山村貞子とは
山村貞子(やまむら さだこ)は、鈴木光司の小説およびその映像化作品『リング』シリーズに登場する架空の怨霊。生前は超能力者で、元女優。
物語が始まる時点ですでに故人であるという設定だが、現世に強い未練や恨みを残し、見た者を呪い殺す「呪いのビデオ」によって災禍を巻き起こす。また続編『らせん』では現世への復活を遂げるなど、シリーズを通しての元凶として登場する。原作の描写によれば、色白黒髪で長身華奢、大人びた顔立ちの美女である一方、半陰陽者という身体的特徴を持つ人物という設定である。ただし、貞子の設定はメディアごとに異なっており、貞子のキャラクターを有名にした1998年の映画版『リング』では、白のワンピースに長い前髪で顔を覆い隠した女性として登場し、終盤ではテレビから実体化して這い出てくる恐ろしげな怪物として描かれた。
貞子の初出は、1991年に出版された鈴木光司のホラー小説『リング』である。同作は、主人公・浅川和行が親戚の不審死に疑問を抱いたことをきっかけに、友人の高山竜司と共に、映像を見た者を7日後に呪い殺すとされる「呪いのビデオ」の来歴に迫っていくという筋立てになっており、物語中盤で呪いのビデオを作成した人物として超能力者「山村貞子」の名が浮上する。浅川と高山は貞子の詳細な経歴を調べ、この世に恨みを抱いて死んだ貞子が怨念となってビデオを念写したという結論に至り、古井戸に遺棄されていた貞子の遺体を発見し供養することで事件の解決を試みる。
原作小説『リング』における貞子は、一連の事件の元凶ではあるものの、作中には直接登場しない。しかし、1998年に公開された映画版『リング』では、胸元まで伸びた長い前髪で顔を隠した女性のイメージとして物語に登場し、クライマックスでは貞子自身がテレビに映った「呪いのビデオ」の映像の中から前髪を振り乱しながら這い出て、直接高山の部屋に現れるという独自の描写がなされた。恐怖にすくむ高山へ奇怪な動きでにじり寄り、前髪の間から片目のみを覗かせ、白目を剥いた凄惨な形相で彼を睨み殺すこの場面は、映画の中でも特に衝撃的な場面として描かれており、後のリメイク作品でも踏襲されたほか、様々なパロディも作られた。映画版のクライマックスにおける描写は海外でもよく知られており、この演出は貞子の存在を原作小説や映画から独り立ちさせてしまうほどの成功を収めた。貞子は現代を代表するホラーヒロインとなり、その後も人々の記憶に、ひいては映画史に名を残すキャラクターとなった。
原作小説の第2作『らせん』は、新たな主人公・安藤満男が、貞子の呪いが人体にどのように作用して死をもたらすのかという原理を、医学的な見地から探っていく内容である。安藤は呪いの正体が、映像を見た者に感染し心臓に作用する「リングウィルス」であることを突き止めるものの、貞子は同作では黒幕的な立場で暗躍し、物語半ばで現世への復活を果たす。
原作小説3部作の最終作となる SF小説『ループ』における貞子は、主人公・二見馨が近未来の世界に蔓延している「転移性ヒトガンウィルス」の謎に迫っていく過程で、コンピュータウイルスによって変異した仮想生命体「ヤマムラサダコ」として登場する。同作では、前2作の世界が環境シミュレーター内に再現された仮想世界であることが明かされ、人類は貞子に対抗する手段を得ることになる。
その後に発表された外伝『バースデイ』は短編小説集となっており、収録作品のうち『空に浮かぶ棺』では『らせん』における貞子復活の詳細が、『レモンハート』ではかつて貞子に想いを寄せていた男性・遠山博の回想を通して生前の貞子の姿が描かれ、『ハッピー・バースデイ』では『ループ』の後における貞子の末路が描かれている。原作小説のリングシリーズは3部作と『バースデイ』でいったんの完結を迎えたが、2012年からはシリーズが再開し『エス』、『タイド』に貞子が登場している。
貞子の母親である登場人物・山村志津子のモデルは、明治時代に実在した人物である超能力者の御船千鶴子(1886~1911年)であると言われ、『リング』の作中では実際の「千里眼事件」を想起させる超能力実験の経緯が描かれている。貞子という名前を、御船と同様に千里眼事件に関わった実在の人物である高橋貞子(1886~1933年以降没年不詳)と関連付ける意見もある。
また、貞子のモチーフのひとつとして、1991年に出版された原作小説『リング』よりも以前の1970年代末から、妖怪「口裂け女」の派生怪談として広まっていた都市伝説「カシマさん」を指摘する意見もある。貞子がビデオテープを介して広まり、ビデオを見た者を呪い殺すのに対し、カシマさん(カシマレイコ)は噂を介して広まり、噂を聞いた者の元に電話や夢の中を通じて現れて呪い殺す。
原作小説の他にはシリーズ作品として、『リング』シリーズを原作とする映画やテレビドラマや日本国外向けの翻案作品のほか、『らせん』とは別の未来を描いた映画オリジナル作品『リング2』、『ザ・リング2』など、原作小説の設定を下敷きにしつつも独自の物語が描かれた複数の派生作品が作られている。映画『リング0 バースデイ』は短編小説『レモンハート』を元にしつつも貞子の視点で独自の物語が描かれ、連続ドラマ『リング 最終章』と『らせん』では、原作とは異なる設定の物語が描かれているなど、貞子の設定にも作品ごとに差異がある。
2016年夏には、『リング』シリーズと同様に「Jホラー映画」の人気シリーズ『呪怨』に登場する「伽椰子」と「悪夢の“ 恐 ”演」を果たすスピンオフ映画『貞子 vs 伽椰子』が公開された。
1998年公開の映画版『リング』における貞子は、白い衣装を着た長い黒髪の女性という姿で描写されるが、これは古典的な日本の幽霊のイメージを反映させたものである。また映画版における貞子の描写には、監督の中田秀夫と脚本の高橋洋が1996年公開の映画『女優霊』で用いた手法とその反省点が反映されており、同作に登場した幽霊は、映画版における貞子の原型とも評されている。なお、『女優霊』の内容には高橋洋が子供の頃、日本で1967年にテレビ放送されたアメリカ映画『シェラ・デ・コブレの幽霊』の予告編を目にした経験が反映されており、これが映画版『リング』のアイデアにも影響を与えたという。
1998年映画版における、貞子がテレビから這い出してくる映画版独自の描写は、脚本の高橋洋が創作したものである。テレビの中から怪異の主が現れるという描写には、1982年のアメリカ映画『ポルターガイスト』との関連性を指摘する意見もある。
1998年映画版『リング』に登場した貞子は、あまりにも恐ろしくセンセーショナルなものだった。胸元まで伸びた長い前髪の間から片目のみを覗かせ、白目を剥いているという凄惨な姿は、その後のシリーズ作品に踏襲されるだけでなく、1998年映画版がヒットして以降、テレビから這い出てくる貞子を題材にしたパロディ作品や、フィクションの登場人物に「貞子」という仇名がつけられているという設定の作品が国内外で多く登場している。貞子は、映画や原作小説といった垣根を超えたホラーアイコンとして大成功を収めた。原作者の鈴木光司は、映画版の貞子のパロディや物真似が広く浸透した理由について、貞子のキャラクターが明瞭ではなく、前髪を垂らして白い服を着れば誰でも容易に物真似ができるというハードルの低さも要因だったのではないかと推察している。
現在、貞子のキャラクター性は広く定着しており、女性アイドルがオフショットで白いワンピース姿で長い黒髪で顔を隠して自撮りする様子もみられる。2022年10月現在、貞子は公式Twitter、Instagram、TikTok、YouTubeチャンネルを運営している。ちなみに貞子の YouTubeチャンネルは登録者数12万人、総再生回数386万回となっている(2022年6月時点)。
貞子の人物像
作中では幾度か貞子の容姿や人柄について描写されている。生前の貞子の写真を見た吉野賢三はその姿を、今まで見たことがないような美人であると形容した。生前の貞子と交際していた遠山博は、少女らしいあどけなさと時折垣間見せる艶かしさを併せ持った人物として彼女を回想している。一方で遠山と同様に劇団員時代の貞子を知る有馬真は、大人しく、あまり仲間と交わろうとせず、不気味な印象であったと述懐している。復活後の貞子と遭遇した安藤満男によれば、身長は160センチメートル弱、髪は背中の中ほどまで伸びている。鼻梁は細く長く、若干つり目で二重瞼、声は低いが魅力的な響きがあったという。
1995年のスペシャルドラマ版と1999年の連続ドラマ版、1998年の映画版とその続編およびリメイク作品など、多くの映像化作品において貞子は白ずくめの衣装で登場する。1998年の映画版では、白いドレス姿があたかも日本の幽霊の死に装束のように描写された。しかし、貞子がこうした白い服を着ているのは映像化作品でのみ見られる描写である。原作小説『リング』における貞子は、死亡する直前にはグレーのスカートを身に着けており、『らせん』および『レモンハート』で復活を果たした際にはライムグリーンのワンピースを着ており、その後安藤と再会した際には水玉模様のスカートに生足という出で立ちであった。
ちなみに、原作小説において白一色の衣服を着て登場するのは初登場時の高野舞であるが、映画版の舞は黒い服を着ている。映画版『らせん』の貞子は、復活後は高野舞の容姿をコピーして現れるが、この時は派手な赤い柄物の衣装を着ている。1999年の連続ドラマ『リング 最終章』では、貞子も舞も白い衣装である。
貞子の能力
生前の貞子は、念写や予知といった超能力を使うことができたとされるほか、作中では以下のような能力を用いている。
呪いのビデオ
作中において最初に生み出された「呪いのビデオ」は、一般的な VHSの120分テープに録画されたと設定されている。
観た者は7日後に死ぬとされる呪いのビデオ映像。貞子の怨念がビデオテープに念写されたもので、呪いのビデオを見た者はリングウィルスに感染する。原作小説では単に「ビデオ」、「ビデオテープ」と呼ばれているが(『らせん』の終盤で「魔のビデオテープ」と呼ばれるようになる)、映画版では「呪いのビデオ」という呼び名で広く都市伝説化している設定で描かれている。
原作小説では、映像の内容についても繰り返し詳しく描写されている。ビデオを最後まで見るよう強要する文字メッセージに続き、貞子の故郷である伊豆大島の三原山とその噴火に関する抽象的・具体的な映像、超能力実験に関連した念写による「山」の文字と、繰り返し特定の目を示し続けるサイコロの映像、老婆が語る伊豆大島の古い方言での「水遊びばかりしていると化け物が来る」、「お前は来年に子供を産む」という意味のメッセージ、超能力実験を非難する大勢の人々や、「貞」の文字が出てくる古いテレビを用いた念写実験、生まれたばかりの赤ん坊のイメージ、貞子が殺害される間際に見た光景、肩から血を流し迫る男の顔、そして最後に、映像を見た者が1週間後に死ぬことを警告するメッセージで締め括られるという構成となっている。映像の長さはトータルで20分程度。映像には抽象的なものと写実的なものの2種類があり、このうち写実的な映像には、貞子の瞳を通したことに由来するまばたきが入っている。作中に登場するビデオの末尾は蚊取線香のテレビCMで上書きされているが、当初は見た者に対して、死にたくなければビデオをダビングしてまだ見ていない他者に見せるように強要するメッセージが入っていたとされる。
後年の映像化作品では、呪いのビデオの内容にも独自に変更が加えられており、様々なバージョンの呪いのビデオが映像化されている。1998年の映画版では、映像は井戸に突き落とされた貞子の視点による、丸く縁どられた外界を見上げた光景から始まるが、これを踏襲するアメリカ映画『ザ・リング』では、この光景が作品タイトル「リング(輪)」に込められた意味のひとつとして解釈されている。また、いずれの映画でもビデオの映像は井戸を外から見た独自の映像で締め括られているが、1週間後の期限を過ぎるとこの映像の後には貞子が井戸から這い出てくる姿が現れ、映像内の貞子が画面手前に向かってゆっくりと歩み寄り、画面を突きぬけるようにして現実世界へと出現するという演出がされている。また、1999年の連続ドラマ『リング 最終章』での呪いのビデオは、ミュージック・ビデオの映像に混信したノイズという形の映像として描かれた。
原作小説『らせん』では、「呪いのビデオ」の内容を描写した文章を読んだ者にも、映像を直接見た場合と同様の呪いがもたらされるという設定が描かれた。また、鈴木光司によって出版された現実の小説『リング』と、作中で浅川順一郎によって出版された劇中小説『リング』は、「呪いのビデオ」の映像について描写した文章が一字一句同じであるため、現実の読者に対しても、この文章を読んだ時点で貞子の呪いにかかっていると暗示する効果となっている。原作がブームだった当時の読者の中には、小説の内容を真に受けて出版社に相談の電話をかける者まで現れたという。
作品によっては、ビデオを見た直後に正体不明の無言電話がかかってくることがある。原作小説では電話がかかってくる条件が曖昧にされているが、1998年の映画版では、電話がかかってくるのは貞子の遺体が遺棄されている場所から近い場合に限定されており、このことが謎解きのヒントにもなった。
リングウィルス
実在した天然痘ウイルスに、貞子の遺伝情報が念写されたもの。
呪いのビデオを見た者に感染するウイルス。感染した者がウイルスの増殖に手を貸さなかった場合、感染から1週間後(168時間後)の同時刻に心臓周辺の冠状動脈に肉腫を発生させ心筋梗塞を誘発する。発作を起こしたものは喉の渇きに襲われ、頭を掻き毟りながら驚愕したような表情で死亡する。
リングウィルスという名は、小説『らせん』において安藤満男と宮下によって命名された。形状は天然痘ウイルスと大きく異なり、人間の精子の頭部と尾部がリング状に繋がったような姿となっており、実際に貞子の遺伝子情報を保持している。感染者が排卵日の女性の場合、あるいはウイルスの進化と増殖に手を貸した男性の場合には、リングが解けて精子状になる。女性の場合、体内に侵入したウイルスは心臓へは向かわずに子宮へ侵入し卵子に受精、感染者の子宮を用いて「新たな貞子」を再生する。一方で男性の場合には、ウイルスは脳へと向かって感染者を操り、「呪いのビデオ」と同じ効果のある文章を書かせることになる。
1998年の映画版『リング』やそのリメイク作品では、リングウィルスの感染者は、写真や映像に撮られるとその顔が歪んで映るという描写が付け加えられた。また同年公開の映画版『らせん』では、リングウィルスは性行為でも感染するという設定になっており、またビデオの映像を観た場合と浅川の小説『リング』を読んだ場合とでは死因が異なり、後者は激しく咳き込んだ後に窒息死するという設定になっている。
増殖
生前の貞子は、身体的特徴は女性であるが生物学的には男性であるという半陰陽者(睾丸性女性化症候群)であり、子供を産むことができない身体であった。しかし復活後の貞子は、他の女性を媒体に、あるいは自分だけでも増殖が可能という、全く新しい形の人類へと進化した。
リングウィルスに感染したことにより貞子を妊娠した女性は、受精から1週間で臨月に至り、貞子を出産する。さらに、赤子として産み落とされた貞子は1週間程度で成人へと成長する。この生まれた貞子は単なるクローン再生ではなく、オリジナルの貞子の生前の記憶を保持している。また、リングウィルスに感染した女性を媒体として現世への復活を果たした貞子は、半陰陽者として完全な両性の生殖能力を持っており、自らの精子を自らの卵子に受精させることで、自分で自分のクローンを出産することができる。
原作小説では、リングウィルスを通じて再生した貞子はオリジナルの山村貞子本人の姿で復活するが、映画および連続ドラマ版の『らせん』では、貞子の記憶を持ちながらも、貞子を妊娠し出産した女性の容姿をコピーして復活するという設定で描かれた。
柑橘類の香り
原作小説では幾度か、呪いのビデオがもたらす怪異に触れた者や貞子に遭遇した者が、柑橘類あるいはレモンの香りを嗅ぎ取ったという描写が登場している。また貞子の母である山村志津子も生前、予知の能力が働く時には決まって柑橘系の香りを感じたと話していたと描写されている。
原作小説における生前の貞子の経歴
1946年
貞子の母親・山村志津子が、伊豆大島沖の海中に投棄されていた役小角像を引き上げる。志津子はこのときから予知や透視の超能力を身に着けたとされる。
1947年
山村貞子、伊豆大島の差木地(現・東京都大島町南部)に生まれる。母親は志津子、父親は心理学者の伊熊平八郎(妻子持ち)。貞子は半陰陽者(睾丸性女性化症候群)だった。
1954年
貞子(7歳)に弟が生まれるが、生後4ヶ月で病死する。
1955年
志津子の超能力の公開実験が行われるが失敗に終わる。実験はインチキであるとマスコミに批判されたことにより、志津子は発狂する。
1956年
志津子が三原山の火口で投身自殺する。母の死後、貞子(9歳)は差木地に住む母親の従兄弟、山村敬の家で引き取られる。
1957年
貞子(当時小学4年生、10歳)が同年10月13日に発生した三原山噴火を予知し、小学校内で有名になる。
1958年8月29日
貞子(11歳)、超能力研究家の三浦哲三に念写実験の成果を送る。
1965年
貞子(18歳)、上京し東京都新宿区四谷を拠点に活動する劇団「飛翔」に入団。音響担当者の遠山と恋仲になるも、浮世離れした個性や、演出家の変死など様々な怪事象を引き起こしたため、舞台『黒い服を着た女』主演後に退団する。
1966年夏
結核を罹った父・伊熊平八郎が入院した南箱根療養所(現・静岡県田方郡函南町東部)で、父の担当医だった長尾城太郎医師に強姦され井戸に突き落とされて殺された(享年19)。この時、長尾は天然痘ウイルスのキャリアだったため、貞子は死の直前に天然痘に感染していた。
殺された貞子の怨念は成仏することなく残り、人類に根絶させられた天然痘の怨念と融合し、怨念の拡散による無差別攻撃を開始する。
※南箱根療養所は丹那盆地に所在し、丹那断層を突き抜けるトンネルを通過し、熱函道路の中ほどを左折した先にあると設定されている。
1990年8月26日20:00頃
貞子の怨念は、死体が遺棄された井戸の上に建てられた南箱根パシフィックランドの宿泊施設ビラ・ロックキャビンのB-4号棟に設置されて間もない VHSビデオデッキを介して念写され、観た者をリングウィルスに感染させる「呪いのビデオ」を生み出すことになる。ビデオのダビングは、絶滅させられたウイルスに増殖の機会を再度与えることを意味し、浅川和行はこれを天然痘ウイルスの怨念による人類への逆襲であると解釈している。
※南箱根パシフィックランドは1998年公開の映画版では「伊豆パシフィックランド」となっている。原作者の鈴木によれば、この貸し別荘のモデルとなったのは静岡県田方郡函南町に所在する「南箱根ダイヤランド」の宿泊施設である。
1990年8月29日
ビデオを見た B-4号棟の宿泊客4名の若者が悪戯でビデオの一部を上書きしてしまったため、リングウィルスの遺伝情報は不完全になり、ビデオテープの複製による伝染計画は少数の犠牲者を出した時点で頓挫する。しかしそれによって突然変異が発生し、生存の条件は単なるビデオのダビングではなく、「ビデオを別の媒体へ転換すること」となった。『リング』の主人公である雑誌記者・浅川和行はビデオを見たにも関わらず生存するが、これは浅川和行がダビングを行ったためではなく、彼が事件の全貌を記事にしていたからであった。その後浅川和行は事故死するが、彼の兄の浅川順一郎は、和行の遺した記事を『リング』の書名で小説化し、この結果リングウィルスは「読むと感染する書籍」という新しい形で、出版によって世に流布していく。
1990年10月18日
浅川和行と高山竜司によって井戸から貞子の白骨化した遺体が掘り出される。
1990年10月19日
貞子の遺骨が浅川の手から山村敬に引き渡される。当時の法律では殺人事件の時効を過ぎていたため、警察への通報は行われなかった。
最初のビデオテープ(貞子の呪い)
浅川に協力する中でビデオを見た高山竜司が死亡する。
1990年11月1日
高山の教え子・高野舞が、高山の遺品にあったビデオテープを見てしまったためにリングウィルスに感染し、貞子は舞の胎内で再生し、舞の精神を乗っ取る。
1990年11月8日
貞子、現世への復活を果たす。
浅川順一郎の出版した『リング』が映画化されることになり、貞子自身が主人公の一般公募に応募し主役の座を射止める。貞子は映画に自分の遺伝子情報を念写した(リングウィルスを仕込んだ)ため、映画を鑑賞することは呪いのビデオを見るのと同じ効果となった。なお、復活した際に出会った安藤満男には自分のことを舞の姉、高野真砂子と偽って接触し、彼の行動を監視していた。
以後リングウィルスは、小説だけでなく、これを扱った映画や音楽、ゲーム、あるいはインターネットなど、浅川順一郎の出版した『リング』を扱った様々なメディアや作品へと変異した。これらは見た者すべてにリングウィルスを感染させていく。
1995年スペシャルドラマ版の貞子
演じた女優 …… 三浦 綺音(22歳)、竹島 由夏(9歳 少女期)
原作小説にほぼ忠実に作られた1995年8月放送のスペシャルドラマ『リング 事故か!変死か!4つの命を奪う少女の怨念』(フジテレビ系『金曜エンタテイメント』)での貞子は、原作通りに半陰陽者(睾丸性女性化症候群)であり、官能的な悲劇のヒロインの要素が強く、人間としての素顔も見せている。「呪いのビデオ」の内容も原作に忠実である。父親の伊熊平八郎が、金儲けのために山村母娘を売るマッドサイエンティストになっており、娘の貞子とも肉体関係を持っている。原作通りに貞子を殺害する長尾城太郎とは恋愛関係を匂わせる描写もある。高野舞が超能力であるという設定がなく、リングウィルスも登場しない。
1996年ラジオドラマ版の貞子
演じた女優 …… 山崎 和佳奈(30歳 声の出演)
1996年1~4月に TBSラジオのドラマ番組『角川ドラマルネッサンス』枠で放送された。全12話。同年6月には CD発売された。
主人公の浅川透(演・古川登志夫)はラジオの人気パーソナリティで、最初の犠牲者の死を目撃する設定となる。本作では、呪いのビデオが「呪いのカセットテープ」に変更されるなど、音での表現に即した内容にアレンジされている。
映画作品における貞子
1998年に映画『リング』と『らせん』が、おおむね原作小説に準拠した設定で2作同時公開された。この映画版『らせん』とは異なる『リング』の続編として独自の展開を描いた1999年の映画『リング2』も作られた。その後、短編小説『レモンハート』を元に、原作にはない設定も加えた2000年の映画『リング0 バースデイ』が作られた。
『リング』シリーズを映画化した作品はすべてホラー映画として作られており、貞子は原作小説よりもさらに怪物的に描かれている。原作にはないエピソードとして、貞子は母・志津子の超能力公開実験の際に観覧していた記者を変死させており、さらに呪いのビデオを見て1週間の期限が来た者の前に直接出現し、長髪を振り乱し狂った目を剥いて襲ってくる化け物といった演出で描かれていた。ビデオを見た直後には井戸のあるペンションでのみ、ビデオテープのリール音のような音が聞こえる正体不明の無言電話がかかってくる。呪いのビデオを見た人間の前に、貞子は時折姿を見せる。見た人間の写真は顔が歪んで写る。呪いのビデオの死因にリングウィルスは関係せず、ただの呪いとして描写されている。映画版で長尾城太郎は登場せず、貞子を殺害するのは伊熊平八郎の役割となっている。また、原作小説では端役であった山村敬が、金儲けのために志津子を利用する間接的な元凶となっている。
1998年映画版『リング』での貞子
演じた女優 …… 伊野尾 理枝、白井ちひろ(少女期)
貞子のキャラクターを有名にしたのが、1998年の映画版『リング』におけるクライマックスで、突然に点灯したテレビの映像で井戸の中から現れ、不自然な歩き方でにじり寄ってきた貞子が、ブラウン管から這い出て実体を伴って高山竜司の部屋に現れ、恐ろしい形相で高山を睨みつけて呪い殺す場面である。
貞子がテレビから這い出てくる場面の前後は、貞子の動きを奇怪なものに見せることを意図して、大部分が逆回転で撮影されている。貞子が高山を睨みつけるカットは目元だけを大写しにする演出がされているが、このカットのみは俳優ではなく助監督の宮崎紀彦が演じており、人間らしく見えないことを意図してまつげを切り落とし、上下を逆にして撮影している。
呪いのビデオに関連する場面や、貞子がテレビから這い出てくる場面で流れる、何かが軋るような甲高い音は、映写機のリールが回転する音をイメージしたものである。
映画版『リング』における貞子の経歴
※1998年の映画版『リング』とその関連作品では、原作の設定をある程度踏襲しつつも、経歴の年代などが変更されている。
1951年8月
伊豆大島の差木地で生まれる(原作では1947年生まれ)。志津子は海岸の賽の河原で貞子を出産した。原作同様に母親は志津子であり父親も伊熊平八郎とされているが、本当の父親は人間ではなく、海から来た魔物であると示唆されている。映画版では半陰陽者の設定はない。
母親の山村志津子は、貞子を産む前に三原山噴火を予知し、新聞記事として取り上げられている。映画版では、志津子の能力は「千里眼」と形容されている。この時の新聞記事は後に呪いのビデオに念写されることになる。
1956年
母親である志津子の超能力の公開実験が行われる(原作では1955年の実施)。原作と異なり志津子は次々と実験を成功させるものの、この時に実験をイカサマだと指摘した記者を、貞子(5歳)がその場で呪い殺してしまう。この時に殺された記者は『リング0 バースデイ』に登場する宮地彰子の婚約者であり、これが後の遺恨となる。志津子は原作同様に、三原山に身を投げて自殺する。
1968年
貞子(17歳)、東京の劇団「飛翔」に入団(原作では1965年)。『リング0 バースデイ』では、舞台『仮面』(原作では『黒い服を着た女』)の主演を務めた際、他の劇団員たちとの確執や、彼女を仇敵として狙っていた宮地彰子による復讐といった影響から死亡・復活を経て怪物化し、団員や彰子を次々と超能力で殺害した末に、伊熊平八郎によって井戸に突き落とされる。原作にあった、天然痘ウイルスのキャリアとなる設定は描かれない。
『リング2』では、検死解剖の結果、死亡時期が発見の1〜2年前(つまり1995年〜1996年頃)であることが判明し、貞子が井戸の中で30年近く生存していたという設定が追加されている。
1997年8月29日
井戸の上に建てられた伊豆パシフィックランド(原作では南箱根パシフィックランド)の宿泊施設ビラ・ロックキャビン B-4号棟に宿泊した4人の若者が呪いのビデオを見る(原作では1990年の出来事)。なお映画版では、作中で最初に登場する4人の犠牲者の以前にも呪いのビデオを見て死んだ子供がいるとされている。
1997年9月4日
呪いのビデオを見た4人が同時に死亡する。『リング2』では、大石智子の元に現れた貞子の姿を倉橋雅美が目撃していたことが語られている。
1997年9月20日
浅川玲子、高山竜司によって井戸から貞子の白骨遺体が引き揚げられる。遺体は一旦警察に引き渡された後に『リング2』で山村敬へと引き渡される。山村敬はその後遺体を海に流す。
1997年9月21日
貞子、高山竜司の自室のテレビから実体化し、彼を睨み殺す。
以降の展開は、『らせん』と『リング2』で異なる。
1998年映画版『らせん』での貞子
演じた女優 …… 佐伯 日菜子(20歳)、中谷 美紀(22歳 復活後・高野舞との二役)
前作『リング』とは異なる種類の恐怖の存在であり、素顔を見せ、淫靡で蠱惑的な魔性の女として描かれている。性行為の際に相手の顎を舐める癖がある。復活時には受胎した高野舞の姿で復活し、超能力を使える描写がある。安藤孝則と高山竜司を出産する。また、作中で呪いのビデオを見る役割が原作のように高野舞ではなく安藤満男に変更されているため、彼との肉体関係を介して舞がリングウィルスに感染するという経緯となっている。映画版では、呪いのビデオを見たり派生メディアに関連した者が井戸の夢を見るようになる。原作小説のリングウィルスや自己増殖の設定も存在する。
1999年の映画『リング2』での貞子
演じた女優 …… 伊野尾 理枝、土田 芽吹(少女期)
井戸の中で30年近く生き続けていたという設定が加わっている。前作で呪い殺した人間(大石智子や沢口香苗など)の姿を借りて登場する能力があるが、高山竜司だけは貞子の意志とは別に、高野舞や浅川陽一を助ける守護霊的な存在として登場する。ビデオを見ていなくても貞子の姿を見た者(倉橋雅美)や呪いを免れた浅川陽一は、テレビを極端に恐れ、貞子の超能力が乗り移ったかのような描写を見せる。また、高野舞や浅川陽一など関係者の前に時折姿を見せる。
なお、映画『らせん』における浅川陽一は、原作『らせん』における浅川陽子と同様にビデオをダビングして祖父母に見せたにもかかわらず、ビデオの結末が書き換えられていたために呪いにかかり死亡している。
2000年の映画『リング0 バースデイ』での貞子
演じた女優 …… 仲間 由紀恵(20歳)、古谷 千波(少女期)
原作小説では貞子の父親だった伊熊平八郎が「自分は貞子の父親ではない」と語り、海から現れた異形の怪物が本当の父親であるかのように描かれた。また、幼少時に貞子は2人に分裂し、一方は母・志津子に似た普通の子供で、もう一方は本当の父親に似た化け物じみた邪悪な存在であったため、伊熊は後者を隔離し薬漬けにして成長を止め、自分の家の2階に幽閉したといったエピソードが加わっている。その一方で、前者の貞子も治癒能力や不確定な予知能力・霊能力などの超能力を持つ。化物の貞子に呪殺される前触れとして犠牲者が朽ちた家や井戸の夢を見る描写がある。人間の貞子は「劇団飛翔」の団員達にリンチを受け殺害されるが、化物の貞子と融合し復活した。
2012年の映画『貞子3D』での貞子
演じた女優 …… 橋本 愛(16歳)
過去の『リング』シリーズと同様に怪物として描写されるが、『らせん』で登場した安藤孝則が青年で登場するため、作品世界は『リング2』とは別のパラレルワールドであり、貞子自身も『らせん』や『リング0 バースデイ』の時とは異なる人間としての素顔を見せている。また、「呪いの動画」を見た犠牲者が貞子のような髪型に変貌したり貞子に使役される描写がある。
現世に復活するための媒介として柏田清司という男性に協力させ、ニコニコ動画上の「呪いの動画」を通じて現世に出現する(パソコン・携帯電話・スマートフォン以外にも画面のある場所すべてに出現可能)。呪いの動画の被害者は心臓発作ではなく貞子に襲われた状況で不可解な自殺を遂げる。
復活する際の肉体として超能力者の鮎川茜を狙い、孝則を人質にして井戸のある廃墟のビルに誘き寄せ、一度は茜の肉体を乗っ取ったが、「呪いの動画」の根源になるスマートフォンを孝則に破壊されたことで消滅した。
2013年の映画『貞子3D2』での貞子
前作『貞子3D』とは異なる新たな「呪いの動画」が世界に出回っており、貞子は安藤との間に娘の凪をもうけた茜を狙う。茜の死後は凪を狙うが、安藤の妹の楓子に凪を救出されたため消滅する。しかし、街には凪に似た貞子の分身の女性(貞子の子)たちが溢れ、死の連鎖は終わらないことが示唆される。貞子自身の登場場面は少ない。貞子の出現の際には井戸が現れ血のような赤い水が溢れ出す。呪いの動画の被害者は貞子に肉体を操られ、不可解な自殺を遂げたり精神に異常をきたす。
2016年の映画『貞子 vs 伽椰子』での貞子
演じた女優 …… 七海 エリー(29歳)
容姿は過去の『リング』シリーズに準じているが、呪いのビデオを見た者が死亡するまでの時間は2日間(48時間)に短縮されており、描かれるのは「呪いのビデオを見ると電話がかかってきて、その2日後には死亡する」という設定のみである。
作中に登場する霊能力者の常磐経蔵は、一時的に貞子を追い払える力を持つ。
呪いのビデオは1990年代の有名な都市伝説という設定であるが、内容は所在地不明の廃墟の家の内部が映るだけ(家のドアが徐々に開き、貞子がその姿を現す)など変更されている。呪いの回避方法は作中では判明していない。ビデオを見た直後に正体不明の無言電話がかかってくる。呪いのビデオはリサイクルショップでビデオデッキごと中古で販売されていた。リサイクルショップの店員・小林恵子も見ており不可解な自殺を遂げる。貞子本人も時には姿を現すうえ、映画『リング』ふうにテレビから這い出て直接出現するシーンがある。貞子はビデオを見た人間に憑依しており、期限前に自殺しようとする人間も呪殺する。また、霊媒師が貞子を除霊しようとすると、他の人間を操って呪殺する。呪殺方法は心臓発作ではなく、不可解な方法による自殺など。戦闘の際には頭髪による攻撃を多用する。貞子を封印していた井戸は、伽椰子の呪いの家の裏の林に存在する。
2019年の映画『貞子』での貞子
演じた女優 …… 南 彩加(貞子の母・山村志津子との二役)
本作は『リング2』の直接的な続編であり、貞子はこれまで通りに怪物として描かれるが、本作では自身の肉体の復活を目的としている。 貞子の狂信者である霊能力者の祖父江初子によって監禁された少女の肉体に乗り移るための儀式を行っていた。 人間の前に姿を見せるが、目撃者は精神崩壊を起こす程度までにとどまっている事が多く、儀式を邪魔した相手のみ呪い殺している。映画版『リング』ふうにテレビから這い出て直接出現することもあるが、 殺戮までには至らない。動画配信サイトに呪いのビデオに類似した動画が映るものの、呪いの効果があるかどうかは不明。
1999年の連続ドラマ『リング 最終章』での貞子
演じた女優 …… 木村 多江(27歳 貞子の母・山村志津子との二役)
貞子と周辺の人間関係などの設定が最も大きく変更されている。貞子は人間としての素顔を見せる。
『リング 最終章』では、死亡前に劇団「飛翔」の団員・森山修平との間に男児をもうけており、それがのちの高山竜司に設定されている。また、彼女が死亡する井戸は箱根や伊豆でなく東和泉女子学園の校舎内に存在している。呪いのビデオは松崎ナオの楽曲『白いよ。』のミュージッククリップ映像になっており、パソコンで解析することで隠されたメッセージを読み取る仕掛けとなる。呪いが発動するまでの期限は7日から13日に変更されている。ビデオの内容は原作小説と映画版を混合したようなものとなっている。
高山竜司も母・貞子の遺伝で超能力を持ち、その能力で人間を呪殺することもできる。また、彼の血液が貞子のリングウィルスのワクチンの材料になる伏線がある。高野舞との関係は義理の兄妹となっており、恋愛感情が原作小説よりも強くなっている。伊熊平八郎が生前に竜司と舞を養育している。貞子の母・山村志津子は自殺しておらず伊豆大島で生存しており、間接的な元凶である山村敬一郎(原作での山村敬)によって納屋に幽閉されている。
貞子に関しては、1990年代に存続していた劇団「飛翔」の女優に憑依したり、過去に貞子が起こした事件の犠牲者が増えたり(森山修平が入院した結核療養所の関係者やペンションの管理人など)している変更がある。貞子を殺した長尾城太郎は、現代では浅川の知り合いの宮下理恵子の勤める病院の上司となっている。長尾は原作小説では突発的に貞子を強姦していたが、『最終章』では森山を人質にして計画的に肉体関係を迫っている。長尾は生き残った原作と違い、貞子に呪殺される。また貞子の夫である森山修平は、病院に入院しているが、長尾の陰謀により殺害される。浅川は最初の犠牲者の1人である岩田秀一の死の現場に居合わせている。貞子が半陰陽者(睾丸性女性化症候群)であるという設定がない。
1999年の連続ドラマ版『らせん』での貞子
演じた女優 …… 木村 多江(28歳)、矢田 亜希子(20歳 復活後・高野舞との二役)、及川 麻衣(29歳 復活後・高村典子との二役)、須藤 理彩(23歳 復活後・西島美咲との二役)
連続ドラマ版『らせん』では、リングウィルスに対抗するワクチンが開発され、呪いのビデオは根絶されることになる。
また、呪いのビデオに代わる「呪いの CD-ROM」と、貞子と結託する黒幕である医科大学助教授・織田恭助と科捜研部長・陸田博が登場する。
貞子は呪いの CD-ROMを介して出産した女性の肉体(その際、女性に悪夢を見せ追い詰める)をコピーし、成長後に母体となった本人を抹殺する。男性の場合はその場で死亡する。作中で貞子がコピーした人物は、安藤満男の勤める青葉学園女子高校の生徒の姉のOL・西島美咲、TVレポーターの高村典子、前作『最終章』から事件の真相を追っていた高野舞の3名。貞子本人と同様に超能力が使えるが、コピーした女性の体質まで受け継いでしまうために、美咲の場合は彼女が持っていた植物アレルギーで死亡する。出産の際には赤い月が出現する。また、細胞の急激な成長による老化現象を起こしている。貞子の細胞の一部を移植した人間も、動植物を急成長させる超能力を使えるようになる。原作小説のように半陰陽者ではないためメカニズムは不明だが、一人で出産する能力を持ち、安藤孝則と安藤満男を出産する。
安藤満男の妻・美和子は原作小説と違って離婚しておらず、孝則を事故で失ったショックで精神病院に入院している。後に貞子に真実を告げられ逆上して満男を襲うが、正気を取り戻し和解する。
アメリカ映画版『リング』シリーズにおけるサマラ=モーガン
アメリカでリメイクされた2002年の映画『ザ・リング』、2005年の映画『ザ・リング2』および2017年の映画『ザ・リング リバース』には、山村貞子に当たるキャラクターとしてサマラ=モーガン(Samara Morgan)という女性が登場する。
1998年の映画版『リング』における貞子の設定を下敷にしており、1998年映画版と同様に、クライマックスでは前髪を振り乱しテレビから這い出てくる怪物として描かれるが、貞子と違って物語の中盤で生前の素顔が明かされる。原作小説にあった半陰陽者の設定はなく、リングウィルスも存在しない。
山村貞子(やまむら さだこ)は、鈴木光司の小説およびその映像化作品『リング』シリーズに登場する架空の怨霊。生前は超能力者で、元女優。
物語が始まる時点ですでに故人であるという設定だが、現世に強い未練や恨みを残し、見た者を呪い殺す「呪いのビデオ」によって災禍を巻き起こす。また続編『らせん』では現世への復活を遂げるなど、シリーズを通しての元凶として登場する。原作の描写によれば、色白黒髪で長身華奢、大人びた顔立ちの美女である一方、半陰陽者という身体的特徴を持つ人物という設定である。ただし、貞子の設定はメディアごとに異なっており、貞子のキャラクターを有名にした1998年の映画版『リング』では、白のワンピースに長い前髪で顔を覆い隠した女性として登場し、終盤ではテレビから実体化して這い出てくる恐ろしげな怪物として描かれた。
貞子の初出は、1991年に出版された鈴木光司のホラー小説『リング』である。同作は、主人公・浅川和行が親戚の不審死に疑問を抱いたことをきっかけに、友人の高山竜司と共に、映像を見た者を7日後に呪い殺すとされる「呪いのビデオ」の来歴に迫っていくという筋立てになっており、物語中盤で呪いのビデオを作成した人物として超能力者「山村貞子」の名が浮上する。浅川と高山は貞子の詳細な経歴を調べ、この世に恨みを抱いて死んだ貞子が怨念となってビデオを念写したという結論に至り、古井戸に遺棄されていた貞子の遺体を発見し供養することで事件の解決を試みる。
原作小説『リング』における貞子は、一連の事件の元凶ではあるものの、作中には直接登場しない。しかし、1998年に公開された映画版『リング』では、胸元まで伸びた長い前髪で顔を隠した女性のイメージとして物語に登場し、クライマックスでは貞子自身がテレビに映った「呪いのビデオ」の映像の中から前髪を振り乱しながら這い出て、直接高山の部屋に現れるという独自の描写がなされた。恐怖にすくむ高山へ奇怪な動きでにじり寄り、前髪の間から片目のみを覗かせ、白目を剥いた凄惨な形相で彼を睨み殺すこの場面は、映画の中でも特に衝撃的な場面として描かれており、後のリメイク作品でも踏襲されたほか、様々なパロディも作られた。映画版のクライマックスにおける描写は海外でもよく知られており、この演出は貞子の存在を原作小説や映画から独り立ちさせてしまうほどの成功を収めた。貞子は現代を代表するホラーヒロインとなり、その後も人々の記憶に、ひいては映画史に名を残すキャラクターとなった。
原作小説の第2作『らせん』は、新たな主人公・安藤満男が、貞子の呪いが人体にどのように作用して死をもたらすのかという原理を、医学的な見地から探っていく内容である。安藤は呪いの正体が、映像を見た者に感染し心臓に作用する「リングウィルス」であることを突き止めるものの、貞子は同作では黒幕的な立場で暗躍し、物語半ばで現世への復活を果たす。
原作小説3部作の最終作となる SF小説『ループ』における貞子は、主人公・二見馨が近未来の世界に蔓延している「転移性ヒトガンウィルス」の謎に迫っていく過程で、コンピュータウイルスによって変異した仮想生命体「ヤマムラサダコ」として登場する。同作では、前2作の世界が環境シミュレーター内に再現された仮想世界であることが明かされ、人類は貞子に対抗する手段を得ることになる。
その後に発表された外伝『バースデイ』は短編小説集となっており、収録作品のうち『空に浮かぶ棺』では『らせん』における貞子復活の詳細が、『レモンハート』ではかつて貞子に想いを寄せていた男性・遠山博の回想を通して生前の貞子の姿が描かれ、『ハッピー・バースデイ』では『ループ』の後における貞子の末路が描かれている。原作小説のリングシリーズは3部作と『バースデイ』でいったんの完結を迎えたが、2012年からはシリーズが再開し『エス』、『タイド』に貞子が登場している。
貞子の母親である登場人物・山村志津子のモデルは、明治時代に実在した人物である超能力者の御船千鶴子(1886~1911年)であると言われ、『リング』の作中では実際の「千里眼事件」を想起させる超能力実験の経緯が描かれている。貞子という名前を、御船と同様に千里眼事件に関わった実在の人物である高橋貞子(1886~1933年以降没年不詳)と関連付ける意見もある。
また、貞子のモチーフのひとつとして、1991年に出版された原作小説『リング』よりも以前の1970年代末から、妖怪「口裂け女」の派生怪談として広まっていた都市伝説「カシマさん」を指摘する意見もある。貞子がビデオテープを介して広まり、ビデオを見た者を呪い殺すのに対し、カシマさん(カシマレイコ)は噂を介して広まり、噂を聞いた者の元に電話や夢の中を通じて現れて呪い殺す。
原作小説の他にはシリーズ作品として、『リング』シリーズを原作とする映画やテレビドラマや日本国外向けの翻案作品のほか、『らせん』とは別の未来を描いた映画オリジナル作品『リング2』、『ザ・リング2』など、原作小説の設定を下敷きにしつつも独自の物語が描かれた複数の派生作品が作られている。映画『リング0 バースデイ』は短編小説『レモンハート』を元にしつつも貞子の視点で独自の物語が描かれ、連続ドラマ『リング 最終章』と『らせん』では、原作とは異なる設定の物語が描かれているなど、貞子の設定にも作品ごとに差異がある。
2016年夏には、『リング』シリーズと同様に「Jホラー映画」の人気シリーズ『呪怨』に登場する「伽椰子」と「悪夢の“ 恐 ”演」を果たすスピンオフ映画『貞子 vs 伽椰子』が公開された。
1998年公開の映画版『リング』における貞子は、白い衣装を着た長い黒髪の女性という姿で描写されるが、これは古典的な日本の幽霊のイメージを反映させたものである。また映画版における貞子の描写には、監督の中田秀夫と脚本の高橋洋が1996年公開の映画『女優霊』で用いた手法とその反省点が反映されており、同作に登場した幽霊は、映画版における貞子の原型とも評されている。なお、『女優霊』の内容には高橋洋が子供の頃、日本で1967年にテレビ放送されたアメリカ映画『シェラ・デ・コブレの幽霊』の予告編を目にした経験が反映されており、これが映画版『リング』のアイデアにも影響を与えたという。
1998年映画版における、貞子がテレビから這い出してくる映画版独自の描写は、脚本の高橋洋が創作したものである。テレビの中から怪異の主が現れるという描写には、1982年のアメリカ映画『ポルターガイスト』との関連性を指摘する意見もある。
1998年映画版『リング』に登場した貞子は、あまりにも恐ろしくセンセーショナルなものだった。胸元まで伸びた長い前髪の間から片目のみを覗かせ、白目を剥いているという凄惨な姿は、その後のシリーズ作品に踏襲されるだけでなく、1998年映画版がヒットして以降、テレビから這い出てくる貞子を題材にしたパロディ作品や、フィクションの登場人物に「貞子」という仇名がつけられているという設定の作品が国内外で多く登場している。貞子は、映画や原作小説といった垣根を超えたホラーアイコンとして大成功を収めた。原作者の鈴木光司は、映画版の貞子のパロディや物真似が広く浸透した理由について、貞子のキャラクターが明瞭ではなく、前髪を垂らして白い服を着れば誰でも容易に物真似ができるというハードルの低さも要因だったのではないかと推察している。
現在、貞子のキャラクター性は広く定着しており、女性アイドルがオフショットで白いワンピース姿で長い黒髪で顔を隠して自撮りする様子もみられる。2022年10月現在、貞子は公式Twitter、Instagram、TikTok、YouTubeチャンネルを運営している。ちなみに貞子の YouTubeチャンネルは登録者数12万人、総再生回数386万回となっている(2022年6月時点)。
貞子の人物像
作中では幾度か貞子の容姿や人柄について描写されている。生前の貞子の写真を見た吉野賢三はその姿を、今まで見たことがないような美人であると形容した。生前の貞子と交際していた遠山博は、少女らしいあどけなさと時折垣間見せる艶かしさを併せ持った人物として彼女を回想している。一方で遠山と同様に劇団員時代の貞子を知る有馬真は、大人しく、あまり仲間と交わろうとせず、不気味な印象であったと述懐している。復活後の貞子と遭遇した安藤満男によれば、身長は160センチメートル弱、髪は背中の中ほどまで伸びている。鼻梁は細く長く、若干つり目で二重瞼、声は低いが魅力的な響きがあったという。
1995年のスペシャルドラマ版と1999年の連続ドラマ版、1998年の映画版とその続編およびリメイク作品など、多くの映像化作品において貞子は白ずくめの衣装で登場する。1998年の映画版では、白いドレス姿があたかも日本の幽霊の死に装束のように描写された。しかし、貞子がこうした白い服を着ているのは映像化作品でのみ見られる描写である。原作小説『リング』における貞子は、死亡する直前にはグレーのスカートを身に着けており、『らせん』および『レモンハート』で復活を果たした際にはライムグリーンのワンピースを着ており、その後安藤と再会した際には水玉模様のスカートに生足という出で立ちであった。
ちなみに、原作小説において白一色の衣服を着て登場するのは初登場時の高野舞であるが、映画版の舞は黒い服を着ている。映画版『らせん』の貞子は、復活後は高野舞の容姿をコピーして現れるが、この時は派手な赤い柄物の衣装を着ている。1999年の連続ドラマ『リング 最終章』では、貞子も舞も白い衣装である。
貞子の能力
生前の貞子は、念写や予知といった超能力を使うことができたとされるほか、作中では以下のような能力を用いている。
呪いのビデオ
作中において最初に生み出された「呪いのビデオ」は、一般的な VHSの120分テープに録画されたと設定されている。
観た者は7日後に死ぬとされる呪いのビデオ映像。貞子の怨念がビデオテープに念写されたもので、呪いのビデオを見た者はリングウィルスに感染する。原作小説では単に「ビデオ」、「ビデオテープ」と呼ばれているが(『らせん』の終盤で「魔のビデオテープ」と呼ばれるようになる)、映画版では「呪いのビデオ」という呼び名で広く都市伝説化している設定で描かれている。
原作小説では、映像の内容についても繰り返し詳しく描写されている。ビデオを最後まで見るよう強要する文字メッセージに続き、貞子の故郷である伊豆大島の三原山とその噴火に関する抽象的・具体的な映像、超能力実験に関連した念写による「山」の文字と、繰り返し特定の目を示し続けるサイコロの映像、老婆が語る伊豆大島の古い方言での「水遊びばかりしていると化け物が来る」、「お前は来年に子供を産む」という意味のメッセージ、超能力実験を非難する大勢の人々や、「貞」の文字が出てくる古いテレビを用いた念写実験、生まれたばかりの赤ん坊のイメージ、貞子が殺害される間際に見た光景、肩から血を流し迫る男の顔、そして最後に、映像を見た者が1週間後に死ぬことを警告するメッセージで締め括られるという構成となっている。映像の長さはトータルで20分程度。映像には抽象的なものと写実的なものの2種類があり、このうち写実的な映像には、貞子の瞳を通したことに由来するまばたきが入っている。作中に登場するビデオの末尾は蚊取線香のテレビCMで上書きされているが、当初は見た者に対して、死にたくなければビデオをダビングしてまだ見ていない他者に見せるように強要するメッセージが入っていたとされる。
後年の映像化作品では、呪いのビデオの内容にも独自に変更が加えられており、様々なバージョンの呪いのビデオが映像化されている。1998年の映画版では、映像は井戸に突き落とされた貞子の視点による、丸く縁どられた外界を見上げた光景から始まるが、これを踏襲するアメリカ映画『ザ・リング』では、この光景が作品タイトル「リング(輪)」に込められた意味のひとつとして解釈されている。また、いずれの映画でもビデオの映像は井戸を外から見た独自の映像で締め括られているが、1週間後の期限を過ぎるとこの映像の後には貞子が井戸から這い出てくる姿が現れ、映像内の貞子が画面手前に向かってゆっくりと歩み寄り、画面を突きぬけるようにして現実世界へと出現するという演出がされている。また、1999年の連続ドラマ『リング 最終章』での呪いのビデオは、ミュージック・ビデオの映像に混信したノイズという形の映像として描かれた。
原作小説『らせん』では、「呪いのビデオ」の内容を描写した文章を読んだ者にも、映像を直接見た場合と同様の呪いがもたらされるという設定が描かれた。また、鈴木光司によって出版された現実の小説『リング』と、作中で浅川順一郎によって出版された劇中小説『リング』は、「呪いのビデオ」の映像について描写した文章が一字一句同じであるため、現実の読者に対しても、この文章を読んだ時点で貞子の呪いにかかっていると暗示する効果となっている。原作がブームだった当時の読者の中には、小説の内容を真に受けて出版社に相談の電話をかける者まで現れたという。
作品によっては、ビデオを見た直後に正体不明の無言電話がかかってくることがある。原作小説では電話がかかってくる条件が曖昧にされているが、1998年の映画版では、電話がかかってくるのは貞子の遺体が遺棄されている場所から近い場合に限定されており、このことが謎解きのヒントにもなった。
リングウィルス
実在した天然痘ウイルスに、貞子の遺伝情報が念写されたもの。
呪いのビデオを見た者に感染するウイルス。感染した者がウイルスの増殖に手を貸さなかった場合、感染から1週間後(168時間後)の同時刻に心臓周辺の冠状動脈に肉腫を発生させ心筋梗塞を誘発する。発作を起こしたものは喉の渇きに襲われ、頭を掻き毟りながら驚愕したような表情で死亡する。
リングウィルスという名は、小説『らせん』において安藤満男と宮下によって命名された。形状は天然痘ウイルスと大きく異なり、人間の精子の頭部と尾部がリング状に繋がったような姿となっており、実際に貞子の遺伝子情報を保持している。感染者が排卵日の女性の場合、あるいはウイルスの進化と増殖に手を貸した男性の場合には、リングが解けて精子状になる。女性の場合、体内に侵入したウイルスは心臓へは向かわずに子宮へ侵入し卵子に受精、感染者の子宮を用いて「新たな貞子」を再生する。一方で男性の場合には、ウイルスは脳へと向かって感染者を操り、「呪いのビデオ」と同じ効果のある文章を書かせることになる。
1998年の映画版『リング』やそのリメイク作品では、リングウィルスの感染者は、写真や映像に撮られるとその顔が歪んで映るという描写が付け加えられた。また同年公開の映画版『らせん』では、リングウィルスは性行為でも感染するという設定になっており、またビデオの映像を観た場合と浅川の小説『リング』を読んだ場合とでは死因が異なり、後者は激しく咳き込んだ後に窒息死するという設定になっている。
増殖
生前の貞子は、身体的特徴は女性であるが生物学的には男性であるという半陰陽者(睾丸性女性化症候群)であり、子供を産むことができない身体であった。しかし復活後の貞子は、他の女性を媒体に、あるいは自分だけでも増殖が可能という、全く新しい形の人類へと進化した。
リングウィルスに感染したことにより貞子を妊娠した女性は、受精から1週間で臨月に至り、貞子を出産する。さらに、赤子として産み落とされた貞子は1週間程度で成人へと成長する。この生まれた貞子は単なるクローン再生ではなく、オリジナルの貞子の生前の記憶を保持している。また、リングウィルスに感染した女性を媒体として現世への復活を果たした貞子は、半陰陽者として完全な両性の生殖能力を持っており、自らの精子を自らの卵子に受精させることで、自分で自分のクローンを出産することができる。
原作小説では、リングウィルスを通じて再生した貞子はオリジナルの山村貞子本人の姿で復活するが、映画および連続ドラマ版の『らせん』では、貞子の記憶を持ちながらも、貞子を妊娠し出産した女性の容姿をコピーして復活するという設定で描かれた。
柑橘類の香り
原作小説では幾度か、呪いのビデオがもたらす怪異に触れた者や貞子に遭遇した者が、柑橘類あるいはレモンの香りを嗅ぎ取ったという描写が登場している。また貞子の母である山村志津子も生前、予知の能力が働く時には決まって柑橘系の香りを感じたと話していたと描写されている。
原作小説における生前の貞子の経歴
1946年
貞子の母親・山村志津子が、伊豆大島沖の海中に投棄されていた役小角像を引き上げる。志津子はこのときから予知や透視の超能力を身に着けたとされる。
1947年
山村貞子、伊豆大島の差木地(現・東京都大島町南部)に生まれる。母親は志津子、父親は心理学者の伊熊平八郎(妻子持ち)。貞子は半陰陽者(睾丸性女性化症候群)だった。
1954年
貞子(7歳)に弟が生まれるが、生後4ヶ月で病死する。
1955年
志津子の超能力の公開実験が行われるが失敗に終わる。実験はインチキであるとマスコミに批判されたことにより、志津子は発狂する。
1956年
志津子が三原山の火口で投身自殺する。母の死後、貞子(9歳)は差木地に住む母親の従兄弟、山村敬の家で引き取られる。
1957年
貞子(当時小学4年生、10歳)が同年10月13日に発生した三原山噴火を予知し、小学校内で有名になる。
1958年8月29日
貞子(11歳)、超能力研究家の三浦哲三に念写実験の成果を送る。
1965年
貞子(18歳)、上京し東京都新宿区四谷を拠点に活動する劇団「飛翔」に入団。音響担当者の遠山と恋仲になるも、浮世離れした個性や、演出家の変死など様々な怪事象を引き起こしたため、舞台『黒い服を着た女』主演後に退団する。
1966年夏
結核を罹った父・伊熊平八郎が入院した南箱根療養所(現・静岡県田方郡函南町東部)で、父の担当医だった長尾城太郎医師に強姦され井戸に突き落とされて殺された(享年19)。この時、長尾は天然痘ウイルスのキャリアだったため、貞子は死の直前に天然痘に感染していた。
殺された貞子の怨念は成仏することなく残り、人類に根絶させられた天然痘の怨念と融合し、怨念の拡散による無差別攻撃を開始する。
※南箱根療養所は丹那盆地に所在し、丹那断層を突き抜けるトンネルを通過し、熱函道路の中ほどを左折した先にあると設定されている。
1990年8月26日20:00頃
貞子の怨念は、死体が遺棄された井戸の上に建てられた南箱根パシフィックランドの宿泊施設ビラ・ロックキャビンのB-4号棟に設置されて間もない VHSビデオデッキを介して念写され、観た者をリングウィルスに感染させる「呪いのビデオ」を生み出すことになる。ビデオのダビングは、絶滅させられたウイルスに増殖の機会を再度与えることを意味し、浅川和行はこれを天然痘ウイルスの怨念による人類への逆襲であると解釈している。
※南箱根パシフィックランドは1998年公開の映画版では「伊豆パシフィックランド」となっている。原作者の鈴木によれば、この貸し別荘のモデルとなったのは静岡県田方郡函南町に所在する「南箱根ダイヤランド」の宿泊施設である。
1990年8月29日
ビデオを見た B-4号棟の宿泊客4名の若者が悪戯でビデオの一部を上書きしてしまったため、リングウィルスの遺伝情報は不完全になり、ビデオテープの複製による伝染計画は少数の犠牲者を出した時点で頓挫する。しかしそれによって突然変異が発生し、生存の条件は単なるビデオのダビングではなく、「ビデオを別の媒体へ転換すること」となった。『リング』の主人公である雑誌記者・浅川和行はビデオを見たにも関わらず生存するが、これは浅川和行がダビングを行ったためではなく、彼が事件の全貌を記事にしていたからであった。その後浅川和行は事故死するが、彼の兄の浅川順一郎は、和行の遺した記事を『リング』の書名で小説化し、この結果リングウィルスは「読むと感染する書籍」という新しい形で、出版によって世に流布していく。
1990年10月18日
浅川和行と高山竜司によって井戸から貞子の白骨化した遺体が掘り出される。
1990年10月19日
貞子の遺骨が浅川の手から山村敬に引き渡される。当時の法律では殺人事件の時効を過ぎていたため、警察への通報は行われなかった。
最初のビデオテープ(貞子の呪い)
浅川に協力する中でビデオを見た高山竜司が死亡する。
1990年11月1日
高山の教え子・高野舞が、高山の遺品にあったビデオテープを見てしまったためにリングウィルスに感染し、貞子は舞の胎内で再生し、舞の精神を乗っ取る。
1990年11月8日
貞子、現世への復活を果たす。
浅川順一郎の出版した『リング』が映画化されることになり、貞子自身が主人公の一般公募に応募し主役の座を射止める。貞子は映画に自分の遺伝子情報を念写した(リングウィルスを仕込んだ)ため、映画を鑑賞することは呪いのビデオを見るのと同じ効果となった。なお、復活した際に出会った安藤満男には自分のことを舞の姉、高野真砂子と偽って接触し、彼の行動を監視していた。
以後リングウィルスは、小説だけでなく、これを扱った映画や音楽、ゲーム、あるいはインターネットなど、浅川順一郎の出版した『リング』を扱った様々なメディアや作品へと変異した。これらは見た者すべてにリングウィルスを感染させていく。
1995年スペシャルドラマ版の貞子
演じた女優 …… 三浦 綺音(22歳)、竹島 由夏(9歳 少女期)
原作小説にほぼ忠実に作られた1995年8月放送のスペシャルドラマ『リング 事故か!変死か!4つの命を奪う少女の怨念』(フジテレビ系『金曜エンタテイメント』)での貞子は、原作通りに半陰陽者(睾丸性女性化症候群)であり、官能的な悲劇のヒロインの要素が強く、人間としての素顔も見せている。「呪いのビデオ」の内容も原作に忠実である。父親の伊熊平八郎が、金儲けのために山村母娘を売るマッドサイエンティストになっており、娘の貞子とも肉体関係を持っている。原作通りに貞子を殺害する長尾城太郎とは恋愛関係を匂わせる描写もある。高野舞が超能力であるという設定がなく、リングウィルスも登場しない。
1996年ラジオドラマ版の貞子
演じた女優 …… 山崎 和佳奈(30歳 声の出演)
1996年1~4月に TBSラジオのドラマ番組『角川ドラマルネッサンス』枠で放送された。全12話。同年6月には CD発売された。
主人公の浅川透(演・古川登志夫)はラジオの人気パーソナリティで、最初の犠牲者の死を目撃する設定となる。本作では、呪いのビデオが「呪いのカセットテープ」に変更されるなど、音での表現に即した内容にアレンジされている。
映画作品における貞子
1998年に映画『リング』と『らせん』が、おおむね原作小説に準拠した設定で2作同時公開された。この映画版『らせん』とは異なる『リング』の続編として独自の展開を描いた1999年の映画『リング2』も作られた。その後、短編小説『レモンハート』を元に、原作にはない設定も加えた2000年の映画『リング0 バースデイ』が作られた。
『リング』シリーズを映画化した作品はすべてホラー映画として作られており、貞子は原作小説よりもさらに怪物的に描かれている。原作にはないエピソードとして、貞子は母・志津子の超能力公開実験の際に観覧していた記者を変死させており、さらに呪いのビデオを見て1週間の期限が来た者の前に直接出現し、長髪を振り乱し狂った目を剥いて襲ってくる化け物といった演出で描かれていた。ビデオを見た直後には井戸のあるペンションでのみ、ビデオテープのリール音のような音が聞こえる正体不明の無言電話がかかってくる。呪いのビデオを見た人間の前に、貞子は時折姿を見せる。見た人間の写真は顔が歪んで写る。呪いのビデオの死因にリングウィルスは関係せず、ただの呪いとして描写されている。映画版で長尾城太郎は登場せず、貞子を殺害するのは伊熊平八郎の役割となっている。また、原作小説では端役であった山村敬が、金儲けのために志津子を利用する間接的な元凶となっている。
1998年映画版『リング』での貞子
演じた女優 …… 伊野尾 理枝、白井ちひろ(少女期)
貞子のキャラクターを有名にしたのが、1998年の映画版『リング』におけるクライマックスで、突然に点灯したテレビの映像で井戸の中から現れ、不自然な歩き方でにじり寄ってきた貞子が、ブラウン管から這い出て実体を伴って高山竜司の部屋に現れ、恐ろしい形相で高山を睨みつけて呪い殺す場面である。
貞子がテレビから這い出てくる場面の前後は、貞子の動きを奇怪なものに見せることを意図して、大部分が逆回転で撮影されている。貞子が高山を睨みつけるカットは目元だけを大写しにする演出がされているが、このカットのみは俳優ではなく助監督の宮崎紀彦が演じており、人間らしく見えないことを意図してまつげを切り落とし、上下を逆にして撮影している。
呪いのビデオに関連する場面や、貞子がテレビから這い出てくる場面で流れる、何かが軋るような甲高い音は、映写機のリールが回転する音をイメージしたものである。
映画版『リング』における貞子の経歴
※1998年の映画版『リング』とその関連作品では、原作の設定をある程度踏襲しつつも、経歴の年代などが変更されている。
1951年8月
伊豆大島の差木地で生まれる(原作では1947年生まれ)。志津子は海岸の賽の河原で貞子を出産した。原作同様に母親は志津子であり父親も伊熊平八郎とされているが、本当の父親は人間ではなく、海から来た魔物であると示唆されている。映画版では半陰陽者の設定はない。
母親の山村志津子は、貞子を産む前に三原山噴火を予知し、新聞記事として取り上げられている。映画版では、志津子の能力は「千里眼」と形容されている。この時の新聞記事は後に呪いのビデオに念写されることになる。
1956年
母親である志津子の超能力の公開実験が行われる(原作では1955年の実施)。原作と異なり志津子は次々と実験を成功させるものの、この時に実験をイカサマだと指摘した記者を、貞子(5歳)がその場で呪い殺してしまう。この時に殺された記者は『リング0 バースデイ』に登場する宮地彰子の婚約者であり、これが後の遺恨となる。志津子は原作同様に、三原山に身を投げて自殺する。
1968年
貞子(17歳)、東京の劇団「飛翔」に入団(原作では1965年)。『リング0 バースデイ』では、舞台『仮面』(原作では『黒い服を着た女』)の主演を務めた際、他の劇団員たちとの確執や、彼女を仇敵として狙っていた宮地彰子による復讐といった影響から死亡・復活を経て怪物化し、団員や彰子を次々と超能力で殺害した末に、伊熊平八郎によって井戸に突き落とされる。原作にあった、天然痘ウイルスのキャリアとなる設定は描かれない。
『リング2』では、検死解剖の結果、死亡時期が発見の1〜2年前(つまり1995年〜1996年頃)であることが判明し、貞子が井戸の中で30年近く生存していたという設定が追加されている。
1997年8月29日
井戸の上に建てられた伊豆パシフィックランド(原作では南箱根パシフィックランド)の宿泊施設ビラ・ロックキャビン B-4号棟に宿泊した4人の若者が呪いのビデオを見る(原作では1990年の出来事)。なお映画版では、作中で最初に登場する4人の犠牲者の以前にも呪いのビデオを見て死んだ子供がいるとされている。
1997年9月4日
呪いのビデオを見た4人が同時に死亡する。『リング2』では、大石智子の元に現れた貞子の姿を倉橋雅美が目撃していたことが語られている。
1997年9月20日
浅川玲子、高山竜司によって井戸から貞子の白骨遺体が引き揚げられる。遺体は一旦警察に引き渡された後に『リング2』で山村敬へと引き渡される。山村敬はその後遺体を海に流す。
1997年9月21日
貞子、高山竜司の自室のテレビから実体化し、彼を睨み殺す。
以降の展開は、『らせん』と『リング2』で異なる。
1998年映画版『らせん』での貞子
演じた女優 …… 佐伯 日菜子(20歳)、中谷 美紀(22歳 復活後・高野舞との二役)
前作『リング』とは異なる種類の恐怖の存在であり、素顔を見せ、淫靡で蠱惑的な魔性の女として描かれている。性行為の際に相手の顎を舐める癖がある。復活時には受胎した高野舞の姿で復活し、超能力を使える描写がある。安藤孝則と高山竜司を出産する。また、作中で呪いのビデオを見る役割が原作のように高野舞ではなく安藤満男に変更されているため、彼との肉体関係を介して舞がリングウィルスに感染するという経緯となっている。映画版では、呪いのビデオを見たり派生メディアに関連した者が井戸の夢を見るようになる。原作小説のリングウィルスや自己増殖の設定も存在する。
1999年の映画『リング2』での貞子
演じた女優 …… 伊野尾 理枝、土田 芽吹(少女期)
井戸の中で30年近く生き続けていたという設定が加わっている。前作で呪い殺した人間(大石智子や沢口香苗など)の姿を借りて登場する能力があるが、高山竜司だけは貞子の意志とは別に、高野舞や浅川陽一を助ける守護霊的な存在として登場する。ビデオを見ていなくても貞子の姿を見た者(倉橋雅美)や呪いを免れた浅川陽一は、テレビを極端に恐れ、貞子の超能力が乗り移ったかのような描写を見せる。また、高野舞や浅川陽一など関係者の前に時折姿を見せる。
なお、映画『らせん』における浅川陽一は、原作『らせん』における浅川陽子と同様にビデオをダビングして祖父母に見せたにもかかわらず、ビデオの結末が書き換えられていたために呪いにかかり死亡している。
2000年の映画『リング0 バースデイ』での貞子
演じた女優 …… 仲間 由紀恵(20歳)、古谷 千波(少女期)
原作小説では貞子の父親だった伊熊平八郎が「自分は貞子の父親ではない」と語り、海から現れた異形の怪物が本当の父親であるかのように描かれた。また、幼少時に貞子は2人に分裂し、一方は母・志津子に似た普通の子供で、もう一方は本当の父親に似た化け物じみた邪悪な存在であったため、伊熊は後者を隔離し薬漬けにして成長を止め、自分の家の2階に幽閉したといったエピソードが加わっている。その一方で、前者の貞子も治癒能力や不確定な予知能力・霊能力などの超能力を持つ。化物の貞子に呪殺される前触れとして犠牲者が朽ちた家や井戸の夢を見る描写がある。人間の貞子は「劇団飛翔」の団員達にリンチを受け殺害されるが、化物の貞子と融合し復活した。
2012年の映画『貞子3D』での貞子
演じた女優 …… 橋本 愛(16歳)
過去の『リング』シリーズと同様に怪物として描写されるが、『らせん』で登場した安藤孝則が青年で登場するため、作品世界は『リング2』とは別のパラレルワールドであり、貞子自身も『らせん』や『リング0 バースデイ』の時とは異なる人間としての素顔を見せている。また、「呪いの動画」を見た犠牲者が貞子のような髪型に変貌したり貞子に使役される描写がある。
現世に復活するための媒介として柏田清司という男性に協力させ、ニコニコ動画上の「呪いの動画」を通じて現世に出現する(パソコン・携帯電話・スマートフォン以外にも画面のある場所すべてに出現可能)。呪いの動画の被害者は心臓発作ではなく貞子に襲われた状況で不可解な自殺を遂げる。
復活する際の肉体として超能力者の鮎川茜を狙い、孝則を人質にして井戸のある廃墟のビルに誘き寄せ、一度は茜の肉体を乗っ取ったが、「呪いの動画」の根源になるスマートフォンを孝則に破壊されたことで消滅した。
2013年の映画『貞子3D2』での貞子
前作『貞子3D』とは異なる新たな「呪いの動画」が世界に出回っており、貞子は安藤との間に娘の凪をもうけた茜を狙う。茜の死後は凪を狙うが、安藤の妹の楓子に凪を救出されたため消滅する。しかし、街には凪に似た貞子の分身の女性(貞子の子)たちが溢れ、死の連鎖は終わらないことが示唆される。貞子自身の登場場面は少ない。貞子の出現の際には井戸が現れ血のような赤い水が溢れ出す。呪いの動画の被害者は貞子に肉体を操られ、不可解な自殺を遂げたり精神に異常をきたす。
2016年の映画『貞子 vs 伽椰子』での貞子
演じた女優 …… 七海 エリー(29歳)
容姿は過去の『リング』シリーズに準じているが、呪いのビデオを見た者が死亡するまでの時間は2日間(48時間)に短縮されており、描かれるのは「呪いのビデオを見ると電話がかかってきて、その2日後には死亡する」という設定のみである。
作中に登場する霊能力者の常磐経蔵は、一時的に貞子を追い払える力を持つ。
呪いのビデオは1990年代の有名な都市伝説という設定であるが、内容は所在地不明の廃墟の家の内部が映るだけ(家のドアが徐々に開き、貞子がその姿を現す)など変更されている。呪いの回避方法は作中では判明していない。ビデオを見た直後に正体不明の無言電話がかかってくる。呪いのビデオはリサイクルショップでビデオデッキごと中古で販売されていた。リサイクルショップの店員・小林恵子も見ており不可解な自殺を遂げる。貞子本人も時には姿を現すうえ、映画『リング』ふうにテレビから這い出て直接出現するシーンがある。貞子はビデオを見た人間に憑依しており、期限前に自殺しようとする人間も呪殺する。また、霊媒師が貞子を除霊しようとすると、他の人間を操って呪殺する。呪殺方法は心臓発作ではなく、不可解な方法による自殺など。戦闘の際には頭髪による攻撃を多用する。貞子を封印していた井戸は、伽椰子の呪いの家の裏の林に存在する。
2019年の映画『貞子』での貞子
演じた女優 …… 南 彩加(貞子の母・山村志津子との二役)
本作は『リング2』の直接的な続編であり、貞子はこれまで通りに怪物として描かれるが、本作では自身の肉体の復活を目的としている。 貞子の狂信者である霊能力者の祖父江初子によって監禁された少女の肉体に乗り移るための儀式を行っていた。 人間の前に姿を見せるが、目撃者は精神崩壊を起こす程度までにとどまっている事が多く、儀式を邪魔した相手のみ呪い殺している。映画版『リング』ふうにテレビから這い出て直接出現することもあるが、 殺戮までには至らない。動画配信サイトに呪いのビデオに類似した動画が映るものの、呪いの効果があるかどうかは不明。
1999年の連続ドラマ『リング 最終章』での貞子
演じた女優 …… 木村 多江(27歳 貞子の母・山村志津子との二役)
貞子と周辺の人間関係などの設定が最も大きく変更されている。貞子は人間としての素顔を見せる。
『リング 最終章』では、死亡前に劇団「飛翔」の団員・森山修平との間に男児をもうけており、それがのちの高山竜司に設定されている。また、彼女が死亡する井戸は箱根や伊豆でなく東和泉女子学園の校舎内に存在している。呪いのビデオは松崎ナオの楽曲『白いよ。』のミュージッククリップ映像になっており、パソコンで解析することで隠されたメッセージを読み取る仕掛けとなる。呪いが発動するまでの期限は7日から13日に変更されている。ビデオの内容は原作小説と映画版を混合したようなものとなっている。
高山竜司も母・貞子の遺伝で超能力を持ち、その能力で人間を呪殺することもできる。また、彼の血液が貞子のリングウィルスのワクチンの材料になる伏線がある。高野舞との関係は義理の兄妹となっており、恋愛感情が原作小説よりも強くなっている。伊熊平八郎が生前に竜司と舞を養育している。貞子の母・山村志津子は自殺しておらず伊豆大島で生存しており、間接的な元凶である山村敬一郎(原作での山村敬)によって納屋に幽閉されている。
貞子に関しては、1990年代に存続していた劇団「飛翔」の女優に憑依したり、過去に貞子が起こした事件の犠牲者が増えたり(森山修平が入院した結核療養所の関係者やペンションの管理人など)している変更がある。貞子を殺した長尾城太郎は、現代では浅川の知り合いの宮下理恵子の勤める病院の上司となっている。長尾は原作小説では突発的に貞子を強姦していたが、『最終章』では森山を人質にして計画的に肉体関係を迫っている。長尾は生き残った原作と違い、貞子に呪殺される。また貞子の夫である森山修平は、病院に入院しているが、長尾の陰謀により殺害される。浅川は最初の犠牲者の1人である岩田秀一の死の現場に居合わせている。貞子が半陰陽者(睾丸性女性化症候群)であるという設定がない。
1999年の連続ドラマ版『らせん』での貞子
演じた女優 …… 木村 多江(28歳)、矢田 亜希子(20歳 復活後・高野舞との二役)、及川 麻衣(29歳 復活後・高村典子との二役)、須藤 理彩(23歳 復活後・西島美咲との二役)
連続ドラマ版『らせん』では、リングウィルスに対抗するワクチンが開発され、呪いのビデオは根絶されることになる。
また、呪いのビデオに代わる「呪いの CD-ROM」と、貞子と結託する黒幕である医科大学助教授・織田恭助と科捜研部長・陸田博が登場する。
貞子は呪いの CD-ROMを介して出産した女性の肉体(その際、女性に悪夢を見せ追い詰める)をコピーし、成長後に母体となった本人を抹殺する。男性の場合はその場で死亡する。作中で貞子がコピーした人物は、安藤満男の勤める青葉学園女子高校の生徒の姉のOL・西島美咲、TVレポーターの高村典子、前作『最終章』から事件の真相を追っていた高野舞の3名。貞子本人と同様に超能力が使えるが、コピーした女性の体質まで受け継いでしまうために、美咲の場合は彼女が持っていた植物アレルギーで死亡する。出産の際には赤い月が出現する。また、細胞の急激な成長による老化現象を起こしている。貞子の細胞の一部を移植した人間も、動植物を急成長させる超能力を使えるようになる。原作小説のように半陰陽者ではないためメカニズムは不明だが、一人で出産する能力を持ち、安藤孝則と安藤満男を出産する。
安藤満男の妻・美和子は原作小説と違って離婚しておらず、孝則を事故で失ったショックで精神病院に入院している。後に貞子に真実を告げられ逆上して満男を襲うが、正気を取り戻し和解する。
アメリカ映画版『リング』シリーズにおけるサマラ=モーガン
アメリカでリメイクされた2002年の映画『ザ・リング』、2005年の映画『ザ・リング2』および2017年の映画『ザ・リング リバース』には、山村貞子に当たるキャラクターとしてサマラ=モーガン(Samara Morgan)という女性が登場する。
1998年の映画版『リング』における貞子の設定を下敷にしており、1998年映画版と同様に、クライマックスでは前髪を振り乱しテレビから這い出てくる怪物として描かれるが、貞子と違って物語の中盤で生前の素顔が明かされる。原作小説にあった半陰陽者の設定はなく、リングウィルスも存在しない。
またしても、資料をのっけたばっかでブログの更新がトンとご無沙汰で申し訳ございません……やっぱり秋はなにかと忙しい季節ですね。
山村貞子さんが、創造者である鈴木光司先生の手を離れて、そのおぼつかない足取りをキープし続けながらも立派に独り立ちして久しいですが、この、本質を遠く離れて生き続ける怨霊スタイルは、まさしくお岩大姐さん、お菊大姐さんどころか、白峰崇徳院とか大江山酒呑童子の流れをジャブジャブくんでいる正統中の正統ですよね! そのうさんくささこそが、日本文化において「永遠」を勝ち取るカギなのではないでしょうか。
これで『ゲゲゲの鬼太郎』とかに出てきたら「日本の怪異」として太鼓判なのですが、それはさすがに、トイレの花子姐さんはできても口裂け女姐さんはいまだならずというハードルの高さですから、あと30年は待つ必要があるでしょうか。
映画『貞子DX』、期待度正真正銘のゼロで楽しみにしているところです。今話題の角川書店ごり押しのコンテンツなんですから、つぐひこ会長と一緒にオリンピック開閉会式にでも出ればよかったのに、ねぇ!
しかしアメリカ版は『襲われる』直接的な怖さを追求した結果、全然怖くありませんでした。呪われたニンゲンが突然飛び降り自殺するようなワケの分からない怖さこそがキモなのですよ。
今や本来の怖さを通り越してギャグになってしまった感のある貞子さんですが、死してなお、ますますのご発展をお祈り致します(笑)。