Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

若者のすべて

2013年05月20日 | 1960年代 欧州


若者のすべて(Rocco e i suoi fratelli)

1960年 イタリア=フランス
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
製作:ゴッフリード・ロンバルド
脚本:ルキノ・ヴィスコンティ、パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ、
マッシモ・フランチオーザ、エンリコ・メディオーリ
出演:アラン・ドロン、レナート・サルヴァトーリ、アニー・ジラルド、クラウディア・カルディナーレ
カティーナ・パクシヌー、アドリアーナ・アスティ、シュジー・ドレール、ニーノ・カステルヌオーヴォ

イタリア南部の貧しい地域から、北部の大都市ミラノへ移住してきた兄弟たちの物語。
ボクサーとしてカネを稼ごうとジムに入った次男のシモーネと、三男のロッコ、その二人の間を揺れ動く娼婦のナディアとの
関係が核となって描かれています。

この3人の、変りゆくさまが実に見事なのです。
シモーネは、先に出稼ぎに出ていた長男に代わって一家を支える次男のはずなのに、マイペースでおだてにのりやすい単細胞。
ナディアに入れあげて、ボクシングのトレーニングにも身が入らず、カネをたかったり、盗みをしでかしたり、好き放題。

一方、三男坊のロッコは、おとなしくて、まだまだ大人にはなりきれていない様子。
家族で安アパートの一間に転がり込んだ頃は子どもっぽさをわざと出しているのか、椅子をぎっこぎっこ揺らしながら唄ったり、
朝食のコーヒーをフーフーしながら飲んでいるポーズが可愛いすぎる!のです。

すれっからしの娼婦であるナディアは、シモーネにもたかるように寄っていったのですが、突然姿を消し
数年後、偶然に出会ったロッコの優しさにひかれていきます。
客をとることをやめ、すっかりロッコ一筋になったナディア。まさに恋する乙女の表情。

ふたりの関係に嫉妬したシモーネは仲をひきさこうと、嫌がるナディアをロッコの目の前で無理矢理に犯します。
この事件を経て、シモーネはさらに荒れるようになり、深く傷ついたナディアはシモーネを軽蔑しながらも復讐するために寄り添います。
ここでは、典型的な悪女を演じるナディア。すっかり破れかぶれといったていで、この「演じてる」感じも、演じているのですよね。
ボクサーとしての立場も、惚れた女の心も奪われて、放蕩を繰り返すシモーネを、いつまでも赦すロッコ。
現実派の四男チーロに「聖人ロッコ」とまで言わしめるのですが・・・あまりに考え方が観念的。
シモーネも愚かだけど、ロッコもまた愚かだと思えます。

大勢で構想を練った脚本だけに、どのシーンも見応えがあってインパクトがありました。
原題は「Rocco e i suoi fratelli」ロッコと兄弟たち ですが、最初っからロッコが主役の設定だったのかなあ?
と疑いたくなるほど、途中からのロッコへの光の当て具合が急激に増したように思えます。
ヴィンチェ/シモーネ/ロッコ/チーロと、それぞれの兄弟の名前がついた回にくぎってあるし、もとは兄弟たちが
それぞれの立場で南北の貧困の差を感じていく物語だったのが、撮影の中でアラン・ドロンがロッコの役に入り込む
うちに、急成長を遂げたような気がしてなりません。

見終わった後は、どうにもうまくいかない現実に寂しさを感じるのですが、ラストシーンで五男のルーカがロッコの
ポスターをそっと撫でて去っていく姿に、心をやさしく撫でられるような感じがします。

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