日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

マクドナルドの件について今一度、信用回復策を考えてみた

2015-01-17 | 経営
マクドナルドの件では、いろいろご意見もいただきましてありがとうございます。私の説明不足もあって一部誤解もあろうかと思いますので、今一度私の考えを整理しておきます。

今回の一連の騒動は、ハッキリ言って騒ぎ過ぎであるというのがまず大前提。コストダウン目的による機械制大量生産での食品製造工程で、異物混入を100%避けることは無理ということは認めざるを得ない事実であるからです。それを前提として私が申し上げたい趣旨は、一般論としての対応策ではなく既に昨夏の鶏肉事件以来信用を大きく失墜させたマクドナルドの対応策を考えた場合、二段階で失った信用をいかに回復するかは「100%異物混入防止は無理」という開き直りを元に黙って時が経つのを待つのではなく、何か積極的な専用回復イメージの醸成策が必要ではないか、ということです。

そこで考えたのは、イメージダウンをイメージ回復させるには、やはりイメージに訴えかけるしかないのではないかということ。鶏肉事件の際には、中国生産からタイ生産への移行によるイメージ向上を仕掛けていた同社ですが、それ自体が本当に効果があったのかということ。しかも今回の事件がさらに追い打ちをかけたわけで、事実はどうあれ「やっぱり海外、同じアジアだからね」というのが多く日本人が抱いた印象なのではないかと思うのです。

ならば、根本的なイメージ回復策は国内製造への回帰しかないのではないか、ということ。あくまで日本マクドナルドの日本人利用者に対するイメージ回復目的です。たまたま超円安局面で、家電メーカー等がこぞって国内工場への回帰策を打ち出している最中でもあります。そのぐらい思い切ったイメージ転換策を取らないことには、例えネットメディアやマスコミに悪意をもって作り上げられたものであろうとも、信用失墜、イメージダウンからの回復には相当な時間と努力を要するように思うからです。

ペヤングの対応はまさにそれだったと思います。対応の失敗で予想外に信用を落としてしまった同社は、根本的なイメージ回復策を講じる必要があると判断して、全商品の回収と製造工場の全面改修を決めたわけです。そこまでやる必要があるのか、という議論は確かにあろうかと思います(裏を返せば、メディアや世論はそこまで追い込む必要があるのか、という議論)。しかし、現状の国内における食の安全に対する異常なまでの神経質さや、このままでは一向に収まることがないネット等でのイメージダウン攻撃に、抜本的対応策を打つ以外になしと、同社経営は判断したのでしょう。

対応そのものの良し悪しはともかく、私は1度ならずも2度目まで信用失墜事件に巻き込まれてしまったマクドナルドは、このまま売上大幅ダウンが続くことで致命的なダメージを被らないための残された道は、国内生産への切り替えしかないのではないかと思ったわけです。目的はあくまで企業防衛です。もちろん、相当なコストと、商品の値上げによるビジネスモデルの根本転換が必要となるのではないかと。それをもって、「安かろう悪かろう」イメージから「高かろう良かろう」イメージへの転換という言い方をしたわけです。マクドナルドに高級路線を目指せと言ったのではなく、イメージの抜本転換以外に致命傷化を避ける早期の業績回復への道を探すのは難しいのではないか、ということです。

同時に、この局面の重大さを日本マクドナルド経営者はもっと真摯に受け止めるべきなのではないかとも申し上げました。カサノバCEOはその後も会見をする様子はありません。前回も申しあげたように、普通の不祥事と違い今回の件でトップが登場しないことをもって「カサノバけしからん」とは全く思いません。ただ、同社の企業防衛の観点からは、トップ自らが進み出て、確固たる姿勢で本件に対する経営の考え方や対応方針を明確に表明することもまた、リスク回避の観点からは重要であると思うのです。

本件もメディアでの取り上げはだいぶ下火になってきました。そうは言いつつも、同社の信用回復はマネジメントの観点から申し上げるなら、それとは別の次元で考えなくてはいけない問題であると思います。すなわち、「時が解決する」という姿勢では失ったものの大きさから考えれば、元の状態に戻すには果てしなく長い時間を必要とするのではないかと思うからです。マクドナルドの信用回復に向けた次の一手に注目したいと思います。