噛みつき評論 ブログ版

マスメディア批評を中心にしたページです。  姉妹ページ 『噛みつき評論』 もどうぞ(左下のBOOKMARKから)。

拉致問題、交渉不可能な相手もいる

2020-06-07 22:08:39 | マスメディア
 横田滋さんが40年余のご努力もむなしく、亡くなられた。国家が隣国の人間を多数誘拐し、それが明らかになっても返さない、交渉にも応じない。これほど理不尽なことはないが、それが北朝鮮の現実である。拉致問題は少数の人に起きた過去の「他人事」であるという感覚があるためか、事件の重大性認識が十分とは言えないと思う。安倍政権が成果を出せなかったことを批判する人たちもいるが、ではどうすればよかったのかと問われれば実効ある方策を示すことは恐らくできないだろう。

 交渉にすら応じない国なので当然である。交渉すらできない国というのは理解困難であるが事実だから認めないわけにはいかない。米朝会談の実現は北朝鮮が米国の軍事力を背景にした場合には交渉のテーブルに着くことが示した。軍事力を背景としない場合、ほぼ交渉が不可能であることを40年余りの実績が示している。北朝鮮は国民を飢えさせても軍事を優先してきた国であり、力以外の価値、公正さや道徳などは通用しないように見える。

 となると拉致問題の解決は実力なしではほぼ不可能ということになる。しかし北朝鮮が核を持った以上、実力での解決は極めて困難である。これまで日本は自衛隊という実力を持ちながら憲法9条のために行使を封じられてきた。北朝鮮がこのような暴挙に出た背景には日本が自ら軍事力を封じてきたことがあると思う。もし9条がなかったら拉致問題は起きなかったかもしれない。

 我々の常識で考えられないことをする国は北朝鮮だけではない。中国の、チベットやウィグルに対する政策はあまり報道されないが、信じられないものがある。チベットで焼身自殺した僧は150人にもなるというし、ウィグルでの強制収用者は100万人とも300万人とも言われる。東シナ海や南シナ海における行動もしかりで、習近平国家主席は中国製のヒットラーだとの呼び声も高い。

 拉致問題をきっかけに日本の安全保障が議論されてもよいと思うのに、そのような気配はない。日本人を袋に入れてさらっていくような国に対して、武力を放棄したと言っても相手につけ込まれるだけである。戦争を極度に恐れるあまり、武力で迫る国を武力で抑止することの重要性まで忘れているようだ。

 日本をこのような体制にしてきた責任は野党と左派メディアにもある。あまり知られていない旧社会党土井たか子のエピソードがある。1988年8月、石岡亨さんと松木薫さん、有本恵子さんの消息を伝える石岡さん本人の手紙がポーランド経由で秘密裏に家族の元に届いた。まさに命がけの手紙である。有本さんの両親はそれを土井たか子に相談したところ、取り合わないどころか、その手紙の存在を朝鮮総連に通報した。のちに、有本恵子さんは手紙の到着の2ヵ月後、死亡していたことが判明した。手紙と死亡との関係が疑われている。当時社会党は朝鮮労働党の友党であり、土井は拉致事件を「産経新聞の捏造」だと否定していた。捏造が得意なのは産経でなく朝日であることがわかるのは従軍慰安婦報道の嘘がバレた2014年だが。

 土井たか子の現状認識の誤りはあまりに酷すぎる。しかしこれは彼女だけの責任ではない。例えば北朝鮮を賛美し続けた朝日新聞だけを読み続けていたら、認識能力の弱い人は彼女のような認識になったかもしれない。特定の方向に色付けされた情報ばかり与えられればこのような誤った認識は容易に実現することである。メディの影響の恐ろしさを改めて感じる。共産主義国家がメディアを厳しく統制し、自由な言論を許さないのはそのことをよく知っているからである。土井や朝日に代表される左派勢力が日本の軍事力を封じ込めるように努力してきた結果が拉致問題を招いたと言えなくもない。憲法9条の廃止、非常事態法など日本の軍事的抑止力の向上を抑えようとする左派勢力が戦争という災厄を招くこともあり得る。戦争反対を叫ぶ連中が実際には戦争を引き込むという、まことに皮肉なこともあり得るのである。