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2013年自衛隊観閲式~「国防という職業選択」

2013-10-29 | 自衛隊

前日の雨がまだ地面を濡らしている払暁、
平成25年度自衛隊観閲式に参加するため、わたしは朝4時半に起き、
取りあえず六本木に車を走らせていました。

基地周辺は首相初め政府関係者の参加のため厳戒態勢になっており、
とても車では近づくこともどこか駐車することもできません。
車のとめやすいミッドタウンから有楽町線で移動する、という作戦です。



早朝なのになぜか六本木周辺は警察と機動隊が。
そして、公安警察を上回る、変な格好をした若者たちの群れ。

魔法使い、囚人、カボチャ、幽霊・・・。
「ハロウィーンか・・・・」
仮装して盛り場を夜通し騒ぎ、挙げ句は警察が出動しなければいけないくらい
狼藉を働いて善良な市民に迷惑をかける。
日本のハロウィーンとはこういうノリのイベントになってるんですね。
仮装が「いつもと違った自分でない自分になれた」気にさせるんでしょうか。

永田町から和光市まで電車で37分。
和光市に到着したのは7時過ぎでした。
開門は7時です。
迷わずタクシーに乗り、朝霞駐屯地到着は7時20分。

ところが。



なんなのこのディズニーランドの人気ライド状態は。
総理臨席というイベントの性質上、手荷物検査は厳格に行われます。
空港のようなX線検査機までは導入していないので(笑)、
手荷物検査は全て手作業。
いちいち鞄を開け、全ての内部ポケットも開けてみせる入念さ。
そりゃ時間もかかるわ。



ここでパンフレットをもらい、チケットをもぎってもらいます。
ここにたどり着いたのが並びだしてほぼ20分後。
ようやく金属ゲートを抜けたら、そこには・・・



りくのサイポンが!

陸自の迷彩服を着ていますが、こいつはサイです。
なぜサイなのか。
サイポンの「ぽん」とは何か。
採用の「さい」と地本の「ほん」ではないか、と安易な想像をしてみたけど、
実は、これ「自衛隊に親しみを持ってもらうためのゆるキャラ」で、
埼玉の「サイ」、そして「勾玉の顔の形」なんですわ。
埼玉地本のキャラクターなので、「ポン」が地本のほんであるという想像は
当たっていたということになりますね。

わたしはそれよりサイポンの横にいる企画の腕章を付けた自衛官の方が
キャラが立っていると思いました。



陸自のサイポンの次に待ち構えるのは空自サイポンだっ!



そしてわかりやすくペンネントに「埼玉地本」と書かれた
海自のサイポンが・・・・!

海自サイポン、顔色が青ざめているし。
ゆるキャラといいながら目が笑っていない。
ノルマもあるって言うし、地本の勧誘業務ってハードなんだなあきっと。




かわいいじゃないかおい。
これはゆるキャラ認定してもいいよ。可愛いし。
調べてみたら、これは東京地本のゆるキャラでその名も

「トウチくん」

昨日のエントリで勝手に「ハトである」と決めつけたのですが、
どっこいこれはユリカモメ。
そう言えば翼の先がグレイをしているから、カモメかもしれない。
迷彩のまあるいおなかがチャームポイント。
中の人が自前の制服を来たまま着用できるデザインが
非常に機能的ですね。


 

ここからみるとまだスタンドにはだれもいず、いい席よりどりみどり?
楽勝だわ!と思ったのですが、それは勘違いでした(笑)

 

観閲式の文字の下には小さな戦車が待機しています。
地面はまだ前日の雨で濡れていました。



各車両には隊員が一人ずつ乗っています。
まさかそんなことはないとは思いますが、
無人の車両に人が近づき何かを仕掛けるという危険の防止でしょう。



観閲台のまわりは「黄色いチケット」を持っている人のみ。
赤チケットはその両脇です。
つまり前回と同じだったわけですが、前回と違って
すでにたくさんの人が席を占めていて、上段から埋まってしまっていました。
上に空席がないか確かめようとして段を登って行ったら、
「もうどこも空いてないよ」
と上の方から男の人に言われました。

最初、観閲台近くの下から二段目に三人分の席を取ったのですが、
自衛官が「三段目以上が見易くなっております。上に席があればそちらにどうぞ」
と繰り返すので、隣の、つまり前回と同じ区画の三段目に移動しました。

 

これじゃ今日も大した写真は撮れそうにありません。
前に関係者のパイプ椅子が並んでいて、視界最悪。



戦車の向こう側は「緑席」。

一応ヒエラルキー的にはわたしの頂いた赤チケットは、
「超関係者」の紫、「関係者」の黄色の次にいい場所なのですが、
それに甘えて油断したのが失敗でした。



しかし、わたしなどまだ早い方です。
同じ赤チケットでも、観閲路の向こう側(遠い)に行かざるを得なかった人もいます。

 

さて、席を確保したので、後から来る家族のために食べ物を買いに出ました。

 



 

アヒル隊長。初めて見ました。
海自のフネバージョンが一番しっくりしますね。
戦車に乗っているアヒル隊長の絵は、マンホールの穴から首を出していた
YouTubeのスズメ画像を思い出してしまいました。

がんばれ!すずめ




自衛隊グッズやお菓子の企画を考えるお仕事ってきっと楽しいだろうなあ。



この辺に駐車してある車両にも必ず隊員が番をしています。



観客席の前には、客席だけを見張る係が多数。
後ろをちらっと振り向くことすら許されません。
地元警察からも応援が来ています。
わたしたちの前には婦警さんがいました。



観閲会場の滑走路の向こうは自衛隊装備展示会場。
隊員が移動の行進する姿も見られます。




観閲場中央にいるのは米軍の制服着用の軍人。
式の後演奏をする軍楽隊の隊長で、
彼と話をしているのは、東部方面音楽隊の隊長のようです。
迷彩服を着ているのですが、陸自はこれが音楽隊の制服でもあるんですね。



警備のための隊員、警察官に加えて、政府のSPも到着。

 

いつの間にか前の席が一杯になりました。
一番前列はともかく、二列目以降は前の人の頭でほとんど見えない場所かも知れません。




空をしょっちゅうヘリコプターが旋回していました。
首相到着が近いので、上空警戒でしょう。

VIP臨席の行事は何度もやっていて手順も決まっているのでしょうが、
毎年のように大変なことだと思われます。
うちの家族は開始の9時半に滑り込んできたのですが、
朝霞の入り口に到着したときに割と上官っぽい自衛官が

「遅れてくる国会議員がどーたらこーたら」

と皆が聴こえるところで言うので、下の人が「あーまずい、聞かれてるのに大きな声で」
みたいな表情をしていた、
と報告してくれました。

遅れてきた国会議員って、誰。





さて、先週と同じ、入場行進はこの二人のスネアによって行われます。
後ろに立っているだけの一人が何のためなのかはわかりませんでした。



行進は常に防衛大学校が最初です。
相変わらずしゅっとしてピカッとした凛々しい制服姿ですね。(うっとり)
先週雨に濡れた制服は、その日のうちに乾かし、アイロンがけしたんでしょうね。

(対番生徒)「アイロンがけはいい感じにな」
(新入生)「いい感じとはなんでありますか」
(対番生徒)「人間には不可能な精度でという意味だ」

みたいな?(ジエイのお仕事by岡山地本広報HPより)




観閲部隊は勿論部隊の全員参加ではありません。
一体どのように観閲部隊が決まるのでしょうか。

と思っていたところ、先日ふとした弾みで、防大の父兄の方からの情報をいただき、
この参加が「志願制」であるらしいことを知りました。

お父さんお母さんは息子の「晴れ姿」を見ることを切望するのだと思いますが、
何か不可避の事情で参加を辞退、ということもあるようなのです。
それで少しがっかりされるご父兄もおられるのかな、と思った次第です。




 





二番目の学生の腰に下がっているのは、「カバー」ではありません。
鞘です鞘。
あらためて思うのですが、行進のときに担ぐのって「銃剣」なんですね。
自衛隊では銃剣術なんて訓練をしたりするんでしょうか。




同じ制服ですが、女子学生がスカートを履いているのは、防衛医大。
ブルーの旗の翼の中心にあるのはアスクレピオスの杖(の蛇のいないバージョン)?

かっこいいなあ・・防衛医大の女性。
人生がもう一回あれば、女性に生まれて防衛医大を受験したいなあ。
いや、やっぱり男性に生まれて防衛医大かな。

息子には将来防衛医大に行ってほしい、と真剣に思っていたこともありますが、
刷り込みの戦略が拙速だったためか失敗し、全くこういう世界に興味を持ってくれません。



防衛大学校と防衛医大の行進隊列の大きな違いは、

「銃剣を携えているかどうか」

彼らが左手に携えているのは医療用の用具を象徴する行進用のバッグ。
かもしれません。想像ですが。
ちなみにやはり隊列の先頭に立っている4人は、主席を始め成績優秀者であるとのこと。
ということはこの写真の女子学生は主席かもしれないということなんですね。



超頭脳優秀な若者たちの集団。
ところで、旧軍では「軍医」と軍隊付きの医師を呼びました。

「軍医どの~ッ!」

というセリフが戦争映画にはしょっちゅう出てくるわけですが、
階級に慣例的に「殿」をつけない海軍ではやはり

「軍医~~ッ!」

だったんでしょうか。
なんだか据わりが悪いというか、呼び捨てみたいで気が引けますね。
そして今は

「医官~ッ!」

なんでしょうか。もっと言いにくいですね。
まるで「イカ~ンッ!」って怒ってるように聴こえませんでしょうか。

しかしなんでいちいち叫ぶ場面を想定しているんだエリス中尉~ッ!(笑)




そして普通科連隊の入場。


 

左手がウェーブしている(笑)
彼らの右太もものラインは、飾りではなく、
物入れ(レッグバッグといってこの日も売店で売っていた)を
装着するベルトになっている、と想像。


 





滑走路向こう側の席は結構ガラガラです。
多少遠くてもこの上段の方がよかったかな。
(と未練がましく今更考えるエリス中尉)







空挺隊。
前を歩く隊長の首の太さをご覧ください。




精鋭部隊、陸自空挺団の入場。

開始前、先週と同じく「自衛隊ソング」が流されていましたが、
そのなかに

「あ~あ堂々の~じ~え~い~た~い~」


という歌詞がありまして、思わずこういう光景を見ると思い出してしまいました。
「ああ、堂々の自衛隊」って、「不肖宮島」茂樹さんの著書にありましたね。
てっきりこれは「暁に祈る」という軍歌の歌詞
「ああ堂々の輸送船」のパロディだと思っていたんですが、そう言う歌があったんですね。






海自の部隊旗は、旭日軍艦旗と同じく、旧軍と同じデザインの
「桜に錨」をそのまま流用しています。


後ろを行進している青いマフラーの隊員は通信科。
通信科の青は戦後決められたようですが、たとえば旧軍の歩兵に相当する

普通科のマフラーの赤(正確には緋色)
砲兵科の黄色
航空科の浅葱色(旧軍では淡紺青)
施設科のえび茶(旧軍工兵科のとび色)
 
などは旧軍時代のものをそのまま受け継いでいます。
上の防衛医大の部隊旗が緑なのは、衛生科の色なのです。

 




航空自衛隊の向こうに立っているのはオレンジのマフラー
つまり機甲科。 
機甲科は、戦車隊と偵察部隊に大別されます。





女性自衛官部隊。



髪を纏めている、つまりロングヘアの隊員が多いですね。



陸海空女性部隊の隊長三人。



こちらは高等看護学院の隊員たち。
男子学生は救難ヘリなどに配置されるのでしょうか。
海自ですが、US2に乗り込んでいたのも看護士の資格を持つ隊員でした。
救難救命の現場で大きな力となる看護士を育成する組織です。



女性部隊隊長たちの行進。




最後に入場してくるのが音楽隊です。

左から東京音楽隊隊長川邉一彦二等海佐、
陸上中央運楽隊隊長武田晃一等陸佐、
航空中央音楽隊隊長。(どこを探してもわかりませんでした。すみません)




後ろのおじさんたちが「小学校の運動会を思い出すねえ」
などと、少し失礼な感想を述べておられましたが、小学校の鼓笛隊でも、
こういうドラムメジャーは、背が高い生徒が選ばれていた覚えがあります。

ここだけの話なのですが、先週の予行演習のとき、ドラムメジャーがバトンを落としました。
雨が強く、傘なしでは目も開けていられないくらいの状態のときでもあったので、
もしかしたら濡れたバトンが滑ったのかもしれません。
無言で進行を眺めていた(笑)周りの人たちは一斉に
あっ!と声を上げたのですが、一番心臓が凍ったのはご本人だったでしょう。

しかしそれはあくまでも予行演習のこと。
晴れた本番のこの日は勿論そのようなミスは起こりませんでした。





音楽隊のこちらに見えている陸自隊員のは、行進の間スネアを叩いていた太鼓手です。
ちょうど音楽隊が前にさしかかった瞬間、後ろにいた隊員(やっと役目がわかりました)が、
合図の笛を吹くと同時に演奏交代するという仕組みです。
ブースから出て退出中。


というわけで、儀仗隊を除く全ての観閲部隊が入場したところで次回に続きます。



ところで、わたしはここにいる若い隊員たちと、同日の朝六本木で見た、

ハロウィーンの仮装をした若者たちをどうしても比べずにはいられませんでした。

彼らは同年代。
同じ時代の、同じ日本に生まれても、かたや一晩の放埒に目の下を疲労で黒ずませ、
タクシーを拾って朝帰りをする若者がいるかと思えば、
かたやこれから国の護り手としての激励を一国の総理から受けようとしている若者がいる。


どちらの青春もが共存するこの日本という国は、それだけ平和だということなのでしょう。
放埒の青春どころか、普通の生活すら捨て、命に代えて国を護ることが全ての若者たちに強要される、
それは日本がかつて辿った暗黒の道であり、二度と選択されるべきではない歴史です。

平和で豊かな社会であれば、その選択肢は無限にあり、その選択にいいも悪いもありません。
六本木の若者たちを非難する権利は勿論誰にもないのです。

しかし、仮装して朝まで集団でばか騒ぎの末警察のお世話になるような享楽的な若者もまた、
意識するしないにかかわらず、日本の平和を日本人として享受しているのであり、
つまり、かれらの安穏の根幹には、彼らは決して知ることはないでしょうが、
これから朝霞で観閲を受ける自衛隊の若者たちの力が礎を為しているということでもあります。


今の平和な日本ならではの数多の選択肢の中から、誰かの、
しかも見知らぬ他人の役に立つ職業を選択する若者がここにいます。

日本という国の国民である他人を護ることを自分の使命と決めた若者たちが。

人生に何を求めるかはその人間の自由です。
しかし、何より誰かに必要とされる人生はそれだけで幸いであるとわたしは思います。