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世界一太った双子の姉妹、その後〜My 600lbs Life

2019-05-08 | アメリカ

 

軽く流すつもりが我ながらびっくりのシリーズ第3話目、
「マイ600パウンドライフ」、ブランディとカンディの物語最終回です。

まず体重を400パウンド台に落とした妹のカンディがナウザラダン博士の
バイパス手術を受けることになりました。

日本でバイパス手術というとそれは虚血性心疾患に対して行われるものや、
同じ消化器系でも、アメリカとは逆に、疾患のある部分を迂回して
栄養が取れるようなバイパスを作るという手術を意味します。

それではアメリカの減量手術とはどういったものでしょうか。
それは、博士が言っているように、消化器を通過する食べ物を物理的に少なくし、
体重を減らしていくと言うもので、以前も説明したことがありますが、

ルーワイ胃バイパスと呼ばれています。

先生が説明していることをもう少しわかりやすく解説すると、
まず、胃を20~30ccの小袋に分け、その小袋に小腸(small intestine)をつなぎます。

食べ物が流れる小腸の途中に、胆汁と膵液が流れるように
もう一方の小腸の端を吻合します。

栄養の吸収をより多く控えたければ、小腸を長めに吻合、
少しでよければ短めに吻合、とここで調節を行います。

体に入ってくる食べ物の量は同じでも、手術で小袋をつくることによって、
吸収を悪くすることによってエネルギーの取り込みをさらに少なくするのです。

さらにそれに加えて、胃切除(sleeve gastrectomy)を行うようです。
胃をどのように切るのかは、このビデオを見ていただくとわかりやすいです。

Sleeve Gastrectomy Animation

バイパス手術だけでは200キロ超えた人には効き目が薄いようです。

そしてこれが動画の方法で切り取った胃のパート。
いかに彼女の胃が肥大していたかがわかります。

手術が終わり、自宅に帰ったカンディさん、

「ちょっとの間にものすごく体重が減った気がするわ」

いやそれ気のせいだから。

「もう二度とごめんだわ」

術後が辛かったことを言っているのでしょうか。

「辛い手術でしたが彼女は頑張りました」

次に体重の多い姉のブランディが同じ手術を受けることになりました。
カンディが手術を受けてから実に8ヶ月が経過しています。

「目標は胃切除の手術にまでこぎつけることだ」

なんか含みのあるセリフですね。

しかし、どうでもいいけどこの医療スタッフ、全員太り過ぎてね?
あんたらのバイパス手術は必要ないんかい、と聞いてみたい。

減量手術で有名な博士ですが、神様ではありません。
特にバイパス手術中、患者が出血、血栓、肺炎、心臓発作を起こし、
死亡することだってないわけではないのです。

もちろん患者はそうなっても医師を訴えない、という契約書を書かされます。

ブランディのような食べ過ぎを手術でなんとかするというのは、
実際問題大変難しいものだ、と博士は語ります。

いきなり場が騒然となりました。
ドクターやスタッフが走ったりしています。
ブランディの体は手術のストレスで肺塞栓症を起こし、心停止してしまったのです。

顔色を変えて駆け込んで行くスタッフの背中に向かって
ブランディは必死で叫ぶのでした。

「お姉さんに何があったの?!」

「彼女がわたしをおいて行くなんてダメよ。嗚呼神様」(直訳)

なんとか死なずに手術から生還したブランディですが、意識はなく
全身をコードで繋がれている状態に。

そして今だに血圧が下がったままのブランディ。
家族は待合室でただひたすら祈ることしかできません。

「下手すれば脳に障害が出ることもあります」

おいおい。

ブランディの意識がようやく戻りました。

涙に濡れた目を開け、なんとか自分が生きていることを確認。
とりあえず手術も成功したということになります。

回復後測った体重は70キロ当初から減っていました。
これでなんとか200キロくらいになったことになります。

最初の頃の無邪気に減量を喜ぶ様子はありません。

ブランディはその後89キロ減らして177キロに。
カンディは194キロ、約80キロの減量です。
手術が大変だっただけ姉の体重の方が少なくなってしまいました。

辛かった手術のことを思いながらも、若干表情は明るく。

手術は減量の第一ステップにすぎません。
これをいかにあとに続けていくかが目的であり、多くの人たちは
そこで挫折してしまうと言われています。

しかし、彼女たちが双子で何をするのも一緒であったことが、
今回その困難を乗り越えるのに大きな原動力となったのです。

二人は同じ手術を耐え、手術後励まし慰め合い、どうしていけば良いか
前向きに、しかも誰よりも熱心に話し合えるパートナー同士だったからです。

番組の勧めもあったのでしょうが、二人はジムにトレーニングに行くことになりました。

ジムの会員に大々的に紹介されて照れる二人。

こんな体でカーディオなどできるのか?と思いますが、
そこはそれ、皆腫れ物に触るようにやってくれるので大丈夫。

二人にとってここが「大きな前進のための第一歩」なのは、
二人きりの世界から初めて外に出たという意味があります。

二人の不安をよそに、ジムのトレーナーは懇切丁寧に、
彼女たちのための特別プログラムを組んで指導してくれました。

しかも、彼女らに気を遣って営業時間外にトレーニングしてくれているようです。

番組ではジムを紹介して減量を続けるとともに、
精神科医を紹介してメンタルをケアするということまでやってくれます。

二人の肥満の原因を作った彼女らの母も同行。

精神科医は彼女らの互いに対する精神依存の状態から聞いていきました。

互いに依存しすぎるのも問題だというわけでしょうか。

まあしかし、こういうセラピーにゴールはないのです。
ただ現状を聞いてもらうだけでも救いになるということもあります。

二人の肥満の原因を作った母親。(しつこい?)

実は彼女らの父はアルコール&麻薬中毒だったそうです。
子育てどころではなく、双子が泣くと親はシリアルをボウルに
ざらざらっと空けて勝手に食べさせたりしていたとか。

「時が来たら二人はきっといい方に向かって歩いていきますよ」

この精神科医の言葉はのちに実現します。

そして何回めの計量になるでしょうか。
カンディの体重はついに162キロに。

嬉しそう。

ブランディは約100キロの減量に成功しました。

そして診察の最後に、ナウザラダン医師は、彼女らを称えます。

「君は163キロの減量に成功したね」

「今どんな気持ち?」

嬉しいに決まってますよね。
初めて二人で笑っている様子を見た気がします。

この写真を見る限り、道は遠いという気もするのですが、
少なくとも彼女らは自分で歩き出しました。

二人がこの番組に最初に取り上げられたのは2016年のことです。
三年後の現在、その後彼女らがどうなったかというと・・・。

なんと妹のカンディさん、その後アフリカ系の男性と結婚し、
2017年の9月に可愛いベビーを授かりました。
全身が写っているわけではありませんが、随分痩せているのがわかります。

そしてもっと驚くのがお姉さんのブランディ。
2018年秋のスナップです。

この痩せっぷりは、おそらく100キロを切ったんですね。
彼女はカンディの娘のよき叔母さんとして人生を楽しんでいるようです。

そして、痩せてみればキリッとしたなかなかの容姿ではないですか。

どちらかが結婚したということは、互いに対する依存も今は
全くなくなったということになります。

全てがこのようにうまく行く例ではないのかもしれませんが、
彼女らはテレビに出られたことでその運命を変えることに成功しました。

インターネットに流れる彼女らの画像は多く、いかに彼女らが
アメリカ国民に応援されているかがわかります。

皮肉っぽくいうなら、こういうのも「アメリカン・ドリーム」の一種でしょうか。