今日のお話の前にこの写真を見ていただけますか。
予約していた不肖宮嶋茂樹氏の写真集、
「鳩と桜 防衛大学校の日々」
が昨夜手元に届きました。
一般書籍として売られているわけですが、装丁からは
まるで「防衛大学校卒業アルバム」の雰囲気が漂っています。
注文しようとして驚愕したのが9,180円也というそのお値段ですが、
このことを知り合いにいうと、
「写っている防大生の親は必ず買いますから」
なるほど、それで卒業アルバム仕様なのか・・・。
不肖宮嶋氏ご本人によると
「防衛大学にも入学要綱やパンフレットはあるが、
外国からの要人にもうすぺらいパンフを贈呈するのも
ちょっとばつ悪いときもあるかなということで、協力をいただけた」
ということです。
なるほど、防大からも要人用に購入が見込まれるということですね。
しかし、防大生の親でなくとも、不肖宮嶋氏が防大に密着して
レンズを覗き続け、撮影した防大な、いや膨大な数の写真から選ばれた
防大生たちの姿には心を揺さぶられること請け合いです。
例えば昨年の音楽まつりでわたしは儀仗隊を撮影する
不肖宮嶋氏のお姿を見かけてここで紹介しましたが、
写真集には儀仗隊の写真は一枚だけしか掲載されていないのです。
開校記念祭での棒倒しも5カットでうち2カットは応援団。
1年前の練習艦隊帰国行事にも不肖宮嶋氏は、本作出版元である
文藝春秋の腕章をつけて撮影しておられましたが、
練習艦隊下艦の時にはもう任官していて「防大生」ではないためか、
その時に撮られた写真は一枚もありませんでした。
それだけ選りすぐりの写真だけが掲載されているということは、
実際に手に取ってを見れば深く納得できる写真集だといえます。
かつて海軍兵学校の生徒を写した「ああ江田島海軍兵学校」のカメラマン、
直継不二夫氏は、そのあとがきに
「写真を撮られている時生徒たちはレンズになんらの関心も払っていない」
と驚愕したことを残していますが、この「鳩と桜」においても、
訓練中の彼らの様子からは雑念を全く感じさせないひたむきさと
ピンと張りつめた心身の緊張が痛いほどに伝わってきます。
「ああ江田島」との大きな違いは、今時らしく、恒例の
卒業ダンスパーティの写真が結構な数(5カットも)あることでしょうか。
あとは男女一人ずつ使って、結構色々ある防大の各種制服を
「制服図鑑」として紹介していることで、家族関係者だけでなく、
防大ファン(というジャンルがあるのかどうか知りませんが)にも、
お勧めの一冊であると思います。
さらに不肖宮嶋氏ご本人の言葉をブログから転載しておきますと、
「これから防衛大学への入学をめざそうとする受験生の皆さんはぜひ参考に。
現役の防衛大生、OB,OGの皆様は青春時代の思い出に。
そして開校以来65年もたつのに、あまり知られる機会が少なかった
防衛大学の日常をぜひご覧になっていただき、将来の国防を担う
幹部自衛官がどうやって育てられるか目にしていただき、
ご安心あれ。」
写真集装丁箱の裏側の写真で目を引くのは、
一本に続く長い長い線。
全然意味は違いますが、アメリカ陸軍士官学校の象徴的な言葉、
「ロング・グレイ・ライン(長き灰色の線)」を思い出しました。
そういえば不肖宮嶋氏がこの写真集を撮るきっかけというのも
アナポリスの写真集を手にしたことだったといいます。
さて本題です。
呉に来たものの、その日の午後からなんの予定もなくなった、
ということになったとき、あなたはどうしますか?
わたしに思いつくのは、大和ミュージアムか港めぐりくらいのものだったので、
「てつのくじら館」で呉総監ドックをお約束通りお昼に食べ、
さてどちらにしようかとミュージアムまでぶらぶら歩いて行くと、
大和ミュージアムの横で看板を持ったクルーズの客引きに声をかけられました。
「30分後に出航しますよ」
同乗するのが中国人だらけだったら嫌だなあと思いつつ、
「混んでます?」
と聞くと、さっきのツァーの半分もいない、という返事。
トワイライトクルーズで自衛艦旗の降下を見ることも考えましたが、
今にも雨が降りそうだったので、諦めて30分後の便に乗ることにしました。
時間にデスクの前に行くと、客引きさんが解説者も兼ねていることが判明。
わたしがカメラを持っていたせいか、
「後ろの席に座ると船の両側に移動して写真が撮れますよ」
と乗艦時に声をかけてくれました。
デッキの後方には反応してくれた自衛官に振るための旗が立ててありますが、
それとは別に添乗員が配ってくれたのがこの自衛艦旗。
「今なにかと話題の自衛艦旗ですけど」
と言いながら配り、さらには憤懣やるかたないといったご自身の、
この件に関するコメントをズバズバ言っていてヒヤヒヤしました。
元自衛官なら、まあその気持ちはわからんでもありませんが、
何しろ昨今、どんな面倒臭い人が乗ってるかわかりませんからね。
5分前にデスク前に集合し、それから桟橋まで歩いて乗船し、
乗船したと思ったらあっという間に出航していました。
ところで今見えている岸壁は年代物に見えますが、
やはり旧海軍時代に建造された部分なのでしょうか。
さていよいよクルーズの始まりです。
解説は必ず最初にてつのくじらである「あきしお」の説明から。
あきしおの手前には「しんかい」があって大きさの違いが比べられます。
「あきしお」の手前に戦艦の測距儀部分のようなものが見えますが、
公園に戦艦「大和」の甲板部分と同じ大きさが再現されていて、
ちょうどここに艦橋があるという設定なのです。
昔、大和ミュージアムを観に来たところてつのくじら館と共に
休館日だったため、仕方なく息子とこの公園で遊んだので知ってるのですが。
早速JMUのドックに入渠している艦番号158「うみぎり」に遭遇。
これ、何をしているかわかります?
予想なんですけど、主砲の砲身を点検か付け替えしてるんじゃないかな。
全体をカバーで覆ってあるし、今見えているブルーの砲身は
ダミーかあるいは新しいブツのカバーじゃないかと思うんですが。
ところで、BSの「ディア・ボス」ご覧になりました?
芸人さんが突撃体験の一環としてなんと潜訓でダメコンをして、
(させられて?)マジになっていた(怒ってた?)のには驚きましたが、
それはともかく、番組中、彼らが呉港で撮影したシーンのバックに
ことごとく写り込んでいましたよね。
このピンク色の物体が。
今回呉に来て結構驚いたのが、建造中の巨大なピンクの船です。
喫水線下の錆止めの赤とのコンビってなんちゅうカラーリングや、と、
遠目に見た途端呆れかえったのですが、近くで見るとこれがまたすごい。
14000tのコンテナ船、「ONE GRUS(ワン・グラース)」です。
Grus、って星座の「ツル座」のことなんですって。
全長364mということなので、「大和」より100m大きいということになります。
この船について調べるとどの記述もこの色を「マゼンタ」と称しているのですが、
実際見たところ紅紫色と称されるマゼンタというより、
「濃い蛍光ピンク」にしか見えないという・・・・。
しかしこの巨大な船になぜわざわざこの色を選んだかね。
並んでいるのが同型船の「ONE COLUMBA(ワン・コルンバ)」
コルンバは「はと座」(ってのがあるんだ・・)の意味で、どうやら
この船は「ONE+鳥系星座名」という命名基準のようです。
解説の人がクイズを出しました。
「どのくらいで一隻が完成すると思いますか」
近くに座っていた女性が
「半年・・・?」
「当たりです!」
半年でこの巨大なコンテナ船ができてしまうなんてすごいですが、
わたしはまた別のことを考えていました。
「半年もの間、呉の人はこのピンクの塊を毎日見せられてるんだ・・」
目立つという意味ではこんな目立つ色もありませんが、
はっきり言ってなんというか・・・・イラっとくる色なんですよね。
一般的にピンクというのは女性ホルモンを分泌させると
医学的にも認められた色ですが、こちらは同じホルモンでも焼肉でおなじみの
「朝◯ピンク」といいますか(この意味わかる?)。
上品どころかその正反対である!と「裸の王様」の子供のように叫びたい。
鳥の星座の名前を付けるならもう少しそれらしいシルバーとか、
イメージに添った色というものがあるんじゃないかと思うんですが。
タグボートが押す場所を指定してあります。
このピンクの塊に立ち向かっていく曳船のクルーの身になってほしい。
絶対目がチカチカするわ!
さて、という話はそこそこにして。
今回のクルーズで唯一すれ違ったのはタグボート「なさみ丸」。
三陽海事という曳船事業がメインの会社のタグだそうですが、
この三陽海事、本社が大阪駅前第2ビルですって・・。
懐かしいというか、関西にいた時のことを思い出すなあ。
客引き兼添乗員が言ったように、確かにこのツァーは人少なめ。
余裕で好きなところに座ることができ、さらに写真を撮るため
後部のデッキをもう一人のカメラ持ちのおじさんと一緒に
右往左往することができました。
おじさん「ここにもたれると揺れても大丈夫だよ」
わたし「すみません。ありがとうございます」
人多すぎだと、場所取りで殺気立つ傾向にあるカメラ持ちも、
これだけ余裕があれば和やかなもので、つい
「金持ち喧嘩せず」
という金言を思い浮かべたりします。
添乗員は話を聞いていると、
「三年前に退官した」「掃海母艦に乗ったことがある」
ということまではなんとなく端々からわかりました。
このツァーは元自衛官が解説を行うので、どこかの軍港クルーズのように
聞きかじりで適当なことを言わないのが大変評価できます。
ここからは自衛隊基地に係留されている自衛艦たちです。
訓練支援艦「くろべ」JS Kurobe, ATS-4202
「黒部」というと真っ先にダムが浮かびますが、訓練支援艦の命名基準は
初代の
「あづま」群馬県吾妻峡(ただしこちらはあがつまきょう、と読む)
現役で次級である
「てんりゅう」長野県天竜峡
と同じく渓谷です。
訓練支援艦とは、主に対空射撃訓練支援用に無人標的機を管制する艦艇で、
その甲板にはオレンジ色のドローンの姿が確認できました。
(焦点がどうしても手前のネットに合わさってしまいすみません)
「くろべ」はBQM-74EチャカⅢとBMQ-34AJファイアービー、という
二種類の標的機を積んでおりますが、こちらはチャカIIIの方。
日本電気がノースロップ社と提携して作ってるそうです。
そうそう、話題はそれますが、ノースロップといえば!
さっき息子とサンクス・ギビングのことでスカイプしていて、
彼がボランティアで参加している大学救急隊の先輩が、この度、
ノースロップ社かロッキード社どちらかに就職が決まったという話を聞き、
当たり前なんですが、やっぱりアメリカの工科大学なんだなあと感動しました。
ちなみに息子のようなインターナショナル・スチューデントは、どんなに優秀でも
ノースロップ、ロッキード、GEの武器部門、レイセオンなど、
軍需会社に入社することはできません。(多分これからは中国系米人も難しくなる)
先輩はこの後、アメリカ国籍が正当なものであるかとか、
バックグラウンドに怪しい人物がいないかとか、
(急に中国人と結婚したりした人が親戚にいたらアウトかも)
そういう厳しいスクリーニングを経て正式に入社が決まるのだそうで、
入社のあかつきには、F-35に関わる仕事に就くことになっているのだとか。
余談ついでに、息子がボランティアをしている救急隊というのは
大学の救急車に実際に乗り込んで傷病者を緊急搬送することができる
資格を取り、そのレベルに応じて「ルテナント」「キャプテン」などの
階級も貰えるそうで、息子は参加してわずか1週間くらいで
「貴様は見所がある」(英語で)
というF-35先輩の鶴の一声によってすでに一階級昇進したんだそうです。
(ただし今階級がなんなのかはわからず)
救急隊の制服もあるんだそうですが、あまりに警官のと似ていて、
「安全上の理由で」、つまり警官と思われると不当な襲撃を受ける恐れがあるので
パレードの時くらいしか着用することはないそうです。
しかし、こんな形で我が息子が本物の「中尉」になるとは思わなんだ。
全く関係ない話で終わってしまってすみません。
続く。