画の極限的表現である「金屏風絵」の大きなテーマである
洛中洛外図においても、たぶん、東寺の塔から見晴らした視点が
大きく見て取れると言われていますね。
たぶんそういった「古典」が手本として継承されてきて
表現の多数派を占めてきたのだろうと推測します。
今日、わたしどもは写真表現というカタチで雑誌やWEBで
ほぼ毎日のように住宅建築とその暮らしようを「表現」し続けている。
そのような同じ目的的視線をこういった表現から教えられる。
無上に楽しくもあり、また、きわめて職業的興味も共有しているという
そういった親近感がハンパなく感じられるという次第なのです。
表現された人々、描いた人々、双方への想像力のふくらみが
ハンパなく拡張し続けております(笑)。