POWERFUL MOMが行く!
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 アメリカの法律家(弁護士、法学者、裁判官、検事など)の約半数が加盟(加盟は任意)しているアメリカ最大の全国的な法律家の組織に「アメリカ法曹協会(American Bar Association、ABA)」があります。そのABAが運営する サイト によれば、“Nearly every state has an ethical rule that calls upon lawyers to render pro bono services.”(ほぼ例外なくすべての州に、弁護士に、「プロボノ」による奉仕を求める倫理規定がある。)“For those states in which the ABA Model Rules of Professional Conduct have been adopted in whole or part, the pro bono responsibilitiy is usually defined in Rule 6.1. ”(アメリカ法曹協会の弁護士行動準則模範規程が(全部または一部)採用されている州では、「プロボノ」の義務は、“Rule 6.1”で通常定められている。 )とあります。

 この“Rule 6.1 - Voluntary Pro Bono Publico Service”では何が定められているかを冒頭部分だけを拾ってみましょう。“Every lawyer has a professional responsibility to provide legal services to those unable to pay.”(弁護士はみな、弁護士費用を支払うことができない人々に法律家としての労務を提供する職業上の義務がある。)“A lawyer should aspire to render at least 50 hours of pro bono publico legal services per year. ”(弁護士は、1年間に少なくとも50時間の「プロ・ボノ・プブリコ」による法律家としての労務を喜んで提供しなければならない)。

 “pro bono”(プロ・ボノ)は、“pro bono publico”(プロ・ボノ・プブリコ)を縮めたもので、ラテン語です。その意味は、“for the public goodness”(公衆への善行として)ということになるのでしょう。ここには「無償で」という意味は含まれませんが、“to those unable to pay”(弁護士費用を支払うことができない人々に)と言っているのですから、「無償」を前提とすることになります。無償での奉仕活動と聞けば、ボランティア活動が思い浮かびますが、「プロボノ」は、単純な労務を提供するのではなく、専門的な、自分が日常、職業として行なっている労務を無償で提供する「ボランティア活動」ということになります。

 弁護士3,900名ほどが会員となっている「第二東京弁護士会」には「会員の公益活動等に関する会規」があり、その会則で、所属する弁護士には、年間10時間以上の「プロボノ」が義務付けられています。この義務が果たせないときは、不足分の時間に5,000円を乗じたものを弁護士会に納入しなければなりません。

 最近では、「プロボノ」活動に従事する人の職業が、弁護士以外にも広がっているのだそうです。職種が拡大したきっかけは、「サービスグラント(Service Grant)」というマッチング・システムを構築した「タップルート財団(Taproot Foundation、2001年にアメリカのサンフランシスコに設立されたNPO)」です。“grant”は名詞として「助成金」という意味がありますが、動詞として使って、“grant a request”と言えば、「願いを聞き入れる」という意味にもなります。“We have designed the grant-making process for our Service Grant Program to address your needs and assess your fit and readiness for one our Service Grants.

 日本には、専門家としてのボランティア活動の「需要」と「供給」をマッチングする中間支援型NPOとして、2005年1月に活動を開始した「特定非営利活動法人 サービスグラント」(東京都渋谷区渋谷1-6-3)があります。そのサイトには、「サービスグラントは、プロボノワーカーとNPOをマッチングすることで提供される約6ヵ月間の「プロジェクト型助成」です。サービスグラントとは、NPOに対して「お金」を支援する助成金(グラント)と異なり、「スキル」や「ノウハウ」を提供することによってNPOを支援する「プロジェクト型助成」です。」とあります。

 プロボノ活動として「専門家としての労務」を提供していいと考える人は、この「サービスグラント」に登録をします。また、専門家としての労務を提供して欲しいと考える団体は「サービスグラント」に助成申請を出します。サービスグラントは、助成申請を審査して、「採択」を決定すると、登録されているプロボノワーカーの中から、適材となる人たちを選択し、プロジェクトチームを編成します。プロジェクトチームは、4名から6名で編成されています。

 具体的な活動を2010年7月1日にNHK「クローズアップ現代」で放送された「プロボノ~広がる新たな社会貢献のカタチ~」からみてみます。「プロボノワーカー(専門的知識を有し、プロボノ活動を希望し登録した人たち)」による支援を要請したNPOは、「NPO法人 日本アレルギー友の会」でした。日本アレルギー友の会は、「喘息やアトピー性皮膚炎で悩む方々を支える患者の会です。セルフコントロールをするための情報提供や、ピアカウンセリング(仲間同士の相談)を通じて、みなさまが前向きに自分らしく生きることができるようにサポートをしています。わたしたちもみなさまと同じ患者です。これまでに蓄積した経験と知識を活かして患者の現状や様々な情報を発信することで、「患者」と「医療」と「社会」をしっかりとつないでい」くNPO法人です。

 しかし、会員数が伸び悩み、その理由のひとつが「見づらいホームページ」だと考えていました。どう改善したらいいかわからず、長い間そのままにしていた、といいます。「プロボノ」活動に参加した6人の中にはホームページ制作会社のプロジェクトマネージャーがいて、彼を中心にした、ホームページのコンセプト作りが行なわれます。アレルギーに悩む患者への聞き取り調査で、「悩みを共有したいという患者たちの思い」を探り当て、「悩みを共有し、前向きに生きようというメッセージ」を発信するホームページを作り上げます(日本アレルギー友の会のサイトの「このサイトについて」というページには、「2010年のリニューアルは、特定非営利活動法人サービスグラントの助成によって行われました。」というコメントが入っています)。



 落語に「三方一両損」という言葉があります。3者(3両拾った拾い主の左官金太郎、落とし主の大工吉五郎、奉行大岡越前守)がそれぞれ1両ずつ損をして、紛争を解決する話です。「プロボノ」は、要望の解決に「三方一両得」ということになるのかも知れません。この仕組みは「サービスの受益者」であるNPO(Nonprofit Organization、非営利団体)、「サービスの提供者」である専門家(expert)、そして「活動資金の提供者」の三方に利益をもたらすことになります。

 無償の、質の高いサービスを受けるNPOが利益を受けるのは当然ですが、休日や帰宅後の時間などを利用して無償でサービスを提供する者も「会社」ではなく「社会」から評価されるといった自身の仕事へのポジティブなフィードバックが期待でき、また活動資金を提供する者も効率的な資金の運用が果たせるのです。企業の中には、プロボノ活動と企業の社会貢献を結び付けようとするところも現れているようです。従業員に就業時間内に「プロボノ活動」をすることを認めるなどするのです。

 「プロボノ」活動が日本では6年ほどと日が浅いために克服すべき課題は数多くあると思いますが、「三方一両得」になるように日本で順調に発展していくことを望んでいます。2011年2月11日に配信された産経新聞の次の記事に触発されて、幾度か耳にし目にした「プロボノ」に関して、この記事を書いてみました。

 コンピューター企業のソフト開発、金融機関の財務管理…。民間企業の社員が仕事で培った経験や知識を生かし、NPO(民間非営利団体)などを支援するボランティア活動「プロボノ」が浸透してきた。利益ばかりを追求する働き方を見直す機運の高まりなどが背景にある。企業が組織的に後押しする動きも出ており、社会貢献活動の新しい形として認識され始めた。

 「ベンチャー企業の志が刺激になった」 「自分の仕事が形になり感動した」

 NECが今月、プロボノで支援した企業2社を招いて開いた会合。出席したNECの若手社員は、支援先から活動報告を聞かされると一様に目を輝かせた。
 NECは昨夏、プロボノチームを作った。メンバーは若手中心の15人
(NECの「NEC社会起業塾」のページ)。支援先の1社は、採血による健康診断事業を首都圏で展開するケアプロで、もう1社は農業の収益性向上に向けて高糖度トマトを生産・販売するオリザ(オリザのサイトには「このウェブサイトは、NEC社会起業塾ビジネスサポーターのプロボノによって提供されました。」というコメントが入っています)だ。それぞれ医療と農業の構造問題解決を目指す社会起業家が作ったベンチャー企業だ。
 NECはケアプロの顧客情報をデータベース化。診断結果を時系列でグラフ化し、健康状態に応じて診療所を紹介する携帯電話向けプログラムも作った。4月から本格稼働し、ケアプロの川添高志社長は「顧客や広告収入の増加につなげたい」と意気込む。
 オリザ支援では、休日に栽培現場を訪れ、農業専門家にも取材してホームページを刷新。NEC側責任者の小林義明氏は「仕事で接点のなかった農業政策の問題を共有できた」と語る。
 2000年代以降、欧米で広がったプロボノは、金融機関などの「金もうけ主義」への反発もあって拡大し、日本でも注目されるようになった。希望する個人をNPOなどに仲介する特定非営利活動法人「サービスグラント」(嵯峨生馬代表)
(「嵯峨生馬」氏については、シブヤ大学の先生紹介ページで)の昨年の登録者数は約650人と、前年の2.5倍に急増している。
 最近は企業も積極的に参加。ゴールドマン・サックス証券が女性社員中心のチームを作って教育・子育て関連のNPOの財務の見直しを支援している
(ゴールドマン・サックス証券の「社員参加型の社会貢献活動‐プロボノ・プロジェクト」のページ)ほか、日本IBMも教育関連のNPOを支援している(日本IBMの「社会貢献‐学校/教育関係者とのコラボレーション」のページ)
 企業側にすれば、社員のやる気を引き出すと同時に取引先開拓やイメージアップも期待できる。サービスグラントの嵯峨代表は「寄付など従来の社会貢献事業を一歩進めた新しい形のボランティアで、地方にも広げたい」と話している。


               (この項 健人のパパ)

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