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No1371『SYNCRONIZER』~生き物ゆえの不可解さと生々しさが全開~

人と人、人と動物との脳波を同期させたら、何が起こるのか。
予想外の展開に驚かされた。
万田邦敏監督の最新作。大阪で見逃したので、神戸映画資料館へ。
監督名以外、事前知識はゼロ。

冒頭、動物と人間の脳波を同期させたら、という字幕が流れ、
どんな映画かなと思う。
ネズミの脳波と自分の脳波を同期させた主人公の研究者の青年が
スナックを食べる。
ネズミのようにカリカリ、くどいくらいに噛み続ける姿に
なんだかクスリと笑ってしまった。
同期って、そういう感じなのかなあと微笑ましく観ていたら、
いつの間にか映画は思わぬ方向へと暴走していき、まさに狂気。
面白かった。

しかも、終わり方の、なんて思い切りのいいこと。
変に問題を解決させることなく、唐突に、でも、
いくとこまでいっちゃった感、満載なので、むしろ爽快。
見終わって、ここまですがすがしい気分になったのは久しぶり。

悲劇的なんだけど、そうでもなくて、
狂い方が半端でないし、
あちこちにきちんと伏線が張られていて、
終わりに向かって、一直線に
つき進んでいく感じがするから、
意外な展開も、どこか楽しめ、
むしろここまでやるかと驚きながら、堪能できる。

人と人との脳波を同期させたら何が起こるのか。
研究者の青年と、後輩の女性研究者が、いつしか恋人になる。
なんかベッドシーンが安易に繰り返されるなあと思っていたら、
これはしっかり前振りになっていて、
脳波を同期させた青年と、相手の息遣いが合っていく感じが、
まるでセックスを思わせ、なるほどと思った。

主人公の青年が認知症の母親の身体をタオルで拭く時、
身体を拭こうとして、上衣の胸元のボタンを脱がせることに
ふとためらい、服の下に手を入れて、身体を拭く。
老母の裸体の胸を見ることを避けるぎごちなさが妙に気になった。
と同時に、息子に身体を拭いてもらって、
気持ちいいという老母の声がなんとも艶めかしかったりして、
どうも変と思うと、いつのまにか、すごい展開になっていく。
なんとも、この映画は、
科学というよりも、生き物ゆえの人間の不可解さ、生々しさを
ユーモアも交えて、そのまま差し出す感じ。

凡庸に見えた主人公がどんどん狂うにつれ面白くなっていく。
最後の女性の神々しさは、見事というほかない。

映画を観ながら、山田太一さんの小説「飛ぶ夢をしばらく見ない」とか
「異人たちとの夏」とかを思い出していて、なんとも不思議な余韻に包まれた。
これは、ちょっと映画館でぎゅっと集中して見てほしい映画。

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