ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

埠頭をわたる風〜日向灘・掃海隊訓練

2015-12-11 | 自衛隊

フタマルサンマルに入港し、入港作業が済んだ掃海母艦の
艦内ツァーが終了したのは、乗員の皆さんが上陸するのと同じ頃でした。

偶然車のところで拾ってあげた海士くんたち二人を、日向駅前の24時間大型スーパーに
(ミカさんによるとカードリーダを買いに行ったらあったらしい。有能)
送り届け、部屋に帰ってきたらほぼ11時。

SDカードのデータをPCに落とし、電池や端末を順番に充電し、明日の用意をしていたら、
ベッドに入るのは12時になってしまいました。
出航はマルナナサンマル、7時半と聞いたので、ホテルロビーに6時待ち合わせです。
どんなに頑張っても5時間しか寝られないわけですが、寝なきゃと思うと焦ってしまい、
そういえば今日とんかつ屋さんでサービスのコーヒーを飲んだなあ、
などと思い出すと
さらに一層寝られなくなり、少しうとうとしたと思ったら、
5時ににセットしたiPadの
行進曲「軍艦」が耳元で高らかに鳴ってしまいました。

前の日も十分寝不足だったのに、こんな状態で大丈夫か、わたし。

掃海母艦の乗員の皆さんも、昨夜は12時帰艦、5時半に総員起こしだったわけだけど、
なんといってもほら、彼らはそれが仕事なので船酔いもしないだろうしさ。



ホテルから埠頭までは車で7-8分といったところです。
岸壁はまだ暗く、夜明け前の空が東から白んでいます。

601の「ひらしま」と602の「やくしま」の艦橋には、もうすでに
煌々と明かりが灯っているのが見えます。
艦首旗を揚げるポールの先に灯りがあるとは、今の今まで知りませんでした。



ミカさんはさっそく現場で知り合いの自衛官を見つけ、記念撮影。
彼が手にしているのは、彼女の写真集だと思われます。

埠頭はまだ暗いですが、こんな時間にあっても自衛官の皆さんは、
こんなにちゃんと第1種制服を着込んでいらっしゃいます。
聞けばワイシャツも、防大や訓練時代から自分でプレスすることを仕込まれているので、
大抵の自衛官はアイロンがけがプロ並みに早くてうまいというではないですか。

いや、主婦として尊敬します。アイロンがけ嫌いなんで特に。

でも士官がこんなことまで自分でする海軍って、多分世界でも海上自衛隊だけだろうな。




「ひらしま」「やくしま」の後部にまわってみました。
まだ自衛官旗は揚げられておりません。
「やくしま」の後部甲板に白いロケット状のものが見えていますが、
これは小型係維掃海具の1号というものです。



こちら最新鋭型の「えのしま」型「はつしま」(向こうが「えのしま」)ですが、
この後部に見える白いロケット状のが同じ、小型係維掃海具1型の浮標です。



掃海具の「動力」とはこれ即ち掃海艇そのものであります。
この図を見てみもわかるように、白いロケット状のものは単なるフロートなんですね。

掃海を行うのは基本的に掃海艇であり、掃海具というのは掃海艇がトロール漁のように
引っ張って、機雷を切断したり、感応させたりして爆発を誘うためのツールです。

係維機雷の掃海を行うこの掃海具を「オロペサ型」と言います。
第一次世界大戦時にイギリスで開発された形で、機雷戦そのものは
日露戦争から始まっていますから、掃海の方法論というのは、そのころから
原理としては全く変わっていないということができるかと思います。



前甲板で作業する乗組員。
ポールに巻き付けてあるロープを解いているように見えます。
後ろに立っている隊員の顔には笑顔。朝からいい雰囲気です。



いい雰囲気といえばこれも。
彼もミカさんの知り合いで、帽子を振って挨拶していました。
今回のシリーズが始まってから、掃海隊に知り合いのいる人から
掃海隊では有名で噂は聞いていた、という連絡をもらいました。

ミカさんが掃海隊を撮り出してもう7年ということですから、
少なくとも若い海士たちよりも「掃海隊歴」は長いのです。



掃海艦「つしま」くん全景。
この位置からだと、掃海艦のもやいの掛け方がよくわかりますね。
なぜこんなに遠くから撮っているかというと(笑)、

一旦車をこの位置に止め、車の中で朝ご飯代わりのおにぎりを食べたからです。


温めなかったため、おにぎりは冷たくてとても美味しいとは言えませんでしたが、
とにかくあまりお腹が空いていては気分が悪くなるかもしれないと、

無理して一個だけ、お茶と一緒にお腹に詰め込みました。

山の端が明るくなり、もう日の出が始まらんとしています。
朝日に照らされる「ぶんご」さん。
昨晩はどうもお世話になりました。そしてお邪魔致しました。

あの海士くん二人は、ちゃんと12時にタクシーで帰れたかな。



おにぎりを食べ終わるとすぐに、わたしもミカさんも、また岸壁まで出て写真を撮ります。
そこでちょうどご来光が「つしま」くんの向こうから登りかけていました。
天気予報では雨だと聞いていたのに、訓練見学当日は快晴になる模様です。

ただ、この時点で埠頭には、かなり強く冷たい風が吹き渡っていました。

うーん・・・・この風・・・・、もしかしたら、今日は波乱の航海か?



わたしたちが乗り込むのは「えのしま」です。
「えのしま」はご存知のように海上自衛隊掃海艇の最新型で、
604「えのしま」、605「ちちじま」、606「はつしま」のうち、
「ちちじま」を除く2隻がこの訓練に横須賀から参加しています。

ちょうどわたしが3年前の観艦式で「ひゅうが」に乗ったとき、
1番艦の「えのしま」が就役したばかり(2012年)で、初めてのお目見えでした。
その時のエントリにも艦体がGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)であることを
書いた覚えがあります。

今回の観艦式は、その3年後に新たに建造された3番艦「はつしま」が顔見世をしました。
ということは、この2隻、わたしがどちらも観艦式で「観艦」した掃海艇ということになります。

こんな形で再会できて嬉しいぞー!


このころになると、メディア・ツァーが行われる「えのしま」の前に、

ポツポツと報道記者とカメラマンを乗せた車が到着し始めます。
陸自の制服を着た男女の地本自衛官も、車で乗りつけてきました。

海自艦艇の出入港の時には、必ず地元の地本が見送り&出迎えをするんですね。



自衛艦旗がいつの間にかマストに上がっています。
左のマストはおそらくこの艦のコールサインだとおもいますが、
右のはなんだろう。
信号旗が読めるようになりたいなあとこんな時思います。


 
昨日は1日雲が多かったので、まだそれが空に残っている感じ。
しかし風が強いのですぐに払われそうです。

そのうち時間になったので、メディアの人たちが先になって乗船を行いました。
わたしたちは外側の「えのしま」に行くために「はつしま」を通り抜けるのですが、
「はつしま」の乗員は、乗艦する人が足を踏み外したりしたときのために
いつでも手を出せる体勢を取りながらも、爽やかに

「おはようございます!」

という挨拶を一人一人にきちんとしてくれました。
いつも思いますが、自衛官の挨拶というのはこちらを元気にしてくれます。


 

そのとき、ちょうど太陽が後ろの山(後で調べたら米ノ山という山だった)から
顔を出しました。
「はつしま」と「えのしま」の間で、出港前の作業が行われています。



まず「えのしま」が「はつしま」から離岸するための作業。
おおおー、皆かっこいいなあ。(と一見普通のことに萌えるわたし)

ところで、「えのしま」と「はつしま」は同型艦のはずなのに、
あれ?甲板上に乗っているモノが全く違うんですけど・・・。

「えのしま」のはM61バルカンの(ちなみにバルカン砲というのは製品名であり、
一般名詞ではありません。念のため)JM-61Mでしょう。(JはジャパンのJ?)
そして「はつしま」のはミニ主砲みたいな感じですが、こちらもバルカンで、
JM61-RFS 20mm多銃身機銃だそうです。

両者の大きな違いは操作法。

「はつしま」は後発なので、遠隔操作のできる新型タイプを搭載したようです。
これは光学方位盤により遠隔指揮を受けるという仕組みで、日本では他に
海上保安庁の船に不審船対策として搭載されているそうですが、

掃海艇でのバルカン砲の使用目的というのは、(まあ武器としても使えますが)
実は機雷処分だということが後で聞いた説明で判明しました。


護衛艦と違って、小さな掃海艇はあれよあれよと作業が進み、あっという間に出航です。
この最新型掃海艇のクルーズ、どんなことが待ち受けているのでしょうか。


続く。