日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

中畑監督と理研に共通の“やってはいけない”

2014-05-13 | 経営
先週の話ですが、プロ野球DeNA中村紀洋選手がコーチに自己の職務環境に関する希望を伝えた件で、中畑監督から「懲罰的な部分はある」とのコメント付きで一方的に登録抹消処分を受けるという事件があったようです。

もちろんこの事件、「自分が打席に入った時にサインを出さないで欲しい」という至って自分勝手な要望を出した中村選手側に非があることは確実ですが、問題は処分に至る流れです。中村選手はコーチに相談→コーチは監督に報告→監督が登録抹消を指示というステップでの処分決定において、処分決定の判断を下した中畑監督はなぜ決定前に中村選手と直接話をしなかったのか、という疑問が頭をもたげます。

コーチの伝達には当然コーチの主観が入るでしょうし、人づてに要望を聞くことは当事者の真意を十分にくみ取りきれていない可能性も否定できません。大企業等で各部門長に権限移譲がなされている状況であるのならともかく、プロ野球球団管理における選手の現場人事権は監督が握っているはずです。ならば、現場責任者として降格処分の決定をおこなう前に、まずは監督自身が本人からの直接の事情聴取をするのが筋だと思うのです。なぜ、直接コミュニケーションをとらないのか。中小企業の経営者にもよく見られる事例ですが、組織管理おけるこの手のやり方は百害あって一利なしです。

同じような話がもうひとつ先週ありました。当ブログでも何度も取り上げているSTAP細胞に関する理研の対応です。理研は先週、改ざん疑惑についての最終結論として小保方さんの異議申し立てを退け、「再調査せず」という姿勢を公表しました。これもどうなのか。結論そのものに対する疑問ではありません。異議申し立てをして反論会見まで開いているのですから、再度当の本人を呼んで理研の小保方さんに関する人事権者と調査委員会が膝を詰めて言い分をしっかりと聞き、常識的には再調査しないのならしないで本人にその根拠を明確に提示し論理的な筋道の立ったやり方で納得させるという努力はあってしかるべきなのではないかと思えるのです。

既に小保方さんが理研を訴えていると言うのなら、今回のような直接のコミュニケーションをとらないやり方も致し方ないということになりますが、弁護士こそ入ってはいるものの訴訟云々はまだマスコミの憶測に過ぎない段階です。弁護士を入れなくてはならないほどに、理研側のコミュニケーション拒否姿勢が強硬であり取り付くシマがないのだと、私には映ります。もちろん、これは小保方さん擁護ではなくあくまで組織管理と組織コミュニケーションのあり方の観点から申し上げております。

では、上記2つの事象において共通の、コミュニケーション欠如下における一方的な結論付けはなぜ起きたのか。管理意識の決定的欠如と言う結論が正論ですが、一つ考えられるのは、前者における中畑監督、後者における理研と言う会社組織が、それぞれ中村選手、小保方さんを辞めさせたいという明確な意図をもってあえて掟破りのコミュニケーション欠如のやり方を取ったのではないかという推論です。ただこの場合でも、辞めさせたいなら辞めさせたいと、ハッキリ本人に伝えるべきではあるわけです。

コミュニケーション不足に納得がいかないから、中村選手はFBでブー垂れて問題が大きくなりチームの印象が悪くなるわけで、理研は理研でコミュニケーション不足で一方的なことをやるから、訴訟とかそういう余計な厄介事が舞い込む局面に立たされそうな訳です。つまりは、どう考えてもコミュニケーション不足は揉め事を大ごとにするだけで一利なしであるというのが、この2つの件から共通して管理の立場にある者が学ぶべき事であると思います。