ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

振り向けば、日本

2012-08-02 | 日本のこと



たった今、内村航平選手、金メダルが決定しました。
おめでとうございます!
でも、男子の金メダルって、具志堅選手以来28年ぶりなんですってね。
いつもそれなりに成績を残していたような気がしていたけど、そんなものだったのですね。

でも、男子体操、見ていません。中継してくれなかったの・・・・ここはアメリカだから。
なんだかビーチバレーと女子体操と水泳ばっかりやっている気がするの。


日本では銅メダルラッシュ(笑)と内村選手のメダルでそれなりに盛り上がっているようですが、
ここアメリカでは・・・・・普通です。
オリンピックをやっているチャンネルは、NBC一局だけですし、実のところアメリカ人は
(お、今、バタフライでマツダタケシの名前を連呼している)
オリンピックなんかよりアメリカンフットボールや野球の方が好きみたいなので。
(マツダが三位になったようです)

しょっちゅう誰かが金メダルを取っているような国ですから、国を挙げて皆がテレビにかじりつく、
なんていうことはおそらく昔から無かったのではないかと思われます。

さて、そんな「冷めた国」アメリカで、これまでなんどか開会式を見ました。
前回の北京のときは
「彼らは柔道でたくさんのメダルが期待できるでしょう。なぜならそれを発明した国だからです」
という言葉がアナウンサーから聞かれたという記憶がありますが、今年は?

 

まるでNBCの放送に合わせたかのように、開会式は夜7時に始まりました。
この画像を見て、日本の人口が今1億2千700万人であることを知った次第です。

「日本は、金メダルが期待できる選手として、体操の内村航平がいます。
水泳で過去二回メダリストになった北島選手が三回目のメダルを狙えるかが注目です。
日本は昨年の三月に大きな地震とそれに続くツナミという災害に見舞われました」

ふーん、原発事故は無しか。

何しろ次々と国は入場してくるので、各国に対するコメントは皆一言だけです。
ただ、日本の少し前に入場したイスラエルについては、ミュンヘンオリンピックのときにテロが起き、
選手が犠牲になった話を結構延々と、と言った感じで続けていて「?」となりました。

・・・・なんか、色々ありそうですね。アメリカのテレビ界も。

 

この写真は、この辺の大型ショッピングモールのGAP店頭に飾られた「オリンピックTシャツ」。
なぜか、東京オリンピックのTシャツが無茶苦茶目立つところに飾られています。
ほかにもモントリオール、パリ、アメリカのものとオリンピック五輪のものがありましたが、
やはり何と言うか日の丸はデザインとしてキャッチーなんでしょうかね。

手に取ってみたら非常に肌触りの良い素材で、息子のパジャマにいいかなあと思ったのですが、
小さいシャツがことごとく売り切れてしまったらしくXLとLしか残っていませんでした。
それでも買うかどうか今迷い中。


最近、アメリカのテレビをつけていると、何度となく
「ハジメマシテ」
と聴こえてきてつい目をやってしまうCMがあります。
翻訳機能のあるスマートフォンの宣伝らしいのですが、主人公のビジネスマンが、
これを使って世界各国を股にかけ仕事をする、というストーリー。
日本では、お辞儀の正しい角度をスマホで調べて商談に臨んでいました。

二年前、テレビのコマーシャルにすっかり騙されてインターネット購入し涙を飲んだ
「フシギ」というタダのガラスボール(全然不思議じゃない)詐欺的商品の話をしたことがあります。
この商品名に日本語が使われていたように、不可思議な日本語がつけられる商品があります。


 

要するにジューサーになったりミキサーになったり、いろいろ使える調理器具なのですが、
なぜか商品名「ニンジャ」。
なぜニンジャ?
いろいろ様変わりして、使い方無限大、という一見お得な(でもすぐ使わなくなる)商品、
どうやら「形を変えるからニンジャ」という解釈のようです。

アメリカ人のニンジャ好きは異常なほどで、なにかというとニンジャが出てきます。

本当かうそか、アメリカの学校で日本人生徒が怪我をしたのに体育に出る、と言ったら先生が
「大丈夫か?」それに答えて
「大丈夫です。うちの祖先はニンジャなんで」
と言ったら、真面目な顔で納得された、という話を聴いたことがあります。

なんだか、ニンジャというのを「変身したりもの凄い秘術を使ったりするスーパーマン」
であると過大評価しているみたいなんですね。

先日サッカーで日本がスペインに勝ったときも、出るぞ出るぞと思っていたらやっぱり、
「ニンジャのように日本チームは戦った」と書いている新聞もあったようです。


さて、サンフランシスコについたときのレンタカー出口のおじさんの「サヨナーラ」をはじめ、
日本人だと分かると、知っている日本語で声をかけてくる人はたくさんいます。
まあ、我々が外国語の挨拶くらいはしゃべれなくても知っているレベルですが、
やっぱりそういう風な応対を受けるのは嬉しいものです。

東南アジアのリゾート地では、日本人を見分ける方法の一つとして、
「日本語であいさつしたら嬉しそうにする」というのがあるそうです。
あるいは
「手を前で合わせる挨拶をすると、同じように返してくるのが日本人」
「お店でこちらを呼びつけるのが中国人、韓国人、向こうから来るのが日本人」
というのも。特殊な例として
「トラブルになったとき、自分は日本人だと言ったらそれは絶対に日本人ではない」
というのもありました。

カタコト日本語はこのように、いまや普通のアメリカ人なら誰でも知っていますから、
そう驚くほどのこともありませんが、見るからにアメリカ人がぺらぺら日本語をしゃべりだすと、
これはなかなかにびっくりします。
世界で日本でしか使われていない言語ですから、習熟していること自体珍しいわけですし。

ところが、今回、その驚くことが立て続けに二回ありました。


一度目、息子のキャンプのサインアップ(登録)会場。
このデスクはメディケーションを申告するコーナー。
薬を服用しなければいけないキャンパーはここで預かってもらい、
いつ服用するかを親が申告しておくと、時間どおりに薬をだしてくれるのです。

それはともかく、このデスクでしばらく話していると、右側の男性がいきなり
「4時間に一回ですね」
と日本語ですらっと言ったので「へっ?」と驚いて絶句してしまいました。

朝の忙しいときにどこで勉強したかとか日本にいたのかとか聴くのもなんなので黙っていましたが、
後で息子と
「絶対あれ、日本に住んでたって感じの日本語だね」と言い合いました。

 二回目、楽器屋さん。

ボストンではオンラインで申し込めるレンタルチェロを利用し、非常に楽でした。
ここはとにかく来てみないと分からないので、ネットで調べたいくつかの楽器店に当たることに。

一つ目は
「チェロはやってないんだよ、すまんね」
と愛相のないおじさんが一言答えておしまい。

もう一つの楽器店には、前もってメールをしておきました。
HPは愛相のないもので、レンタルについて何の情報も無かったので、とにかく料金と、
最短期間を教えてほしい、と書いて送ったのですが、返事は無し。
ですから一軒目のようなものであろうとあまり期待していませんでした。

「メールしたんですが・・・・」
「ああ、あれね。一カ月なら100ドル、2000ドルのいい楽器を貸すよ」
ここも愛相のないおじさんの声で、こんどはこういうありがたい返事が。
最低料金なしでさくっと一カ月貸してくれるとは。

喜び勇んで取りに行きました。
狭いビルの階段を上ると、ドアを開けたところに店主のおじさんと話している客が。
「チェロのレンタルの件で来たものですが」
「ああ、ちょっと待っててね」

すると、店主と話していた男性が
「日本の方ですか?」(『方』よ。『方』)
朝いきなりの日本語にびっくりしたばかりで、その日の午後またしても驚くエリス中尉。

「日本人の英語は聴いていてすぐわかります」

だそうですよ皆さん。
息子はチャットなどで英語に全然訛りがないと驚かれるそうですが、わたしは日本訛りありまくり。
いいんだよ、日本人の英語下手には定評があるんだから。


この男性もどうやら日本にいたのではないかと思われるほど上手な日本語で、
「息子さんの楽器ですか。わたしも今日は息子のために来ました」

息子さんのためにヴァイオリンを買うか、わたしのように借りにきて、
ついでに先生を紹介してもらっていたのでした。

「でね」
話を続ける店主。
「この先生は、とても熱心で教えるのが上手い。信頼のおけるいい先生だよ・・・・知ってる?」

この「知ってる?」は私に向かって言ったのです。
パロアルトの音楽家に知り合いがいるわけは無かろう、と思って名刺を見ると、なんと日本人でした。
知り合いではありませんでしたが。

うーん、今日は、というか、ここではやたら日本に縁があるなあ。


ホテルには必ず日本人の客(子供づれ多し)が数組いるし、やはりここはスタンフォード、
研究や留学でここにいる日本人は多いように思われます。




今、この近辺の劇場ではイギリス人のギルバートが1985年に作曲したオペレッタ
「ザ・ミカド」が上演されているようです。

ご存じないかもしれませんが、映画「炎のランナー」(今回Mr.ビーンが開会式でパロった)中で
主人公がオペラ歌手を見染めるシーン、このときに上演されていたのがこの「ミカド」です。

 

当時イギリスでは博覧会があったのをきっかけに、東洋趣味、なかでも「日本ブーム」がありました。
それに便乗して作られた、知る人ぞ知るオペレッタ界の「快作」がこの「ミカド」ですが、
日本の首都が「ティティプー」(秩父?)と言ったり、ミカドが中国の皇帝だったり、
(ちょ・・この帝のちょんまげ・・・・)
何しろ日本も中国もいっしょくたになったテイストの、とんでもないオペレッタなのです。
因みにこの画像はウィキペディアから借りてきましたが、
左から「Yum-Yum」「Pitti-sing」「Peep-bo」だそうで、全く日本語の響きは考慮されていません。

Far Eastという響きには、西洋人の見た全く地の果ての別世界、日本への遠さがそのまま
よく言えば憧憬となり、悪く言えば全くの無理解となって込められています。


これだけ地球が狭く、情報がいくらでも手に入る時代になって、「振り向けば日本」というほど
何かと日本を目にするこの地の人々でも、でもこの奇妙なオペレッタを見て、
そこに描かれた無茶苦茶な日本を、昔の日本の姿だと納得してしまったりするんだろうなあ。