噛みつき評論 ブログ版

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誰も気づかない、マスコミのコロナ暴走

2020-06-14 21:36:42 | マスメディア
 コロナ鬱というべきか、世界を覆ったコロナ禍を重大に受け止めるあまり、精神状態が鬱っぽくなっている人がいるようだ。きっと真面目な人たちだろうと思うが、テレビの報道・情報番組が原因のひとつではないだろうか。道を歩く人も、公園を散歩する人もまだほとんどがマスクをつけている。ここ、京都ではこの1ヵ月の感染者(死者ではない)は2名であり、交通事故の死者(平均約5名/月)より少ないレベルである。屋外のマスクはもう必要ないと思うが、いまだ恐怖が去らないのだろう。外出規制が解除されたアメリカやイタリアでプールや観光地がマスクもなしに賑わっているのとずいぶん違う。

 現在までの国内での死亡者は1000人弱であるが、昨年のインフルエンザによる年間死者数は約3千人で、その関連死亡者数は約1万人に及ぶ。それに比べれば新型コロナの死者はかなり少ない。珍しさもあってか、騒ぎの大きさは雲泥の差である。感染が急拡大しているときはそれでも意味があったが、もうほぼ制御されている状態である。散発的な第2波はあるだろうが大規模なものは考えにくい。検査体制も医療体制も以前よりずっと改善されているからだ。それよりも恐怖心のあまり経済の復旧が遅れることの方が恐ろしい。必要以上の自粛が長期間続いて経済が深刻なダメージを受けるようなことになってはならない。マスコミは国民にもっと遊びに行けと自粛解除を奨励する時期にきている。

 この数か月、テレビ各局の報道・情報番組の新型コロナへの集中ぶりは凄まじく、テレビは新型コロナに占領されたような状態であった。むろん、いい面もある。過剰な報道のおかげでコロナに対する恐怖が国民の間に浸透し、感染拡大を防ぐ一つの要素になったことである。しかしその反面、弊害も大きい。

 コロナのために他の重要なニュースの多くが報道されずに、あるいは小さな扱いとされた。例えば少年5人が81歳のホームレス男性を襲って殺害した事件があった。男性は仲間の女性を守ろうとして殺害されたそうだ。若者が5人で、老いて無力な一人の老人を数百メートル追いかけ殺害したという本当にムカつく話で、卑怯の極みである。彼らは19歳ということで氏名も伏せられた。少年の扱いにとっても重要な問題を提起している。

 経済に於いてもリーマンを超える、100年に一度の大変な出来事だという議論がされ、政府の財政出動も気前が良すぎるように感じる。第1次補正予算、第2次補正予算は計57.6兆円にもなる。国債の新規発行額は過去最大の90兆2000億円に達し、歳入の56.3%を国債が占める。気前が良すぎると書いたのは、所得が減っていない75%の国民にまで10万円の給付をしたからである。それがほとんど反対なく通ったことがおかしい。恐らく他の支出も甘い基準で決められたのではないかと想像する。

 当たり前のことだが、財源は借金である。将来、返さなければならないのは国民である。消費税や所得税の増税、財産税などの新税などが必要となる可能性が高いが、不思議なことに増税に関する議論が私の知り限り全くない。マスコミが新型コロナばかり報道するので、国民の頭の中は新型コロナの恐怖で満たされ、コロナの解決さえできれば財政のことなど気にしてられない状態になっているのではないか。堂々世界第1位、GDP比237.13%の政府債務残高(2018年)を持つ日本がこんなに借りまくって誰も心配しない。しかしいつかツケを払うときがくると考えるのが常識であろう。増税か、円の切り下げか、インフレか。

 新型コロナを過剰に受け止めているのは国民だけでなく、政府も、そして火をつけているマスコミ自身も同じであろう。比較的冷静なのは経済界である。株価は新型コロナによる急落前の水準近くまで戻っているのはその象徴である。投資家はカネがかかっているので軽率な行動はとれないのである。報道されるのは観光や運輸、外食など、落ち込みの激しい業種ばかりだが、大きく影響を受けていない業種もある。逆に、テレビ業界は新型コロナの不安を煽る報道が実を結んで視聴率がかなり上がっていたらしい(直近ではコロナが飽きられやや下降しているそうだが)。視聴率は収益に結びつき、繁盛している。彼らは不安を売る商売なのである。ブルームバーグの記事「コロナ対策の2次補正予算成立、過去最大31.9兆円-国債増発で財政悪化」など、政府の財政悪化を心配するのは日本のメディアでなく、ニューズウィーク、ロイター、フォーサイトなど外国メディアばかりが目立つ。

 連日の新型コロナの放送量が問題なのである。繰り返し恐怖を刷り込まれると人は過剰に信じてしまう。ナチスの宣伝相・ゲッペルスが言ったとされるように「ウソも百回言えば真実となる」のである。まして異なるテレビ局が異口同音に言えばより確実に信じてしまう。テレビが自覚的であるかは知らないが、人は特定の方向に色付けされた情報ばかり与えられると冷静な判断ができないようになる。ゆとり教育、公共事業の敵視・否定、規制の敵視・否定、ダイオキシン・環境ホルモンなど社会の大きな失敗はマスコミがそろって騒いだことによるものが多い。マスコミによって全国民が一致して間違った方向に行くのである。軍国主義へ向かって新聞が国民を鼓舞した例をも含めてよいだろう。新聞の支持がなければ軍部の独走は難しかったと思う。つまりマスコミという、賢くもなく、現実認識能力も低く、従って先見性のない集団が社会をリードしている状態だと言えるだろう。