POWERFUL MOMが行く!
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 2010年8月24日午後9時36分、乗客91人、乗員5人を乗せて中国の黒竜江省でハルビンから伊春(いしゅん)に向かった河南航空(現 鯤鵬航空(こんぽうこうくう))の旅客機(エンブラエル E190)は、濃霧に包まれ視界が200メートル足らずしかない林都空港に着陸を試み、墜落。死者42人、負傷者54人を出しました。

 中国では、「国内航空運送事業者の賠償責任限度額規定」で、航空機事故の賠償額は最高40万元と定められていますが、河南航空有限公司はこの旅客機墜落事故の犠牲者に対し、一人あたり96万元の賠償金を支払ったそうです。これは日本円に換算すると、ほぼ1200万円に相当することになります。

 林都空港は山間部に位置し、地形や気候などの要因から、離着陸の難しさが指摘されており、濃霧の発生などで、特に夜間は離着陸には危険を伴うと言われていたそうです。中国南方航空は、伊春空港では原則、夜間の運航をしないとリスク管理を行なっていたそうです。

 それから11か月経った、2011年7月23日午後8時34分頃、乗客558名を乗せた北京市北京南駅発の福州駅行きの中国高速鉄道の列車(CRH2E)が落雷によるトラブルで運行司令室から「車両走行の停止」の指令を受けて停車していた列車に時速120km近くで激突し、先頭車両の4両が高さが20メートルほどある高架橋から転落。死者40人、負傷者200人以上を出しました。

 多数の犠牲者を出した高速鉄道事故といえば、13年前の鉄道事故が思い出されます。

 1998年6月3日午前11時頃、ドイツのニューザクセン州エシェデ村で、14両編成、乗客約300人を乗せたドイツ鉄道の高速列車「インターシティ・エクスプレス(ICE)」が時速200kmで走行中、機関車に連結していた1両めの客車の車輪が破損。それを引き金として後続する車両とともに脱線転覆、一部の車両が道路橋脚に激突。死者101名、負傷者200名を出しました。

 多数の犠牲者を出した鉄道事故を中国に限定すれば、2008年4月28日午前4時38分に、山東省淄博(しはく)市王村駅付近で起きた列車衝突事故があります。北京発四方行きの列車が速度超過で脱線し上り線を塞いだところに、煙台発徐州行きの列車が衝突したものです。72名が死亡し、400名以上が負傷しました。

 このときに列車運行の総責任者としての責任を問われ降格をされて左遷されていた「安路生」(上海鉄道大学卒)という人物が今回の温州市で起きた高速鉄道事故の管理責任を問われて更迭された上海鉄路局の局長の後任に任命されたそうです。事故から3年ほどしか経たずに注目を浴びる役職に就くというのは、1度の事故で埋もれさせたくないほどに優秀であるか、ほかに事故処理に手腕を発揮できる優秀な人物がいないか、上からの覚えが目出度いか、、、

 山東省列車衝突事故では、事故から3年経っても負傷者への賠償問題は進展していないのだそうです。死亡者への賠償金が20万元(約240万円)であり、負傷者への賠償金はそれを上回ることはなく、後遺症を負った被害者は治療費用が賠償金を大きく上回り、経済的に追い詰められているのだそうです。

 この山東省の事故の死亡者の40%ほど、負傷者の20%ほどが任意保険に加入しており、死亡者に支払われた保険の最高金額は50万元だったようです。中国を旅行するときは、確実に旅行者保険(海外旅行保険)などの「短期保険」にも加入しておくことが必須のようです。例えば、傷害死亡・後遺障害の最高額を5,000万円、治療費用の最高額を2,000万円、行き先を「中国」とし、期間を1週間とすると、3,000円ほどの出費になります。

 温州市の高速鉄道事故では、真相究明や責任追及を強く求める遺族に対し、事態の早期沈静化を図ろうとする思惑から、当初遺族に対する賠償金の基準額を50万元としていたものを91万5000元(約1100万円)へと大幅に増額したようです。

 いままで、ある程度の時間が経過すると、当局批判をする者たちへ「沈黙」を強要する中国社会にあって、今回はメディアもまだ沈黙を始めていません(追記 7月30日配信の読売新聞の記事によると、中国当局は報道規制の強化に乗り出したようです。タブロイド紙「新京報」が7月30日付の紙面の大幅差し替えを命じられ、新華社通信の記事だけを掲載することになったほか、中国共産主義青年団(共青団)の機関紙「中国青年報」も事故絡みの記事を一切掲載しなかったそうです。他の有力全国紙も新華社の記事だけを載せ、事故の情報は突如途絶えたようです)。2007年に運行が始まり、わずか4年で総延長が1万キロにも達した高速鉄道網の建設で、安全性が置き去りにされたのではないかとの疑念はすでに大衆が共有していたものであったのです。そういうことからは、今回の高速鉄道列車追突事故は、「予告」されていたのです。

(参考) 「中国の高速鉄道列車事故 - 中国のメディアは権力にやがて屈服するのか。

 中国の高速鉄道にも、列車同士が一定距離以上に近づくと強制的に減速させ、停止させる自動列車制御装置が装備されているのだそうです。当然といえば当然なのですが、報道によると、落雷によりシステムが作動しなくなったので、その自動制御装置を解除して、運行していたのだそうです。

 システムの復旧までは、列車を走行させないか、少なくとも通常の走行速度よりは格段にスピードを落として走行させるべきをそうはしなかったことが信じられません。

 「安全」という意識が希薄なのでしょうか。

(追記 中国国営の新華社通信によると、列車追突の主因である「自動列車制御装置が機能しなかった」原因について鉄道省幹部が言及したそうです。それを時系列で並べてみると、
(1)落雷の影響で温州南駅の信号設備が故障した。
→(2)やがて追突されることになる先行列車は正常運転をしていたが、信号設備の故障で、その列車に搭載された機器が正しい運行情報を受信できなくなった。
→(3)正しい運行情報を受信できなくなった列車は事故現場の約2km手前でいったん停車した。
→(4)やがて、(運行管理の担当者の指令に従って列車運行を自動から手動に切り替えたであろう)この列車は時速約20kmで徐行運転を再開した。
→(5)運行管理センターのデータ収集システムのプログラムに設計上の重大な欠陥があったために、やがて追突することになる後続列車に赤信号を発信すべきところ、青信号を発信した。
→(6)低速で走行していた先行列車に後方から通常速度で運転していた後続列車が追突した。)

(疑問 「フェイルセーフ(fail safe、システムには必ず故障が発生するということを前提にし、故障が発生した場合に常に安全側に作動する工夫を施すこと)」の設計になっていなかったのはこれだけなのだろうか。先行するはずの列車が後続するはずの列車に追突をしたことに対する説明がないのはなぜか。これで幕引きとなってしまうのでしょうか。)

(参考) 「中国の高速鉄道列車事故 - 信号システム以外に潜む、安全を脅かすもの。

 2001年3月18日午前0時46分、台湾第3 (馬鞍山) 原子力発電所の1号機で、送電線からの電源が同時に喪失し、更に緊急用ディーゼル発電機がうまく作動しないという事態が発生し、「発電所外および内の全ての電源を喪失」するという事態が起きます。前日17日の高圧線の故障が原因で運転停止中だったため、外部への放射能漏れはなく、周辺住民および環境への影響はなかったといいます。

 原子力発電所を運用するには、最悪は炉心溶融を引き起こす「電源喪失」に対して幾重にも安全対策を講じておかなければならないのですが、その対策を十分に講じなかったことで引き起こされた「福島第1原子力発電所」の放射性物質の漏洩事故を起こした日本が、「安全性よりも経済性を優先させた」と、日本が技術供与した高速鉄道の列車を走らせている中国を非難できないことが残念でなりません。

(参考) 「中国の高速鉄道列車事故を考える。命の値段は中国では安いのか

(参考) 「中国の高速鉄道列車事故 - 予告されていた大惨事を起こした責任は

               (この項 健人のパパ)

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