日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

金融商品のPB商品化として注目すべき信託・地銀提携

2014-09-05 | ニュース雑感
先週のことだったでしょうか。日経新聞の1面ヘソあたりで報じられた記事に思わず目が行きました。「三井住友信託銀行と横浜銀行が業務提携へ」というものでした。小職の出身企業に関わるネタが珍しく1面ネタになっていると言うことでまずは目を引いたのですが、中身を見て二度ビックリのたいそうなお話だったのです。これはけっこうなニュースになるのではないかと思って見守ったのですが、意外なほどに盛り上がらなかったのでちょっと解説しておきます。
◆日経新聞ニュース
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL27H64_X20C14A8000000/

大手の銀行同志が業務提携すると言うのは確かにそれだけでもニュースバリューがありそうですが、信託銀行と地方銀行が業務面で提携するというのは昔からちょいちょいあることで、そんなに珍しいことではありません。

何がたいそうなのかと言いますと、その提携の中身です。すなわち、投資信託業務で提携し、両行共同で運用会社を設立して、オリジナルの投資信託商品を作ろうという部分です。地方銀行はこれまで、国内外の大手の資産運用会社がつくったファンドを販売して、その販売手数料でビジネスを成り立たせていました。それを自社ブランドのファンドを作って売ろうじゃないのという、金融商品のOEM商品化をもくろんだものなのです。

もっと分かりやすく言いましょう。例えてみれば、ナショナルブランド商品ばかりを仕入れて陳列していたスーパーがPB商品の取り扱いで業界の流れを大きく変えたように、PB商品的投資信託を地銀が取り扱うということにあたります。自社グループだけでは、オリジナル投資信託の開発にノウハウも人材も足りない地方銀行が、大手信託銀行の協力を得ることで、オリジナル商品を開発する。当然、開発コスト、流通コストが圧縮できるので、顧客にとっては購入手数料の引き下げが期待できるわけです。

しかも、今回は横浜銀行との単独提携という形で報道されていますが、その後の情報によればこの記事を読んだ他の地銀からの問合せが殺到しているようで、早くも業務拡大の様相を呈しております。地方銀行同志は基本的にエリア競合がないので、商品の共同開発にはもってこいの環境にあります。この投資信託PB商品化の流れに、多くの地方銀行が相乗りするなら、より一層販売手数料が引き下げ可能になるでしょうから、ますます注目のお話なのです。

肝心の商品内容はどうなのか、という問題がありますが、報道によればバランス型の投資信託という、比較的リスク分散の度合いが高く設計しやすく初心者でも購入しやすい投信が中心になるようです。これはスーパーのPBブランドが、調味料や安定購入が見込める基幹商品からPB化を進めたのと同じ流れであると言っていいと思います。

そんなわけで、報道では意外にその後の扱いが小さいのですが、私は個人向け金融ビジネスにとって結構大きなニュースであると思うのです。投資信託を皮切りに金融商品のPB化が軌道に乗るなら、様々な業界連携によるPB化の流れが大きく動いてくるのではないかということもあります。加えて、金融ノウハウに不足する民営化郵政もこの流れには積極的に乗ってくる可能性も容易に想像できます。PB化による定型型商品の手数料低下が今後どのように金融商品販売の流れを変えていくのか、大いに注目したいところです。