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 世界保健機関(WHO)は、2010年8月10日、専門家による緊急委員会を「遠隔会議」によって開催し、新型インフルエンザ(A/H1N1)の流行段階は、パンデミック警戒レベル「フェーズ6」から「ポスト・パンデミック」期に移行していると発表しました。

 The world is no longer in phase 6 of influenza pandemic alert. We are now moving into the post-pandemic period. These are the views of members of the Emergency Committee, which was convened earlier today by teleconference.(WHO“H1N1 in post-pandemic period”)

 この「発表」を見て、今回の新型インフルエンザの「パンデミック」について総括してみようと思います。私は、2009年9月8日のブログ記事「インフルエンザに罹ったらそれは「新型AH1pdm」と見ていいのか」で、次のように書きました。

「季節性インフルエンザと新型インフルエンザで症状の違いはないの?」
「ないね。インフルエンザだから発熱をするのは共通だしね。38℃以上の熱が出るし、咳は出るし、のどは痛いし、頭痛はするし、鼻水は出るし、というのは同じさ。吐き気や下痢、筋肉痛というのは必ずしも伴わないそうだけれどね。」
「それじゃ、どっちに罹ったのかわからないわね。」
「ただね、東北大学の先生がね、新型の流行でA香港型とAソ連型は、ほぼなくなるだろうという予測をしているんだよ。」
「ということは、、、どういうこと?」
「これからインフルエンザに感染すると、そのほとんどが新型インフルエンザだということだね。」
「100パーセント?」
「そこまでは言えないと思うけど、、、」(引用終わり)

 この予測は外れたようです。パンデミックの当初は、新型インフルエンザH1N1が他の型を押し退けて優勢でしたが、現状では、多くの国から、他の型も併存していることが報告されており、新興勢力の新型インフルエンザも時の経過とともに季節性インフルエンザに降格されてしまったようです。

 During the pandemic, the H1N1 virus crowded out other influenza viruses to become the dominant virus. This is no longer the case. Many countries are reporting a mix of influenza viruses, again as is typically seen during seasonal epidemics.

 2009年8月27日のブログ記事「インフルエンザワクチンの安全性と有効性の壮大な臨床試験が」で、次のように書きました。

 「インフルエンザの予防接種を受けた後に、発熱やショック症状、肝機能障害などの「副反応」とみられる症状を起こす人は、日本では、年間100人から150人ほど。この「副反応」の発症例は、分母(接種を受けた者)がいくつか不明です。分子(「副反応」の発症者)もすべてが報告として上がってくるとは考えにくい。1万例をサンプリングしたところ、100例ほどあったとする報告もあります。これだと、副反応がでるのは1%ほど。症状は発熱が最も多く、次いでショック症状、肝機能障害、浮腫、ぜんそくなど呼吸器症状、注射部位のはれ、発疹の順となっています。「副反応」を起こす年齢層は、10歳未満と70歳代が多いそうです。予防接種後に心肺停止や、肝不全などで死亡する例は、年間5人前後だそうです。

 数ヵ月後には、世界ほぼ同時にインフルエンザワクチンが接種されることになります。インフルエンザワクチンの有効性が世界規模で検証されることになります。ワクチン禍が起こる確率(安全性の問題)とワクチンの有効性をめぐって、壮大な試験場に世界はなるのです。過去の例によると、予防接種後に心肺停止や肝不全などで死亡する人は、5300万人に接種が行われたとすると、およそ18人になります。輸入ワクチンを用いると、これを「少なくとも18人」という表現にすべきかも知れません。ワクチンによって重症化せずに命を救われる人たちがこの数百倍ほどもいたとしても、この数字を日本人は冷静に受け止めることができるのでしょうか。」(引用終わり)

 今回のWHOの報告は、次のように述べます。「今言えることは、われわれはただ運がよかったのだ。パンデミックの間、新型インフルエンザウイルスが毒性の強いものに変異することはなかった。タミフル耐性を持ったウイルスが広く拡大することはなかった。ワクチンはウイルスにうまく適合して有効であり、極めて安全性の高いものであった。」 

 This time around, we have been aided by pure good luck. The virus did not mutate during the pandemic to a more lethal form. Widespread resistance to oseltamivir did not develop. The vaccine proved to be a good match with circulating viruses and showed an excellent safety profile.

 2009年11月27日のブログ記事「「新型インフルエンザウイルス」に「抗原シフト」は起こったのか? 」に次のように書きました。

 「ウイルスの突然変異には、その変異に2種以上のウイルスが関与するか否かで「不連続変異(抗原不連続突然変異)」と「連続変異(抗原連続突然変異)」に分類されます。連続変異(抗原ドリフト(antigenic drift)、「ウイルスの小変異」)は、ウイルスの核酸がその構成要素の塩基で1単位で変異を起こすものです。ウイルスの内部には核酸が入っていますが、それを構成する塩基はアデニン (A)、グアニン (G)、シトシン (C)、ウラシル (U)です。その核酸を構成する1つの塩基が例えば、もとはAであったものがGに変わってしまうのです。

 変異が起きた部位が偶然にもウイルスの「感染性」や「毒性」に関わる重要な部位であった場合にはウイルスの性質が大きく変わることになります。また、この連続変異の起こる頻度は大きく、変異の積み重なりでウイルスの性質を大きく変えることもあり得ます。その結果、「ワクチン」が効かなくなることにもなります。

 不連続変異(抗原シフト(antigenic shift)、「ウイルスの大変異」)とは、例えば、人体内で2種のウイルスが1つの細胞に同時に感染すると、細胞内では合成されたウイルス遺伝子やタンパク質が混ざり合い、結果として元のウイルスとは異なったウイルスが新たに生じることをさします。この場合は、「ワクチン」の有効性は完全に失われます。」(引用終わり)

 これも「杞憂」だったようです。「杞」の国の人のように、天が崩れ落ちてしまわないかと「憂」えて(心配して)しまったのです。しかし、WHOの報告は、次のようにも述べます。

 Pandemics, like the viruses that cause them, are unpredictable. So is the immediate post-pandemic period. There will be many questions, and we will have clear answers for only some. Continued vigilance is extremely important, and WHO has issued advice on recommended surveillance, vaccination, and clinical management during the post-pandemic period.(パンデミックを引き起こしたウイルスも、パンデミックの今後も予測ができない。引き続くポスト・パンデミックも予測ができない。多くの難問が生じるであろうし、明確に答えの出せるものはそのほんの一部に留まってしまうであろう。引き続き警戒を続けることが極めて重要になり、WHOとしてはポスト・パンデミックの時期もサーベイランス、ワクチン接種、臨床像の把握を勧める。)

 2009年5月26日のブログ記事「新型の「インフルエンザA」はタミフル耐性を獲得しはしないか」に次のように書きました。

 「世界各国における「耐性株(oseltamivir-resistant influenza virus)」の発生頻度は、2007年後半~2008年3月期には16%だったものが、2008年4月~9月期は44%になり、2008年10月~12月期は92%となって、耐性株が急速に世界中に広がっているのだそうです。

 今シーズン(2008~2009年)の流行の主流は、A/H1N1ウイルスで、「タミフル」耐性のA/H1N1亜型(ソ連型)インフルエンザウイルス(昨シーズンは耐性がなかった)が全国的に蔓延していたようです。「迅速診断キット」でA型インフルエンザと診断された患者の60~70%はタミフル耐性のA/H1N1ウイルスに感染していたそうです。

 今回の「インフルエンザA(いわゆる「新型インフルエンザ」)」は抗インフルエンザウイルス薬が有効のようです。季節性のインフルエンザの一部が「耐性」を持つようになったことから、抗インフルエンザウイルス薬である「タミフル」の有効性に疑問符が付き始めています。「タミフル」の効く「インフルエンザA」と「タミフル」の効かない「オセルタミビル耐性Aソ連型インフルエンザ」のどちらを恐れるべきなのでしょうか。」(引用終わり)

 米科学誌「プロス・パソジェンズ(PLoS Pathogens)」電子版に掲載された「河岡義裕(東京大学医科学研究所、ウイルス学)」教授らのチームによる「フェレット」を使った動物実験による(“Characterization of Oseltamivir-Resistant 2009 H1N1 Pandemic Influenza A Viruses”)と、抗インフルエンザウイルス薬「タミフル」に耐性を持つ新型インフルエンザウイルス(H1N1)が、通常の新型ウイルスと同程度に感染拡大するようです。

 2008~2009年シーズンに「タミフル」耐性のA/H1N1亜型(ソ連型)インフルエンザウイルスが世界中に広がるまでは、タミフル耐性ウイルスは、広がりにくいと考えられていましたが、この動物実験がそれが誤りである可能性があることを確認したことになります。私たちは、重症化を防ぐ抗インフルエンザウイルス薬に頼ることができないのであれば、やはりインフルエンザに感染しないことを心掛けなければいけないことになります。

 2010年8月27日配信の医療介護CBニュースからです。

 政府は8月27日、世界保健機関(WHO)が新型インフルエンザの世界的な流行状況を「ポスト・パンデミック」と宣言したことなどを受け、「新型インフルエンザ対策本部」の廃止を決めた。新型インフルエンザに対しては、通常の感染症として対応する体制に切り替える。

 ただ、国内での再流行の可能性があるため、厚生労働省は国民への情報提供・広報やワクチン接種などの対策に引き続き万全を期すとともに、政府としては高病原性の鳥インフルエンザが発生した場合に備え、水際対策や医療提供の体制整備などについて検討を行う。


 まだまだ、家族と自分を守るための感染症との闘いが続きます。まずは、情報の収集からです。

               (この項 健人のパパ)

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