いきなり入院して、鞄に中に入っていたのは、習っているジャズピアノのプリントのほか、ポール・ギャリコの「スノーグース」という文庫本一冊だけでした。
検査を待つ間や、入院中、元気な時に、少しずつ読みました。薄い短編集でちょうどよく、それぞれの短編に読みごたえがあって、どれも目頭が熱くなるものばかりで、偶然に感謝です。
「ルドミーラ」は、スイスの山奥で、小さな牝牛に起きた奇蹟のお話です。
乳が全然 . . . 本文を読む
以前、ご紹介した漫画「BLUE GIANT」の続編。主人公の宮本大が、日本の仲間たちと別れ、ひとり、ドイツに渡り、ジャズを始める。
このシリーズ、やはり、前半がとりわけよい。ドイツ語もろくにしゃべれない大がまだ誰とも出会わず、練習場所を見つけるのにも苦労し、ひとりでがむしゃらにジャズ道を突き進んでいこうとする。
そんな大の熱い姿をそっと見守ったり、さりげなく手を差し伸べる大人や同輩たちの姿がい . . . 本文を読む
12月後半に、職場で同僚だった後輩の女の子から、「BLUE GIANT SUPREME」の漫画(全巻11巻)貸してもらった。毎日1冊ずつ読むつもりで、1巻、2巻と大切に読んで、どれも泣けた。でも、忙しすぎる日は、読むことができず、あっという間に年末となり、結局、31日の晩に一気に3巻まとめて読んで、読了。
「BLUE GIANT」(感想はこちら→https://blog.goo.ne. . . . 本文を読む
長くつ下のピッピや、カッレくんで有名なアストリッド・リンドグレーンの作品。
河合隼雄さんが、リンドグレーンの中では、この作品が好きだと書いておられて、図書館で見つけたけれど、なかなか読めないまま、何度も借りなおして(笑)、やっと読み始めたら、今日、一気に読了した。
すばらしかった。。。病気で、ずっと寝たままの弟カールは、優しくて明るい兄ヨナタンを慕っている。お兄さんは、町の人気者。
弟のモノ . . . 本文を読む
河合さんに、小川洋子さんの『ミーナの行進』を読んでほしかったなあと思う。ミーナが行進している姿を見てほしかった。カバのポチ子に会ってほしかった。
標題は、まさに、今、私が探しあぐねていること、そのもので、私は、自分の物語を探している。この本は、だいぶ前に買っていたから、再読になる。河合さんが倒れる前、2005年と2006年の2回の対談と、2007年に亡くなられたあとに書かれた小川洋子さんの長いあ . . . 本文を読む
休業要請で、休館だった、職場近くのショッピングビルの本屋が再開したとき、ブログのコメントで、友だちが薦めてくれた原田マハさんの「リーチ先生」を買いに行った。
文庫の棚に行ったとき、一番に目に飛び込んできたのが、河合隼雄さんの本だった。平積みになってるわけでもなく、ちょうど目の高さにあったせいか。迷ったけれど、奮発して、3冊も買ってしまった。あらためて、この本の表紙の河合さんの写真を見たら、先生の . . . 本文を読む
河合隼雄さんの文章は柔らかい。あたたかくて、読みやすい。
あたたかいお風呂に入っているような心地のよさで、夢中で読んでしまう。実は、私は、猫よりは犬が好きである。小さいとき、室内犬でマルチーズを飼っていた。母にばかりなついて、全然一緒に遊んでくれなかったが、母が家にいないと、しょんぼりして、母のあとをずっと追いかけて、一途に慕う姿は、子どもながら、心に残った。対して、猫は、自由気ままなイメージで . . . 本文を読む
「イヤミス」という言葉を初めて聞いた。読み終わった後の後味があまり良くないミステリーのことで、本書もその一冊。途中で読むのをやめようかと思ったが、なんとか最後まで読み通した。最後は一気だった。
海に面した、昔からある小さな町。古くから住んでいる住人たちと新しくやってきた住人(アーティスト)たちの融合と反発。アラフォー前後の女性3人、既婚者2人と独身が、自分の生き方を模索しながら、波にもまれていく . . . 本文を読む
GW前後の読書三昧の最後に紹介する本。タイトルをみても、どんな話だったか、すぐ思い出せないほどで、恋愛小説は苦手だし、紹介をやめようかしらと思いながら、冒頭の数頁を読んだら、涙があふれてきた。現実と過去との交錯がうまく、なにより手紙がいい。手紙の書き手、伊与田春(ハル)の繊細で、いまにも消えてしまいそうな、はかない存在感。「あのときのわたしには、自分よりも大切な人がいた。あなたと一緒にいるだけで、 . . . 本文を読む
宮下奈都さんの短編集2冊目。今回も、本のタイトルと同じ題名の短編はなく、タイトルは、テーマに近い。「予約1」から「予約6」まで6つの短編が、いわば「かご」の中に入っているよう。大きな「かご」というのが、「誰かが足りない」世界。
とびっきり美味しい料理を出してくれるレストラン「ハライ」。そこで待っている。向かいの席に誰かがやってくるのを…。
「誰かが足りない。 そう思えるのは、もし . . . 本文を読む
旅に出たいなと、この本を読んで思った。年に1、2回、一緒に旅行にいく友達に声をかけたくなった。
長い間、音信がなかった友だちが、いきなり波照間島(はてるまじま。沖縄県)から電話をかけてきて、こっちに遊びに来ないかと誘う話があるのだ。失恋したばかりの主人公は、その友だちとの出会いについて振り返り、自分の中の思いに気付く…。そして、久しぶりに会うため、飛行機に乗って、南の島を訪れる&h . . . 本文を読む
「疲れた心に必ず効く、読む特効薬」
本の帯の惹句は、本当に上手い。
6つの短編の主人公がいずれも人生の後半にさしかかった人。
若者のように、未来の可能性が広がっているわけでもなく、何十年もの思い出とともに、くたびれかけてきた体を抱えて生きていく人に、優しくてあたたかいおまんじゅうを、ほっかいろを差し出してくれたよう。
個人的に大好きなのが、「最後の伝言」。飾らず、日常的な風景の中で、庶民的 . . . 本文を読む
アキとヒロ。一緒に暮らしている男女は、兄妹だった‥。
ミステリというよりは、恋愛ものだと私は思う。
二人が住むアパートから児童公園が見えて、二人はいつも、そこに立っている時計を見て、時間を知っていたという。
村上春樹の小説「IQ84」に出てくる公園を思い出した。女がベランダに座って、恋する男が、公園の小さな滑り台に登って月を見るのをずっと待ち続けるシチュエーション。
職場近くの公園のそばを . . . 本文を読む
「絶対、世界にアイはある」とこの小説で叫びたい。―西加奈子
と文庫本のオビに書いてあった。
アイとは、愛、「Ⅰ」(私)、虚数の「i」、主人公の名前の「アイ」、どれのことだろうと思いながら、読み進んだ。
アイと仲良しのミナ。アイの夫のユウ。
1988年にシリアで生まれて、日本人の女性とアメリカ人の男性の夫婦に養子にもらわれたアイの子どもの頃から、結婚して、妊娠して‥の前半の人生をたどっていく . . . 本文を読む
緊急宣言が出て、駅前の本屋が休業する直前にGWの巣ごもり用にと、あわてて買った。GW半ば、意を決して読み始めたら、おもしろくて、止まらなくなった。
音楽を言葉でどう表現するのかは、著者の腕の発揮どころで、見事だった。ピアノコンクールに出る4人の男女の物語。
4人が、それぞれ個性的で、屈折した過去や経歴や苦労を抱えている。28歳と一番年長で、家族持ちで、仕事をしている青年、明石の地味ながらも、人 . . . 本文を読む