先月は、「今年は登録申請があるの?無かったら寂しいので登録しなよ。」、
なんて言われてましたが、蓋を開けると2つ申請があり、久しぶりに3品種と賑やかな新登録となりました。

私は今まで十数品種登録してますが、登録したくて登録した品種、
声を掛けていただき、仲間に加えていただいた品種。
中には「どうして私が?」と登録料の割り勘要員のような感じの品種もありました。

そんな中でも、一昨年の黄玉殿は登録することが自分の義務であるように感じて登録した品種でした。

そしてもう一つ、登録することが私に課せられた責務だと感じている品種があります。


長生殿の白覆輪、白翁です。

私が富貴蘭をはじめてから今までに、
錦麒麟や花観月の出現を間近で見る好機に恵まれましたが、
この品種の登場はそれらをはるかに超える衝撃でした。

無地や虎の品種に縞が現れる変化とは次元の違う変化で、
国光殿から大八洲が出現して以来の変化だと思います。





愛知県の紫苑さんの棚で変化し、長生殿に付いた状態で次の棚に移りました。
その後順調に殖えて株分けされたのを聞いて、
何としても分けていただこうと飛んで行ったことでした。

数十年あるいは百年に一度かもしれないこの奇跡的な品種が、
一ヶ所にしかない状態から一刻も早く脱却させなければと、
富貴蘭界からの使命を帯びた気持ちで向かったことでした。
しかしまだ出したくないと言うことで、なかなか良い返事がいたたけないまま、
飯でも食いに行こうと、小料理屋に場所を移して交渉継続。
私は払える金額ならいくらでも買うつもりで、
貯金を全額引き出して行ってましたから、
値段で断って(買えないであろう高値を提示して)くれてもいいから
とにかく値段を言ってくださいと迫り、やっと提示してもらいました。

「ありがとうございます、いただきます。」と即答したところ、
暫し考えられて、
「ごめんなさい、撤回させて、やっぱ売りたくないわ。」とおっしゃられたところに
女将がすかさず、
「ちょっと何言ってるの、せっかく遠くから若い人が来てるというのに、男に二言は無しよ、売ってあげなさい!」と
援護射撃をしてくださり、持ち帰ることが出来ました。

その帰り道、この品種に関わった者の義務として、
責任を持って登録まで持ってくことを誓ったことでした。
さてこの品種、平成19年の安城大会では、まだ長生殿に付いている状態で展示されており、
多くの方がその変化の目撃者となっていることも、稀有な存在です。

22年の横浜大会では独立した4本立ちで特別賞を受賞しているし、
申請すればすんなり登録なんだから早くしたら、
とあちこちから言われてますし、来年は申請してみようと思ってます。
卑弥呼や錦織、花観月などの登録、高千穂の縞の整理や瑞晶の復活、
羆と建国の整理やら、本の解説もいっぱいしたし、
この品種の登録が終われば、私の富貴蘭界での仕事も一段落と思っております。

