1998年5月。
iMacがこの世に登場した時の衝撃は、今でも忘れられません。
ボンダイ・ブルーとホワイトの爽やかなカラーリング。今まで見たこともなかったトランスルーセントの透明ボディ。
世のプロダクトデザインの潮流を一変させた驚きのデザインは、APPLEの復活を、そしてスティーブ・ジョブズの再臨を、強く印象付けたのです。
APPLEのiCEO、そしてCEOへと戻った後も、残酷なカリスマとしての強烈な存在感は変わることなく、不屈の精神力と破壊的なまでの情熱により、世界に数々の変革をもたらしました。
ジョナサン・アイブとの強力なタッグで生み出されていくその後のAPPLEプロダクトは、徹底した素材の吟味、ミニマルの極地ともいえる要素の削減、シンプルを追及することで本質を際立たせるといったアプローチを駆使し、完成した製品から醸し出される上質な気品は、アメリカ的でもイギリス的でもドイツ的でもない、むしろ和の要素を感じさせる、静かで力強い存在となりました。
それは間違いなく、ジョブズの体に沁み込んでいる禅の心が生み出した、削ぎ落としの美に他なりません。
その美意識を世界の人々へ理解させるために、鬼人へと変わることもできるクレイジーなジーニアス。
彼の居なくなったこの世界。
未来への歩みが、少しスローになったように感じられるのです。