アヴァターラ・神のまにまに

精神世界の研究試論です。テーマは、瞑想、冥想、人間の進化、七つの身体。このブログは、いかなる団体とも関係ありません。

チベット死者の書の読み方

2022-12-25 07:27:37 | チベット死者の書
◎無上の垂直道

チベット死者の書(バルド・ソドル)は、素直に読めば、人間が肉体死して、中有(バルド)に行って、49日過ぎたら、恐怖に堪え切れず子宮を選んで再生してくるという物語。

そのプロセスの節目節目にニルヴァーナへの覚醒のチャンスやら、より高いものへの再生のチャンスがあることが述べられていて、とても親切な本ではある。そういう読み方をして、実際にチベットで人の臨終に立ち会い、今や死なんとする人の耳もとで、チベット密教僧が「眠るな、醒めていよ」と語りかけ続けるシーンがTVのドキュメンタリーとして放送されたこともあった。

しかし、実際に肉体死した後のあの世のことばかり書いているのであれば、ほとんどの人は、チベット死者の書は日常の生活や冥想修行には使えないと思うのではないだろうか。そこにチベット死者の書があまり世間で読まれない原因があるように思う。

肉体死から転生までの49日間において、ニルヴァーナに入る覚醒のチャンスやよりよい転生先を選ぶチャンスは何度もあって、それを強調するチベット死者の書はとても前向きな本である。

しかしながら、そこで何回かあるチャンスのうち、最初に見る原初の光(原初のクリヤー・ライト)が最初にして最大のチャンスであることがわかる。そのヒントは『無上の垂直道』という一語だけ。

そして原初の光に出会えば、いかなる中間状態をも通ることなく、『無上の垂直道』を通ってダルマ・カーヤ(ニルヴァーナ)を得る(チベット死者の書/パドマサンバヴァ/講談社P24-25)とある。

だが、冥想修行において、呼吸停止、脈拍停止から極く短時間らしい肉体死状態に際して、クンダリーニ上昇から中心太陽突入までが起こることもあることは知られている(ダンテス・ダイジ/ニルヴァーナのプロセスとテクニック)。その中で、アートマンが中心太陽に向けて垂直道を上昇するシーンがあるが、これを『ニルヴァーナへの無上の垂直道』(上掲書P109)と呼んでいると読む。

道教慧命経では、無上の垂直道ならぬ『妙道』をたどって真源なる中心太陽に突入し、粉砕される。無上の垂直道を見ているのは、チベット密教、クンダリーニ・ヨーガ、道教なのだ。

このようにチベット死者の書は、クンダリーニ・ヨーガなどにおける肉体機能停止状態におけるニルヴァーナ到達のルートを確証したものであると読むのが、本筋なのだろうと思う。

一旦ニルヴァーナ到達を目指すならば、天国を含めよりよい世界に転生するなどあまり意味はあるとは思えなくなるのではないだろうか。だから最初に訪れる原初の光のチャンスの意義を強調しているのだろうと思う。
コメント
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