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バーキン片手に靖國神社

スタンフォードで医者にかかる

2012-08-06 | アメリカ

先日、息子の副鼻腔炎でスタンフォード大学病院のERに行った話をアップしました。
危急の場合でもないのにERに行かなければいけないのは、つまり我々がここでの「ヒストリー」が
ないからで、取りあえず「面通し」の意味だった、ということをお話ししたわけですが、
そのとき保険会社の方から言われたのが
「ERですから、多分待ち時間が長いので覚悟しておいてください」

受付で10分、中に入って1時間、治療室に入って1時間、治療を受け出してから終わるまで1時間、
5時に病院に入って終わったら8時でしたから、待ったといえばそうなのですが、
例え予約をしてあったとしても治療までしばらく待ち、さらに終わったら会計で待ち、薬で待ち、と
何かと時間のかかる「半日仕事」である日本での医療を考えると、こんなものだと思いました。

ERではカルテを作成するのみで、診断は本ちゃん?の医者だけが行います。
ERが終わったときに、肉体派(笑)のナースがくれた紙に「二日以内に病院の予約を取ること」
と書いてあり、この予約をカード会社のメディカル部門に全部やらせようとしました。
ところが、係の方が
「間に私どもを挟むのは時間の無駄だと先方が言うので、お客様がご自身で予約をお取り下さい」

ちっ・・・・。

英語で電話のやり取りするのが面倒なので保険会社を通訳代わりにこき使おうとしていたのが
ばれてしまったのなら仕方がないな。

「スタンフォードの方から電話を入れてくれる予定ですので」
これも、日本の病院ではあまりないサービスです。

翌日電話がかかってきたのですが、その係というのが
「インターナショナルメディカルサービス」という部門。
どうやらヒスパニック系の「R」を強く巻く発音の女性でしたが、英語が非常に分かりやすい。

このときつくづく思ったのですが、我々日本人はネイティブの英語より、若干訥々としていた方が
ずっと聴きとりやすいようです。

英語、フランス語、スペイン語、中国語と、この順番で少しずつかじった程度ですが、
この範囲で言うなら、実は一番日本人に聞きとりやすいのがスペイン語なんですね。
と言っても、聴きとる聴きとらないの段階まで勉強したのはフランス語だけなのですが、
少なくともフランス語も、英語などよりずっと聴きとりやすい気がします。

これは言語に使用する波長域の共通部分が、英語と日本語はかけ離れているというからだ、
と聞いたことがありますが、同じ英語でもアメリカ人の英語より、イギリス英語の方が、
日本人には(というかわたしには)聴きとりやすいように思います。

おまけにアメリカには普通に多数民族が住んでいますので、見かけが東洋人だからと言って
最初から分かりやすいようにしゃべってくれる配慮など、まずありません。

というわけで、その分かりやすい英語の予約係と、診察の日にちを決めたのですが、
向こうから「月曜日の3時半はどうですか?」と提案してきて、こちらが
「それで結構です」
というと、「Good!Good!」
そんなに喜んでくれて、こちらも嬉しい!という気分になります。
あまり意味は無いのかもしれませんが。

前回も少し書きましたが、この後この人(フィオレンツァというきれいな名前だった)から、
病院への来方と予約の確認をかいたメールが来て、実に丁寧だと感心した次第です。

さて、診療当日、息子のキャンプは4時半までなので、途中で迎えに行き、病院へと向かいました。
と言っても、病院もスタンフォード構内なので、車でわずか10分ほどです。
それが冒頭画像の「Blake Wilbur」というクリニック。
ご想像の通り、Blake Wilburというスタンフォード卒の篤志家の寄付で建てられたビルです。

名門大学は個人名を持つ建物がほとんどで、こういうのがアメリカ人の
「功なり名をあげた人物の大学への恩返し&自分の名を大学に刻む誇り」の象徴になっています。

それでは中に入ってみましょう。
おっと、その前に車を止めなくてはいけません。
建物の向かいにある駐車場は無料で、ゲートもありませんから何時間止めていてもいいのですが、
ERとか、予約の時間に遅れそうとか、駐車場まで停めに行って歩くのが面倒とか、
まあそういった諸事情をもつアメリカ人のために、この病院ではこんなサービスが。



ここで係に8ドル払えば、車を駐車場に停めてくれ、出てきたときには取りに行ってくれます。
こういうのをバレー・サービスと言いますが、これは病人と付き添いにとってはありがたいでしょう。
日本だと病院の駐車場すらお金を取られるところが多いので、
こういう商売はいろいろと難しく、成り立たないのかもしれませんが・・・。

因みにこのとき、ぎりぎりの時間だったので、バレーをお願いしました。

 

う、美しい・・・・。
病院独特の辛気臭さや暗さは全くなく、明るく爽やかなインテリアに、いたるところにかけられた絵画。
この受付に座っていた人に聞いて、三階に行き、そこでボードと問診票をもらいます。
ソファに座ったとたんに係が呼びに来て、診察室に通されました。
予約を取っているということは、こういうのが当たり前(のはず)なんですよね。



部屋には二つの椅子とドクター用の机があり、それも事務椅子みたいなものではありません。
「もうすこししたら、ドクターが来ますので、それまでのあいだ、問診票を書きながら、
リラックスして、ゆっくりとお待ちください」

直訳すればこんな感じでしたが、つまり「ごゆっくりとおくつろぎください」です。
10分ほど経ったとき、ノックの音がして、ドクター登場。

「I'm doctor Chen. Nice to meet you!」

にこやかな微笑みと共に入ってきたのは歳の頃30、石鹸で洗ったような爽やか系中国系青年。
診察をしてくれる予定の医師が「ドクター・ジミー・チェン」であることは前もって知らされていましたが、
なぜか中国四千年みたいな貫録の中年医師を予想していたので、全くのイメージ違いです。

そしてさらに驚いたのが、彼が握手の手を差し伸べて
「How are you?」
と聞いてきたことで、病院に来る患者にご機嫌を伺うと言うのも、相手によっては
「いいわけないだろ!」
と絡まれる危険もあるとつい思わないでもないのですが、とにかくそういう挨拶がありました。
まあ、これが英語圏のしきたりなんですね。
だから、答えるのに
「グッド、といってもいいのかどうか」などと深く考え込む必要もないのです。


さて、チェン医師は、カルテを見てだいたいのことは分かっているはずですが、それでも
「さて、今日はどんなことでここに来られましたか?」
とまず患者に説明を求めることから始めました。

日本でも、診察室に入ると
「どうしました~?」って先生が聴くでしょ?あれと同じ。
日本の先生が、それをカルテを見たまま患者の顔も見ないで言うのとは随分違う雰囲気ですが。

息子は英語が堪能ですが(チェン先生にも、『英語上手いねえ』と誉められていた)、
さすがにこういうとき順序立てて経過を説明すると言うことができないので、
わたしがそれを説明し、あとは先生がいくつかの質問をしていきます。
さらに、診察台に息子を乗せ、喉の奥や耳の穴、鼻などを診て、

「典型的な副鼻腔炎です。
かれはアレルギー体質ですか?」

アレルゲン検査をたまたま出国前にしていたので、

「ハウスダスト、ポーレン(花粉)、食べ物、ラテックス(果物など、ゴム質のこと)全てに
結構なアレルゲンがあります」

というと、

「おそらく日本からボストンに行ったときに空気中の何かにアレルゲンがあり、
アレルギー性の副鼻腔炎を起こしたものと思われます」

診察を待っているときにわたしが

「案外アレルギーが原因かもしれないね」

というと、反抗期の息子

「そんなわけないよ!」

と、全く意味なく反発してくれたのですが、当たっていたというわけです。

「当たってたでしょ?アレルギー性だって」
「・・・・・・」

ドクターは診断書と処方箋をさらさらと書いて、「何か質問はありますか?」
30分で診察は終わりました。

前回のERのドクターのしゃべり方でも感じたことですが、アメリカの医師の質問や説明は
どうしてこうきっちりと分かりやすいのでしょうか。
だらだらとしゃべることなく、要点とポイントだけをさくさく聴いていき、説明も修辞なしで、
ずばりと結果だけを言う。

始まりと終わりの挨拶は非常に安心感を与えるべくにこやかに、爽やかでありながら、
診療はきびきびと的確に、という感じです。
医学そのものもであるけれど、患者との「セッション」に対する方法も、
またそのようなトレーニングの成果、という感じのする診察でした。

さて、病院を出た我々は、ホテルの向かいにあるCVSに向かいました。
アメリカではこのCVS、Walgreenなどが、いわゆる調剤薬局を兼ねた大型スーパー薬局。
奥に調剤コーナーがあり、処方箋をここで出して薬を貰うのですが、
実質は日本の大型薬局のように化粧品も置いている「何でも屋」。
写真の現像、プール用品や、キッチン、生活雑貨、食料品、電化製品なども扱っています。

薬を処方している間、「店内を見てまっていてください」などと言われるのですが、
このあたりも日本の調剤薬局とはだいぶ違いますね。

この日CVSで発見した「こんなもの誰が買うのかシリーズ」のお菓子。



食べたとたん、なんか良くない病気にかかりそうな色をしています。



いわゆるテンピュールもどきの低反発マクラ。
それはいいとして、「ソバカワ」ってなんですか?
もしかしたら「そばがら」の聴きちがい?
「ニンジャ」に続く、怪しい日本語製品シリーズです。
さらに!



「ミヤシ」。
揉む、という字が一字あると言うのも、分かるようでなんか違う、って気がしますが、
この「ミヤシ」、「ソバカワ」と同じ会社のプロダクトによるもの。

「癒し」が伝言ゲームの段階で「ミヤシ」になってしまったんでしょうね。
いずれも「ちょっと惜しい」というところで間違っているのが涙をそそります。