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No397『眠狂四郎 勝負』~屋台のかけそばをすする狂四郎~

東大阪で頑張ってる地元シネコン、布施ラインシネマでの上映。
日本映画名作アンケート投票で圧倒的多数を占めたのが市川雷蔵さん。
上映作品は、本作と『朱雀門』のわずか2作品だが、
嬉しかったので、先週、早速、足を運んだ。

眠狂四郎シリーズ第2作目。1964年作品。
同じ三隅研次監督作品でも、
私の大好きな『眠狂四郎 無頼剣』が静寂に包まれた傑作ならば、
こちらは、少し愉快な異色作。

狂四郎がふとしたことで親しくなる老人を演じるのが加藤嘉。
『砂の器』はじめ、深刻な役柄で印象的な役者さんだが、
ここでは、ひょうひょうとした感じで好演。
歯が抜けた爺さんで、声も大きく、風采は上がらないが、
実は、幕政改革を目指す勘定奉行という役どころ。
加藤と雷蔵が、なぜか、妙にいい感じのコンビになっていて、
ほんわかしている。
雷蔵も、変な老人に慕われて、戸惑いながらも
少しなごんでいる感じがあり、観ていて楽しかった。

二人が、吉原の寺の裏の屋台のそば屋で、夜、
かけそばを食べるシーンがいい。
熱いそばをかきこみ、そば屋の娘と話す雷蔵に
思わず見入ってしまった。
外に出たら雪。
雷蔵を狙ってやってきた刺客を前に
そば屋の娘に「目をつぶっておけ」という。
(こんなセリフを聞くたびに
『丹下左膳余話 百万両の壷』で大河内伝次郎演じる左膳が
刺客と一騎打ちする前に、傍らにいた少年に
「坊や、目をつぶって十、数えるんだよ」という
やさしい言葉を思い出す)

もう一つ印象的なシーン。
銭湯の湯船につかっている雷蔵の前に、
いきなり一人の刺客が現われる。
「刀がなくては、さすがの狂四郎も勝てまい」と
ほくそえむ相手を前に、
上半身裸の雷蔵がたじろぐ・・。
これは
昨年公開の『イースタン・プロミス』で
サウナで殺し屋に襲われ、
全裸のまま格闘したビゴ・モーテンセンと同じだと思っていたら、
なぜか、雷蔵は湯船の中から刀を出して、ばっさり。
刀が出てきたわけは、後で知らされるが、
かなりどきどきした。

敵方に捕われた藤村志保が、
枯れ野原の向こうの木に十字に貼り付けになっているシーンもあった。
いつもながらの雷蔵のニヒルな表情も楽しめるが、
やっぱり風変わりな作品だと思う。

末尾ながら
湯船から刀が出てきたわけは
藤村志保が敵方を裏切って、
女風呂から雷蔵に刀を手渡したのでした。
当時、男風呂と女風呂の湯船は、壁で仕切られていたものの
湯船の下のほうではつながっていたという設定でした。
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