手づくり

経済がドンドン「上げ上げ！」の時期に、使い捨て文化とでも呼べるような風潮が広まりました。便利であること。手軽であること。速いこと。…が、巷に溢れました。人間の手間を省くことが文明だとも言える日常が展開しました。ロボットが製造工程に取り入れられ、製品は大量に生産され、だから大量に廃棄される世の中です。人々の消費・廃棄のサイクルが速度を増し、大量消費・大量廃棄が習慣化していきました。哀しいけれど、そのさ中には、なかなかそれらを反省する機運と言うのは生まれませんでした。

私たちが、足を止めざるを得なくなったのは、放っておけばそれが環境を害していくのだということに気がついてからです。実際に環境が破壊され始めて、やっと気がついたわけですから、間に合うかどうかわかりません。でも一方で、消費が低迷すればするだけ景気は落ち込んで行きます。双方の舵取りのバランスを巧く操らなければなりません。振り子は一方に大きくふれすぎると、必ず逆側へ大きく振れ戻るはずです。

便利で手軽で安い品物が巷にあふれたことは私達の生活を、ある意味では豊かにしたのでしょうが、ある意味で生活の豊かさを失うことでもありました。そんな振り子のゆり戻しでしょうか。世の中に「手づくり」文化が広まりつつあるような気がします。手間をかけて愛情を注ぐ…ことの値打ちが再認識され始めたのでしょうか。物を買うだけでは満たされない心の隙間に気づき始めたということでしょうか。

ものをいとおしむ気持ちは、確かに人の心を優しくしてくれるような気がします。



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