goo blog サービス終了のお知らせ 

長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

完全なる門外漢からみた大奥妖怪奇譚 ~映画『モノノ怪 火鼠』 承前の段~

2025年04月05日 22時37分34秒 | ゲゲゲの鬼太郎その愛
 ハイど~もみなさまこんばんは! そうだいでございまする。

 いや~、気がついたらもう年度が改まっちゃいましたよ。つい昨日正月が終わったかと思ってたら、あっという間に4月になってしまいました!
 ほんと、山形の春というものはカレンダー通りには来てくれないものでして、先週までずっと朝夜寒いまんまだったし、雪すら降ってましたしね。桜なんかまだまだ花が咲く気配すらない状態なのですが、花粉と黄砂はズビズバ飛びまくってるんですよ。そんな感じなので体感ではやっとそろそろ3月かな~みたいな印象だったのですが、もう1ヶ月くらい感覚がズレちゃってたんですねぇ。

 そんなもんで、ここ最近は年度末の忙しさやらなんやらで例年通りにバタバタしておりまして、このブログの更新も映画鑑賞とかもそっちのけで、汗まみれで走り回ったり働くまくったりこもりまくったりしておりました。あと、雪かき道具の片付けとかもやってた。

 それで4月に入ってやっと一息つくことができたので、久しぶりに映画を観ようと思ったんですよ。でも、なかなか食指の動くものが見当たらなくって。
 ……と思ってましたら、あ待てよ、そういえば先月に職場の同僚から、「大好きな映画の最新作が公開されるから絶対に観てください!」とか熱烈に薦められてたタイトルがあったんでしたっけ。
 でも、あれから半月くらい経ってるしなぁ、まだやってるかなぁと思いながら地元の映画館を調べてみましたら、まだちゃんと上映していましたので、そうとうに遅ればせながら観に行くこととあいなりました。ギリギリセーフ!
 観に行ったら、入口のとこで「上映4週目限定来場者特典」というふれこみでフィルム風しおりをいただきました。ありがとうございまーす……でも、本のしおりって滅多に傷まないから、もらっても増える一方なんですよね。ま、『機動戦士ガンダム ジークアクス』でもらったよくわかんないカードよりはましですが。あのカードも今、本のしおりに使ってるし!


映画『モノノ怪 火鼠』(2025年3月14日公開 74分 ツインエンジン)
 劇場版『モノノ怪』3部作の第2作にあたる。
 劇場版は3作とも江戸城大奥を物語の舞台とし、薬売りが「モノノ怪」を斬るという形になっているが、それぞれが独立した作品として制作される。監督の中村健治は、TVアニメシリーズ版を見ていない人でも楽しめるようにしたほか、全3作のうちどれから見てもいいようにしたという。また中村は、「3部作全体で大きなひとつの『情念』を薬売りが斬る物語にもなっています。」としている。

あらすじ
 前作の『唐傘』事件の約一ヶ月後。
 大奥の新しい御年寄役に指名された御中臈ぼたんの方と、御上の寵愛を一身に受ける御中臈ふきの方との対立構造が浮き彫りとなり、大奥はにわかにざわめきだす。幕府の老中筆頭でぼたんの方の父でもある大友は余計な火種が生まれることを嫌い、御台所の後見役に部下の老中・勝沼の娘である御中臈まつの方を推挙し、第三勢力を立てることによる事態の収拾を図る。しかし、ぼたんの方は御年寄に就任するやいなや大奥の夜伽に関する規律の見直しを断行し、それによって不利益をこうむるふきの方は猛反発、両者の溝はさらに深刻化することとなる。
 そんな折、ふきの方の懐妊が突如として発覚し、生まれる御子が男子の場合は御世継ぎの有力候補となり、女児しか生まれていない御台所との跡目争いは必至になるのではないかという憶測が水面下で広がっていく。この事態の下で様々な裏工作が飛び交い、陰謀が加速してゆく大奥。
 時を同じくして、大奥では恐るべき連続人体発火怪死事件が発生する。怨嗟の炎でその身を焦がすモノノ怪の名は、「火鼠」。
 異変を察知して大奥に再び駆けつけた薬売りだったが、無数の群体で、かつ高速で動き回る神出鬼没の火鼠に手を焼くこととなる。
 火鼠が生まれた理由、大奥に巣食う負の歴史……果たして薬売りは、それらを斬り鎮めることができるのであろうか。

おもなキャスティング
薬売り         …… 神谷 浩史(50歳)
御中臈ふきの方     …… 日笠 陽子(39歳)
大奥御年寄ぼたんの方  …… 戸松 遥(35歳)
大奥警護広敷番・坂下  …… 細見 大輔(51歳)
大奥御中臈まつの方   …… 青木 瑠璃子(35歳)
大奥部屋付女中おつゆ  …… 松井 恵理子(36歳)
幕府老中筆頭・大友   …… 堀内 賢雄(67歳)
幕府老中・藤巻     …… 堀川 りょう(67歳)
時田 良路       …… チョー(67歳)
時田 三郎丸      …… 梶 裕貴(39歳)
幕府老中・勝沼     …… 楠見 尚己(70歳)
大奥奥女中おくめ    …… 花井 美春(27歳)
大奥奥女中おとめ    …… 相良 茉優(29歳)
大奥警護広敷番・浅沼  …… 宮崎 雅也(26歳)
大奥奥医師・野間 玄琢 …… 佐藤 せつじ(50歳)
大奥御伽坊主・長寿   …… 斉藤 貴美子(48歳)
大奥奥女中おさよ    …… ゆかな(50歳)
水光院         …… 榊原 良子(68歳)

おもなスタッフ
総監督   …… 中村 健治(54歳)
監督    …… 鈴木 清崇(45歳)
脚本    …… 新 八角(31歳)
時代考証  …… 吉成 香澄(50歳)
総作画監督 …… 高橋 裕一(?歳)
3D監督   …… 白井 賢一(?歳)
音響監督  …… 長崎 行男(70歳)
音楽    …… 岩崎 琢(57歳)
制作・配給 …… ツインエンジン
主題歌『花無双』(歌 アイナ・ジ・エンド)


 というわけでありまして、観てきましたよ~。独自の世界観と映像美で熱烈なファン層を獲得している、うわさの『モノノ怪』シリーズ、劇場版最新作!

 ……とは言いますものの、先ほども申しました通り、私は今回、知り合いの方に薦められたのでやっと観に来たという次第でして、したがって昨年に公開された劇場版第1作の『唐傘』も、当然ながら観ておりません。

 そう聞きますと、「オイオイお前、そんな『ぬらりひょんサーガ』だの『ニャニャニャの猫娘ヒストリー』だのという妖怪企画をやっときながら、妖怪をど真ん中で扱ってるこのシリーズを全然チェックしてないにわかなのか!? だっせーな!!」と憤慨される向きも出てこられるかもしれません。
 そうなんです、わたくし、確かに妖怪だのオカルトだのというあやしげな話題には滅法目がない人間ではあるつもりなのですが、ことこの『モノノ怪』シリーズに関しましては及び腰になっていたといいますか、むしろ良い印象を持っていない方と申して良いスタンスで門外漢を気取ってしまっていたのです。

 おっと、お待ちくだせェ! これには、深そうでそんなに深くもない経緯というものがあるんでさぁ!!

 そもそものきっかけは、あっしが紅顔の劇団員フリーター20代として、江戸にほど近ェ千葉で一人暮らしを決め込んでいた平成の御世、2006年にさかのぼるんでやんす……


『モノノ怪』シリーズのルーツ 『怪』の「化猫」編とは
 『怪 ayakashi』「化猫」編とは、フジテレビの深夜アニメ番組枠「ノイタミナ」(当時は毎週木曜深夜0:35~1:05放送)内で2006年1~3月に放送された TVホラーアニメシリーズ『怪 ayakashi』内のエピソード。
 『怪』は、3つのエピソードから構成される全11話のオムニバス形式作品であったが、各エピソードは四世鶴屋南北の歌舞伎『東海道四谷怪談』(1825年初演)を原作とする「四谷怪談」編、泉鏡花の戯曲『天守物語』(1917年発表)を原作とする「天守物語」編、そして日本の化け猫伝承を元にしたオリジナルストーリー「化猫」編と、エピソード間のつながりの全く無いもので、制作スタッフも別々だった。

「四谷怪談」編 …… 2006年1~2月放送、全4話
 シリーズディレクター・今沢哲男、脚本・小中千昭、総作画監督・伊藤秀樹、キャラクター原案・天野喜孝
「天守物語」編 …… 2月放送、全4話
 シリーズディレクター・永山耕三、脚本・坂元裕二、総作画監督・名倉靖博
「化猫」編 …… 3月放送、全3話
 シリーズディレクター・中村健治、脚本・横手美智子、総作画監督・橋本敬史
※全話の音楽担当は高梨康治、オープニングテーマ『 HEAT ISLAND』(歌・RHYMESTER)、エンディングテーマ『春のかたみ』(歌・元ちとせ)。

 そもそも『怪』は、それまで『ハチミツとクローバー』(2005~06年放送 2シーズン)や『 Paradise Kiss』(2005年10~12月放送)など少女マンガ原作のアニメ作品を放送していた「ノイタミナ」枠の路線とは打って変わり、日本の著名な怪談を元に、俊英のクリエイター達が独自に解釈あるいは新規にストーリーを書き起こして現代的な視点・様式を加味し、原作既読者も新鮮な感覚で視聴できる前衛風味の強い異色作となった。特に「化猫」編に関しては演出手法も大きく異なっており、3DCGの多用、浮世絵風色彩、和紙風のテクスチャが多用されていた。
 放送当初、「四谷怪談」編と「天守物語」編では視聴率が2% 台であったのに対し、「化猫」編は初回となる第9話から4.5% にまで上昇し、最高5.0% を記録した。これは当時の「ノイタミナ」枠における最高視聴率記録であり、過去3年間内の全放送局の深夜アニメ作品中でも最も高い数字となった。

『怪』版「化猫」編のあらすじ
 名門の武家だが借金で没落寸前の坂井家では、当主の娘・真央が他家へ嫁ぐ日を迎えていた。その慌ただしい日に薬売りを名乗る謎の若い男が現れる。間もなくして駕籠に乗ろうとした真央が怪死する事件が起き、家中は半狂乱となる。邸内にいた部外者である薬売りが疑われるものの、薬売りは「モノノ怪」の仕業であるという。薬売りと坂井家の主要人物らが大部屋に集まる中、屋敷を出て医者を呼びに行ったはずの中間の惨殺死体が発見され、さらには大部屋にいる者を除いた邸内の家人全員が、猫らしき謎の怪異に殺されてしまう。ここに至って半信半疑ながらも薬売りを信じるようになった坂井家の者たちは彼の話を聞き始めるが、彼曰く、モノノ怪を倒すにはその「形(かたち)」と「真(まこと)」と「理(ことわり)」を明らかにする必要があるとし、原因の心当たりについて尋ね始める。


TVアニメシリーズ『モノノ怪』とは
 『モノノ怪(もののけ)』は、フジテレビの深夜アニメ番組枠「ノイタミナ」(当時は毎週木曜深夜0:45~1:15放送)内で2007年7~9月に放送された TVホラーアニメシリーズ。5つのエピソードからなる連作オムニバス形式となっている。全12話。
 本作は、同じく「ノイタミナ」枠で前年2006年に放送された『怪』のエピソード「化猫」編の続編にあたり、制作スタッフ陣もほぼ同じである。シリーズディレクター・中村健治(初単独監督作品)、総作画監督・橋本敬史、音響監督・長崎行男、音楽・高梨康治、アニメーション制作・東映アニメーション。オープニングテーマは『下弦の月』(歌・小松亮太×チャーリー・コーセイ)、エンディングテーマは『ナツノハナ』(歌・JUJU)。

 『モノノ怪』は、前作にあたる『怪』の「化猫」編に続いて謎の薬売り(声・桜井孝宏)を主人公とし、江戸時代の日本(ただし「化猫」編のみ近代)を舞台に、「座敷童子」、「海坊主」、「のっぺらぼう」、「鵺(ぬえ)」、「化猫」という5つの怪異エピソードがオムニバス形式で描かれる。
 本作は、和紙の質感を CGテクスチャとして取り入れているほか、和風をベースにした独特な世界観を支える美術やデザインにおいても評価が高い。「座敷童子」編では浮世絵や目黒雅叙園、「海坊主」編ではグスタフ=クリムトの絵画的世界、「のっぺらぼう」編では能や屏風絵や表現主義をイメージしたタッチ、「鵺」編ではモノクロ風に抑えた水墨画的色彩、「化猫」編では時代に合わせた小林かいちや竹久夢二の大正モダンやパブロ=ピカソの『ゲルニカ』的絵画世界などを使用しているほか、様々な解釈が可能な暗喩や隠喩を含ませたアイコンを散りばめている。

 のちに、舞台演劇版の『モノノ怪 化猫』(2023年2月4~15日・東京・飛行船シアター 主演・新木宏典、脚本・月森葵、演出・ヨリコジュン)と、『モノノ怪 座敷童子』(2024年3月21~24日、4月4~7日・東京・IMMシアター、同年3月29~31日・クールジャパンパーク大阪 WWホール 主演・新木宏典、脚本・高橋郁子、演出・ヨリコジュン)が上演された。

主要登場人物、用語
薬売りの男 ……  桜井孝宏(2024年以降の映画版は神谷浩史)
 『モノノ怪』シリーズの主人公。本名不明。
 透けるような白肌に淡い金色の長髪と青い眼、長く尖った耳を持ち、歌舞伎の隈取のような化粧をした、整った顔立ちの青年。蛾をモチーフにした柄の着物を着ている。モノノ怪を倒すために諸国を巡っているが、表向きは薬の行商を行っている。モノノ怪の発見と退治のために様々な術を扱い、時代が変わってもほぼ同じ外見のままであり、その素性や正体、モノノ怪を倒す目的など作中では語られない謎が多いが、本人はあくまで自分は人間であると語る。
 あやかしやモノノ怪に関する知識が豊富で、モノノ怪を倒すことができる唯一の武器「退魔の剣」を携えている。しかし、退魔の剣を鞘から抜くためには、モノノ怪の「形(かたち)」と「真(まこと)」と「理(ことわり)」を明らかにする必要がある。これ以外にも結界の要や障壁になる御札や、モノノ怪との霊的な距離を測る天秤(投扇興の的の蝶のような形をしている)等、不可思議な道具を持ち歩いている。
 形と真と理が判明して退魔の剣が抜けるようになると、褐色の肌に灰白色の長髪(映画版では赤い髪)、白目の部分が黒色で紅の瞳、全身に金の紋様(映画版では赤)を持つ姿に変わる。

モノノ怪とアヤカシ
 アヤカシとは、この世の道理とは別の世界に存在するモノの総称で、その行動原理などを人が理解することは困難だとされる。また、その成り立ちは千差万別であり、人の霊から成るモノや付喪神のように器物が古くなって魂が宿ったモノなどがある。その一方で、モノノ怪については「モノ」は荒ぶる神のこと、「怪(ケ)」は病のことを指すと説明される。すなはち人を病のように祟るものをモノノ怪と呼び、恨みや憎しみなどの人の激しい情念がアヤカシと結びつくことによってモノノ怪は発生する。そのため、モノノ怪には真(事の有様)と理(心の有様)が存在する。薬売りはアヤカシを「八百万の神と似た存在」と語る一方で、モノノ怪を「人に近過ぎる」と語っている。
 アヤカシであれば、古来の伝承にのっとった封印の呪符などが効力を発揮するが、モノノ怪を退治できるのは退魔の剣のみとなる。逆に、退魔の剣ではアヤカシを倒すことはできない。

「座敷童子」編 …… 2007年7月放送、全2話 脚本・高橋郁子
 雨の降る夜。由緒正しい豪奢な旅籠「万屋」に、身重の若い娘・志乃が一晩泊めて欲しいとやってくる。客室は満室であったが、老女将の久代は訳あって使っていない最上階の部屋に彼女を通す。件の広い部屋で一人になった志乃は、いつのまにか部屋にいた謎の童を見つける。それを発端に様々な怪奇現象が起こり、志乃を殺害するために部屋に侵入した殺し屋の直助は怪死する。そこに、モノノ怪を斬るためにやってきたと語る薬売りの男が現れ、アヤカシの正体は座敷童子であると指摘する。

「海坊主」編 …… 7~8月放送、全3話 脚本・小中千昭
 薬売りの男は、廻船問屋・三國屋多門の江戸行きの廻船に乗っていた。船には薬売りの他に、かつて化猫騒動で出会った娘・加世や、弟子を連れた高僧・源慧、怪しげな修験者・柳幻殃斉、不気味な浪人・佐々木兵衛が乗り合わせていた。夜半、何者かによって羅針盤が狂わされ、船はアヤカシの海と呼ばれる海域「竜の三角」に迷い込んでしまう。そして船幽霊や海座頭などの怪異に襲われるが、いずれも薬売りが探すモノノ怪ではない。やがて源慧は、ここをアヤカシの海に変えたものは、かつて彼の実妹・お庸が人身御供にされた虚舟(うつろぶね)ではないかと打ち明ける。

「のっぺらぼう」編 …… 8月放送、全2話 脚本・石川学
 とある藩士の家に嫁いだお蝶は、夫やその親族を皆殺しにした罪で、奉行に裁かれ死罪を申し付けられる。その牢屋に、同じく罪人として捕らえられた薬売りが現れる。薬売りは、これはアヤカシの仕業であり、あなたが本当に家族を殺したのかと問うが、そこに奉行を名乗る仮面の男が現れ、薬売りを退ける。仮面の男は、自分はアヤカシだが、お蝶に惚れたため祝言を挙げようという。お蝶は仮面の男との祝言に幸せを感じるが、再度、薬売りが現れ、真と理を見つけてモノノ怪・のっぺらぼうを斬るために彼女の人生を追体験する必要があると語る。

「鵺(ぬえ)」編 …… 8~9月放送、全2話 脚本・小中千昭
 香道・笛小路流の家元の屋敷に薬売りと3人の男たち(公家の大沢廬房、廻船問屋の半井淡澄、東侍の室町具慶)がやって来る。男たちは家元・瑠璃姫の婿候補であり、組香で雌雄を決することになっていた。もう1人の候補・実尊寺惟勢が現れない中、薬売りが代わりに参加し、源氏香で戦うことになる。勝負が終わり結果を待つ中で、隣室から実尊寺の惨殺死体が見つかり、さらに瑠璃姫まで他殺体で見つかる。場は恐慌状態に陥るが、男たちは姫を殺した下手人よりも、笛小路流が護持しているという、所持した者は天下を取ると言われる伝説の香木「欄奈待(らんなたい)」の行方に執着していた。男たちは本当の狙いであった欄奈待を手に入れるべく、今度は薬売りが香元となって竹取の香で戦うこととなるが、そこにモノノ怪・鵺(ぬえ)の鳴き声が響く。

「化猫」編 …… 9月放送、全3話 脚本・高橋郁子&横手美智子
 大正時代末期から昭和時代初期とおぼしき都会。地下鉄の開通を祝う式典が盛大に行われ、建設に尽力した市長らを乗せて電車の初乗りが行われる。ところがそこに謎の怪異が出来し、市長や刑事、運転手、記者、未亡人、少女、少年が先頭車両に閉じ込められる。市長が変死を遂げる中、モノノ怪を斬りに来たという薬売りが現れ、バラバラに見える乗客たちの共通点を探っていく。やがて、客たちは数ヶ月前に起こった女性記者・市川節子の飛び降り自殺に何らかの形で関わっていたことが判明する。市川の怨念と猫の魂が混ざったモノノ怪・化猫を斬るため、薬売りは彼女の死の真相を調べる。


映画『モノノ怪 唐傘』(2024年7月公開 89分 ツインエンジン)
 劇場版『モノノ怪』3部作の第1作にあたる。
 本作は当初2023年に公開される予定だったが、2023年3月に TVアニメシリーズ版で薬売り役を務めていた桜井孝宏の不倫騒動に起因する降板および公開時期の延期が発表され、映画版での薬売り役に神谷浩史が起用された。
 監督・中村健治、脚本・山本幸治&中村健治、音楽・岩崎琢、主題歌は『 Love Sick』(歌 アイナ・ジ・エンド)。
 第28回ファンタジア国際映画祭において、最優秀長編アニメーション賞にあたる「今敏賞」を受賞した。

『唐傘』のあらすじ
 新人女中のアサは、御右筆のお役目に憧れて江戸城大奥へ入室し、同期のカメと仲良くなる。大奥では、過去を断つために自身の大切な物を井戸に捨てるしたきり「出離の儀(しゅつりのぎ)」があったが、アサは「捨てるものはない」と答え、カメは大事な櫛を捨てた。アサは大奥での業務を優秀にこなすが、カメは仕事が不得意で先輩女中に叱られてばかりで、アサはカメの世話を担いつつも、カメとの日々を楽しく感じるのだった。しかしやがて大奥で事件が発生し、そこに現れた怪しげな薬売りは「これは、唐傘だ。」と言い放つのだった。


 ……いやぁ、どうでやんすか、この複雑怪奇なる『モノノ怪』シリーズの履歴。

 上の通り、『モノノ怪』シリーズはかなりの中断をはさんでいる、ていうか2007年の TVシリーズから24年の劇場版第1作までず~っと沈黙したままだったわけなのですが、「前身番組で人気となったお話が翌年シリーズ化して、それから15年以上たってから劇場版三部作として復活した」という、よそではなかなか聞かない異様な道程をたどったアニメシリーズになっているのです。ヘンなの!

 そして、私がこの、妙にコケティッシュな怪キャラクター・薬売りの活躍する『モノノ怪』シリーズに2000年代当初あんまりよくない印象を抱いていたのは、シリーズの出発点たる2006年放送の『怪 ayakashi』(以下『あやかし』)に理由があるのです。

 2006年当時、私はこの、若者向けの深夜アニメ枠「ノイタミナ」での放送でありながらも、鶴屋南北の『東海道四谷怪談』や泉鏡花の『天守物語』を何週にもわたってアニメ化していた『あやかし』の姿勢にものすごい好感を持っていました。
 2000年代と言えば、妖怪ジャンルに関しては京極夏彦のミステリ小説「百鬼夜行シリーズ」や時代小説『巷説百物語』シリーズがブイブイ言わせていた時期でして、『あやかし』放送の前年2005年8月には実写映画『妖怪大戦争』(監督・三池崇史)も公開されヒットしていました。あの魔人・加藤保憲は私は断じて認めん!! でも、アギと川姫は良いと思います♡

 そんな感じなので、当時はそれらに追随する、妖怪や日本のオカルト文化を物語の要素に組み込んだアニメやマンガ、小説も、それこそ百鬼夜行のごとくごまんと氾濫している状況だったのですが、そんな中で『あやかし』は、安易に派生作品の乱造にはしらずに、あえてジャンルの淵源に位置する古典作品の再解釈を選んだのでした。それが、「四谷怪談」編と「天守物語」編だったわけなのです。

 まぁ、正直、どっちもそんなに印象には残らない出来だったんですけどね……ていうか、当時毎週欠かさずチェックしてはずなのに、内容をじぇんじぇん覚えてねぇ!! これが「寄る年波」というものなのか。
 え~、四谷怪談に天守物語? どんなアニメアレンジがされてたのか、きれいさっぱり記憶がない。でも、エンディングの元ちとせさんの歌だけはがっつり覚えてるんだよなぁ。あれはほんとにいい曲ですよ。
 う~ん、四谷怪談にいたっては、どう頭をひねくっても、アニメじゃなくて実写版の TVドラマシリーズ『怪談百物語』(2002年8~12放送 フジテレビ)で、あの菅野美穂サマがお岩さんを演じていたバージョンしか思い出せないよう! りょうさんの『怪談かぐや姫』も最高でした。

 まま、出来はそんな感じだったのですが、それでも私としては、そんな『あやかし』の古典重視の姿勢を非常に応援していたわけだったのです。
 そういうとこにきて、放送の途中からあんな感じの「薬売りの化け猫退治」になっちゃったでしょう? 当時、私はホントにビックラこいちゃったんですよ!
 いや、個性があるのはいい! 日本の伝統文化っぽい背景美術に、あえて和紙でできた紙芝居みたいなしわ感のある画面づくり。実にチャレンジングな方向転換に挑んできたのはすごいなと思ったんですが、テーマが「化け猫」て! しかも、「鍋島化け猫騒動」とか「有馬化け猫御殿」とかの原作もないオリジナルな物語になってるじゃありませんか。

 この『あやかし』の舵の切り方を、私は明白な「視聴率アップを優先した裏切り」と解釈してしまったのです。だから、その象徴である「薬売り」の活躍する以降の『モノノ怪』シリーズを、私は避けてしまっていたのでした。

 むろん、『あやかし』はたった1クールのシリーズだったわけですから、放送が開始されて視聴率の反応を見てから後半の「化け猫」編をオリジナルものにするなどという時間的余裕はおそらくなく、制作当初から最後のエピソードを中村健治さん主導のあの作風にすることは規定事実だったはずなので、「方向転換」だの「裏切り」だのという想像は邪推以外の何者でもないはずなのですが、ともかく、古典原作ありきの2篇から、いきなりエッジのゴリゴリにきいた「薬売り」ものに切り替わった温度差は、それこそ別のアニメ作品が始まったかのような衝撃のあるものだったのでした。
 まぁ、結果としては「化け猫」編は大好評を博して、翌年には「薬売り」ものが独立した TVシリーズになるほどの人気になったので、むしろそっちのほうが有名になったのではありますが、やっぱり放送当時、私のように当惑する視聴者も多かったのではないでしょうか。

 そういった経緯で、私の「薬売り」ものに対する、やっかみめいた悪感情(人気者になりやがって……)は生まれてしまったわけだったのですが、もう一つ、「よくわかんない行商人っぽい人が妖怪事件を解決する時代劇」という物語の形式に関しても、それそのまんま京極夏彦の『巷説百物語』シリーズやんけ!という印象が強かったことも、2007年の『モノノ怪』放送を好ましくなく思う理由に加わっていましたね。ちなみに、『巷説百物語』のほうのメディア化もたびたびされていて、実写ドラマのほか、『あやかし』をさかのぼること3年前の2003年にすでにアニメシリーズ版の『巷説百物語』も制作されてはいたのですが、こちらはどうやら関東地方では地上波放送されることはなかったようで(西日本の地方テレビ局3局などの共同制作・放送だった)、私も当時、視聴した記憶が一切ありません。主演の御行の又市役は、なんとあの中尾隆聖は~ひふ~へほ~!!

 そんなこんなだったので、2007年の TVシリーズ版も、「チャンネルを 合わせはするけど ながら見で」みたいな気の抜けようであしらっていたのでした。そして、あの作風なので、ながら見なんてしてたら秒でストーリー展開が迷子になるという、ね。

 あっ!! でもでも、私が心酔してやまない「永久名誉ぬらりひょん声優」こと青野武老師が出演されていた「鵺(ぬえ)」編だけは、ちゃんと正座して観てましたよ!? でも、あれはあれで、確かモノノ怪として出てきた「ぬえ(妖怪のぬえは「鵺」でなく「鵼」の字を当てるのが正しい!正しいの!!)」の正体が人間発祥だったという解釈が好きになれなくて、不平たらたらでした。めんどくさい妖怪好きはこれだから……私、妖怪ぬえで卒論書いた重症者なので、どうかお目こぼしを。


 ままま、そんな感じで『モノノ怪』シリーズについては、何とも言えぬ「意識はしてるけど近づかない」みたいな微妙なスタンスを取っていたわたくしだったわけでありまして、昨年に突如として降って湧いたかのように「劇場版三部作公開決定!!」として第1作『唐傘』が公開されても、

え~……なんで今さら? それで、出てくるメイン妖怪は……からかさおばけ!? 本気か!?

 という温度の低さで、まぁ、好きな方が観に行けば……という感じでスルーしてしまっていたのでした。
 いやいや、15年以上ぶりの復活&初の映画化のメイン妖怪に唐傘とは! これまた、そうとうに挑戦的なセレクトだと思います。確かに傘化けは日本の妖怪の中でもベスト10に入る超有名な大スターではあるのですが、単独でメインを張れるのかというと、ねぇ!! あ、でも傘化けって、『ゲゲゲの鬼太郎』でも実は、鬼太郎を正面対決でダウンに追い込むわ、霊毛ちゃんちゃんこを強奪するわ、砂かけ婆の妖怪アパートを焼き討ちするわの極悪非道な強豪妖怪なんですよね。中村監督、わかってますね!!


 そんなこんなで、今回は『モノノ怪』シリーズの概要についてと、めんどくさい妖怪好きの問はず語りのグチグチタイムで字数がかさんでしまいましたので、肝心カナメの『火鼠』を観た感想につきましては、また次回に改めてさせていただきたいと思います。
 あの、とにかくこんなていたらくなので、ほんとに純粋に『火鼠』単体だけの感想になります。ですので、『モノノ怪』シリーズ全体の熱烈な大ファンという方はお読みにならないでください! TV シリーズ版もほとんど覚えてないし、映画の前作『唐傘』の内容も全然知らないモノホンの一見さん、門外漢ですので、あしからず!

 いや~、でも、今回観ることができて本当に良かったです。薦めてくださった同僚さん、どうもありがとうございました! お互い、新年度も頑張っていきまっしょ~!!

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« あらためて立ち返ろう読書メ... | トップ | あらためて立ち返ろう読書メ... »

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

ゲゲゲの鬼太郎その愛」カテゴリの最新記事