バチカン市国(Stato della Città del Vaticano、the State of the Vatican City)は、イタリアのローマ市内にある、世界で面積が最小(44ha)の国家です。皇居の面積がおよそ115haですから、その33%、およそ3分の1ほどしかありません。しかし、この小国は、その中に行政庁、裁判所、放送局、鉄道の駅、ガソリンスタンド、スーパーマーケット、宿舎などがあり、聖職者や職員など1,000人ほどの国民もいます。
バチカン市国には、世界最短(路線延長300m)の国有鉄道(バチカン鉄道、Ferrovia Vaticana)があります。ピウス11世の在位中に、ローマ=ヴィテルボ線(Ferrovia Roma-Capranica-Viterbo)のローマ=サン・ピエトロ駅(Stazione di Roma San Pietro)での分岐から始まる路線と駅(Stazione di Città del Vaticano)が建設されました。列車は、ラテラノ条約によりイタリアの鉄道路線への乗り入れが認められています。
鉄道利用の大部分は貨物輸送で、時には旅客輸送を行うことがあります。1962年10月4日、第261代のローマ教皇「ヨハネ23世(Giovanni XXⅢ)」は、イタリア大統領専用列車を使ってバチカン駅からロレート(Loreto、バチカン市国が管轄する聖地で、世界的に有名な巡礼地として知られている。教会(Santuario della Santa Casa)内にはナザレの聖母の家(1294年に運ばれたといわれるイエスが生活した家(聖家))がある)とアッシジ (Assisi、聖フランチェスコの生地であり、彼の精神を受け継いだ聖フランチェスコ会の総本山がある) への巡礼の旅に出発しました。
会議などのためにバチカンを訪れる司教や枢機卿たちのための宿舎として「聖マルタ館(ドームス・サンクテ・マルテ、Domus Sanctae Marthae)」があります。ローマ教皇が亡くなると、次の教皇を選挙する会議(コンクラーベ、conclave)が開かれます。コンクラーベは、最近では2005年に第264代ローマ教皇の「ヨハネ・パウロ2世(John Paul Ⅱ、Giovanni Paolo Ⅱ、在位:1978年~2005年)が亡くなったときに開催されています。新教皇は、100人余の枢機卿によって選挙で選ばれますが、ヨハネ・パウロ2世によって建てられた「ドームス・サンクテ・マルテ」という宿舎で生活しながら、「システィーナ礼拝堂」での教皇選出会議に赴くことなりました。