ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

"KILLER-SUB versus SUB KILLER"〜映画「眼下の敵」中編

2020-02-26 | 映画

映画「眼下の敵」中編です。

本作収録DVDには、映画のオリジナル予告編が収録されていて、
その字幕には

「KILLER-SUB versus SUB KILLER」

「ABOVE OR BELOW THE SEA!」

とあり、誰が上手いこと言えと、というかんじです。

大西洋上で対峙した米駆逐艦「ヘインズ」とUボート。
まだ見ぬ敵との交戦を前に、両者は極度に緊張してそのときに備えます。

 

Uボートが潜航した後、艦長は航行速度を落とすように命じました。
ジグザグ航行もしないという命令に、乗員たちは不満顔です。

「これじゃい相手のいい標的だ

まだ艦長は乗員の信頼を得られておりません。
民間出身ということで、乗員の見方にもバイアスがかかってしまっています。

このマレル艦長の作戦は、海中のUボートに、駆逐艦が去ったと思わせるためでした。

しかし、実際の海戦だとすれば、この件は操舵手らの方が「正しい」のです。
ここが実は脚本の穴というべき部分で、もし、マレル艦長が下命したように

スピードを落としプロペラ速度を下げても、実際に遠ざからない限り、
音が聴こえなくなることにはなりません。

つまり、どんな初心者のソナー員でも、これをもって

「遠ざかっていった」

と騙されることはないので、作戦として成り立たないはずなのです。

しかしこれは映画なので、Uボートはまんまと騙されそうになります。
諦めて駆逐艦が去っていった可能性もなきにしもあらず、しかし
慎重なUボート艦長はそれを確かめるために
じわじわと浮上していきました。

艦長自ら潜望鏡をのぞいて相手の艦影を確認すると、
ほーら、やっぱり駆逐艦まだそこにいるし。

「煙突1、艦首と艦尾に3インチ砲、中央部に対空砲、(魚雷発射)チューブなし

さっそくその目視をもとに艦種を「バックリー級」だと判定します。

しかし実際には「バックリー級」には煙突のすぐ後ろに
トリプルマウントのチューブ(魚雷発射管)が装備されていました。

Uボートは再び潜航し、戦闘を開始することにしました。

こちら駆逐艦上。

艦長はUボートが魚雷を撃ってくるのは潜航10分後だろうと予測します。
そして予想通り、きっかり10分後にUボートが撃った二本の魚雷が向かってきました。

(ただし映画に登場するUボート”タイプVII” には艦尾の発射管は一つしかありません)

艦長はすぐさま取舵いっぱいを命じ、見事魚雷をかわします。

通り過ぎていく魚雷を見送ったあと、右側の男前副長は、
さりげなくヨットマンだった過去を自慢。

「マイアミヨットレースではこんなことは起こらなかったな」

ともあれ、艦長の操艦指示で駆逐艦は魚雷をかわし、
これで艦長の来歴に否定的だった乗員も認めることになりました。

さっきまで文句を言っていた操舵手も手のひら高速返しで褒め称えます。

そして、方や近距離の魚雷を外されたUボートでも、

「相手は素人じゃないな」

ここから、駆逐艦からはソナーを下ろし、潜水艦の中からは
見えない上方を見上げての、おなじみの光景が展開します。

爆雷の深度がセットされ、伝令が行き渡る中、艦尾のローラーローダーでも
投下の準備を始めていました。
爆雷中央にあるストッパーを外していくのです。

いったん深度を掴ませておいて、ギリギリになって
その場から脱出し、空振りをさせようというのがこちらの作戦です。

しかしマレル艦長は相手の動きを読み、即座に爆雷の深度を変えさせました。

リセットされたKチャージ発射管から爆雷が投下されました。
「スレーター」のときに書いたように、爆雷と一緒に
アーバーと呼ばれる支えも一緒に飛ばされていきます。

派手にあがる水しぶきは、撮影の際本当に爆雷を使用したとか。
国防総省と海軍の協力を受けています。

初めての実戦に浮き足立ったらしい後部爆雷配置の水兵、
なんとリリースレバーを解除するのにラックに手を置いたまま・・・・。

しかしその作業をするとき、普通手は上のバーに置かないかしら。

あぶな〜〜〜い!!

このシーン、本当にわざとらしく置いた手の横を爆雷が転がり、
あまりにもリアルで思わず息を飲みます。

そして、

痛い痛い痛い痛い痛い

 

画面では本当に手が挟まれたようになっているので、
意地悪なわたしとしては写真をよくよく確かめたところ、

「掌の部分、ラックに直線の不審な影が見える」

「ブルーダンガリーの袖の折り返しが役者のと全く違う」

「手を置く角度がほんのり不自然」

「その前のシーンでは全くなかった影ができている」

このことから、撮影に際して

「手の模型をラックに固定してその上から本当ににローラーを動かした」

のであろうと想像されます。
手の下に見える不審な影は、模型を固定するためのツールではないでしょうか。

この間も海面では「ホワイトハースト」から発射された爆雷が景気良く
海面に巨大な水しぶきを上げていきます。

これに対しUボートは煙幕を貼って逃げ延びようとします。
なんと大胆にも駆逐艦の真下を逆行し死角に紛れるという作戦。
この辺で駆逐艦にも「やるな」という空気が流れ始めます。

戦闘はしばらくお預けとなり、艦長は負傷した乗員を見舞います。

軍医「指を切断(Amputated)しました」

起き上がろうとする乗員に

寝ていろ、セイラー、君はたった今任務を解除された」

「わたしは重傷ですか」

「君は指を失った。私の責任だ。
ラックをあんなに急いで動かすべきではなかった」

「いえ、私がレールに手をおいてしまったから・・・。
多分興奮してたんでしょう」

「トリニダードに戻り次第飛行機で帰国だ。
そうしたらすぐに元の仕事に戻れるさ」

「時計職人だったんです」

「・・・・・・・・・・・・」

 

駆逐艦とUボート、両者の対決は小休止となりました。
駆逐艦上では、情報部から送られてきたデコーダーを解読しています。

こちらも食事などしながらホッと一息。
相変わらず空気読まないクンツ少尉が

「見事な指揮でした。総統もお慶びになるでしょう」

などといって艦長をイラッとさせております。

間をおかず「ヘインズ」は攻撃を仕掛けてきました。
Kガン、つまりディプスチャージ投下です。

 

どうですこの実弾の上げる派手な水しぶき。

不利と見たUボートは深海での鎮座を決定します。
パイプの継ぎ目から水が噴き出し艦体が軋みますが、
なんとか無事に着底し、

「ドイツの潜水艦って超イケてるよな!」

と自画自賛。
そういえばUボートを乗っ取るという設定の
「U-571」でも、こんな台詞がありましたなあ。

潜水艦が存在を消したので、駆逐艦の方もエンジンを停止、
ここで本格的に両者は睨み合いに入りました。

皆思い思いに(ただし静かに)艦内で過ごしています。
声を出さなくて済む簡易オセロをしたり、本を読んだり。
甲板に出ているものも声を極力出さず、釣りをしています。

つまづいて「いてっ!」と言いかけた乗員には皆で

「シーーーーーッ!」

この、いかにもインテリそうな水兵さんが

「ローマ帝国の興亡」

を読んでいるかと思えば、

機関長は「孤児アニー」(アニーの原作)の漫画を読んでいます。
この人はかつて実際にこの「ヘインズ」を演じている「ホワイトハースト」
の艦長をしていたことがあり、当映画の技術顧問を務めました。

じつはUボート、駆逐艦の乗員がたらした釣り糸のずーっと先、
つまり真下にいたりします。
こちらの方も駆逐艦の行方を見失い、音無の構え。

ナチ信奉者のクンツ少尉はスローガンの前で「我が闘争」を読んでいます。

そんなクンツ少尉を忌々し気に見遣り、先任士官に目で合図。
先任士官は肩をすくめてみせるというのが無言で行われます。

ヒトラー嫌いなのはわかったけど、一応あんたもドイツ軍人なんだからさ

 

「もう敵は行ったでしょうか」

「変だな。わたしには彼らが待ち受けているとわかる」

Uボートは無音先行を開始しますが、「ヘインズ」のソナーマンは
キャビテーション音を鋭く聴きとり、駆逐艦は攻撃を開始するために
エンジンをかけました。

「悪魔みたいな野郎だな」

お互い相手が只者でないことを察知し始めていました。

駆逐艦では艦長が士官とCPOを集めて会議を始めました。

前半で派手に爆雷を使ってしまい、残りは3分の1しかなくなってしまった。
Uボートと合流する予定の敵艦に万が一遭遇したら、装備の上では劣る
この「ヘインズ」ではおそらく彼らに絶対に勝てない。

そこで、1時間ごとに近づいては爆撃、そして退避、また近づいて爆撃、
と相手を足止めして敵駆逐艦とのランデブーを阻止するという作戦が立てられました。

 

このままではUボートの不利は確定ですが、百戦錬磨の
フォン・シュトルベルグ艦長がここで終わるはずがありません。

どんな反撃に出るのでしょうか。

 

続く。