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No1258『ディオールと私』~物づくりの現場の緊迫感と充実感~

パリ・コレの直前8週間、
デザイン、縫製、ショーまでの現場に密着したドキュメンタリー。
真剣にぶつかりあう人と人、
何十年もの経験を積んだプロフェッショナルなお針子さんたちが
なんとも魅力的で、緊迫感あふれる充実した90分。

2012年4月、クリスチャン・ディオールの
デザイナーに新しく就任したのは、ラフ・シモンズ。
ベルギー人で、男性ブランド出身、
オートクチュールは未体験という大抜擢。

舞台は、パリ、モンテーニュ通りのディオール本社。
最上階には、オートクチュールのドレスをデザインするアトリエがあって、
大勢のお針子さんたちが働いている。

40年以上も働いているベテランも多く、
皆、個性的で、すてき。
フロランスさんとモニクさんが職長さんとして、
全体をまとめていて、
二人とも相当お年だろうけど、愛嬌もあって、
きびきびして、プロフェッショナル。

ディオール自身は57年に亡くなっているが、
ディオールの幽霊が、今も夜中に出てくるとか、
私達を見ているとか、
今も、ディオールのために働いているとか、
誇り高いお針子さんたちの姿は、すがすがしい。

無理な注文を出されて、さすがにへこんで、
「疲れてるの?」と仲間から心配されたり、
「こういう時はお酒じゃなくて、ボンボンよね」って、
にっこり笑って、チョコを口に放り込んだり、
ショーの前日、夜中までスパンコールを縫い付けたり、
大変だけど、生き生きしている。

ラフ・シモンズは、ちょっとふけ顔だけど、
味のある魅力的な顔で、
ベテラン相手に、最初は不安げだけれど、
自分がいいと思ったデザインを貫くため、
最後まで諦めないと言い切ったり、
僕は、我慢する方だけど、もう我慢できないと、
会社の事務方の女性に切れかかったり、
カメラが苦手で、
本番のコレクション直前、
無数のカメラの前に立つと僕は必ず失神するから、
絶対前には立たないよ、と宣言したり、
シャイな感じがいい。

映画のすてきなのは、
こういう現場で働いている人たちの、悲喜こもごもを垣間見れること。
こういう映画を観ると、
やっぱり、職人になりたかったなあと思う。

修羅場を何十回も乗り越え、
大変な目をしながらも、
充実感に満ちた本番の体験がある。。。
こういう生き方にあこがれる。

といいつつ、人一倍、緊張感にも本番にも、人前に立つのにも
めっぽう弱いのですが、、、 

映画を観ているのは90分ほど。
でも、この90分の間に、すごいドラマがある。
それは、映画の中の世界の人たちのものなのだけれど、
ちょっとだけ、果てしのない充実感に触れる。
この体験の濃さは、
小説でも、ライブでも、音楽でも、同じかもしれない。

 

(C)CIM Productions

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