日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「阪急阪神ホテルズ」恥の上塗り社長会見のお粗末

2013-10-29 | 経営
二回にわたった阪急阪神ホテルズの社長会見、まれに見るひどいものでした。あの“囁き女将”以来の快挙でしょうか。最初が「偽装ではなく誤表示」、ようやく辞任を決めた昨日もまだ「偽装と思われてもしかたない」とは、一流ホテルグループのトップの謝罪会見として底が浅すぎます。だいたい、何回にもわたって何時間も苦しい言い訳と人のせいにすることのマイナス・イメージにお気づきになられない時点で、完全アウトであると思います。

前回のエントリーでも指摘した顧客を舐め切ったとんでもない組織風土が、その後の対応でますます明確になったと思います。それにしてもひどい組織風土です。社内にはウソがまかり通り。そのウソをどこまでもツキとおそうとして“曲解”というウソの上塗りを繰り返す。場合によっては人のせいにして責任回避をする。ハッキリ申し上げて、救いようのない同社の風土実態が実にストレートに伝わってまいりました。
◆経営陣が甘く見る「阪急阪神ホテルズ」の抜き差しならぬ“病状”
http://blog.goo.ne.jp/ozoz0930/e/8b28a59f38d7b025c6a18d42671fd735

昨日の会見での“曲解”のおかしさをひとつあげるなら、「九条ネギ」のくだり。「メインは鶏肉であったので、添え物のネギが変わってもそのままで良いと調理サイドが思った」と社長が言っていましたが、何がメインであろうがメニュー名に「九条ネギ」と入っていて、そのネギが違うものに変わったのに「九条ネギ」の表記を残すっていう判断そのものが完全に「偽装」じゃないですか。「偽装」であるか否かの判断すらできなくなっている組織風土は完全に病気以外の何ものでもありません。社長が会見に登場して、しかも悪評を受けての二度目の会見でこれですから、病状は相当深刻であると思います。

今回の事件を受けて社長は辞任をしましたが、それだけで何が変わるのか全く見えてきません。社長の会見によれば、独自調査に頼った挙げ句、事件は現場の不手際や連携不足、納入業者のミスなど、人のせいにするばかりであり、トップが交代したところで何が変わるのでしょうか。「すべて私の指導力の問題」とでも言うのなら、あなたが交代すれば良くなるということねとなるかもしれませんが、そうではない以上平気でウソをつく組織風土の問題に気が付きそこに手をつけないことには問題の根本は何も解決しないと思います。

大体において、事態の検証や原因究明においてすら第三者の目を入れずに対応して、御手盛りで「誤表示が原因でした」と言い放つやり方でよしとしていること自体がおかしい。まずは第三者による徹底的な事実検証と客観的評価をもとにして、原因の究明をおこない再発防止に向けた対策を講じる、それが本来あるべきやり方ではないでしょうか。そして、単なるトップの交代にとどまることなく、経営陣にも外部の風を大々的に入れて組織内の空気を清浄化することが、今同社にもっとも求められる事なのではないかと思います。

みずほ銀行のコンプライアンス違反の問題もまた、昨日第三者機関の検証評価を経て業務改善計画が提出されました。阪急阪神ホテルズとの共通点として気がつかされるのは、合併、統合企業における融和せざる組織の相互けん制に対する無意識的な忌避が悪しき風土を生きながらえさせコンプライアンスに関わる自浄機能を損なっているということです。対処法はただ一つ、外部の風以外にはありません。みずほ銀行の現時点までの対応策がベストなものであるとは思いませんが、少なくとも第三者の検証を経た対応策の策定にはそれなりの意義があったとは思います。

第三者による検証すら受け入れぬまま繰り返されたお粗末極まりない阪急阪神ホテルズの社長会見を見るにつけ、同社の信頼回復ははるか遠いところにあると言わざるを得ないでしょう。