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日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

売れ筋ビジネス書<ブックレビュー>3・30号

2009-03-30 | ブックレビュー
★「「法則」のトリセツ/水野俊哉(徳間書店1200円)」

「成功本50冊勝ち抜け案内(光文社ペーパーバックス)」でおなじみの著者。今回はビジネスに関する「法則」を100以上にわたって羅列し解説しています。当ブログでも取り上げた「ハインリヒの法則」「ピグマリオン効果」「ジョハリの窓」等の広く一般に知られる理論から、「マインド・マップ」や「ブルー・オーシャン」「フェルミ推定」など、最近のベストセラー・ビジネス書のテーマに到るまでを「法則」としてひとくくりにして、個々に簡単な説明を加えています。

知っていると役立つ「法則」というのは世の中にたくさんあるもので、ビジネス書の類をあまり読んだことのない読者からは歓迎されそうですが、内容的にとり立てて特筆すべきものがあるという訳ではありません。むしろ、「法則」とそうでないもの、たとえば「法則」と「フレームワーク」を同類として扱っている点などは、違和感を覚えます。また「地頭力」「千円札は拾うな」「東大合格者のノートは必ず美しい」等々最近のベストセラー・ビジネス書からも、「法則」としてそのエッセンスが抜き出されていて、これを学術的に認知されたビジネス法則と同等に扱っている点も同様に違和感アリです。

その意味では、PART6「成功本の成功法則」は、既存の成功者の著書から成功への“最大公約数”的習慣だけに的を絞って抜き出したもので、この部分には他にないおもしろさがあると思います。「成功本50冊勝ち抜け案内」の焼き直しと言ってしまえばそれまでなのですが…。全体を通して言えることは、「法則本」というよりはヒット・ビジネス書の“イイトコどり”的なものであり、実に著者らしい本であると言えるでしょう。

というわけで、本の見かけの切り口はともかく内容はこれまで同様のダイジェスト本。もちろん書いてあることは、ビジネス書初心者にはタメになることも多いのですが、ひとつひとつの内容は浅いので、実践では雑談ネタに使える程度かなという印象です。この手の本はビジネス書の“目次”として、関心のある部分の元本を読むという使い道が有効かもしれません。

10点満点で6点。
悪い本ではありませんが、どう読んでもダイジェスト本以外のなにものでもないので、これ以上の点数は無理ですね。

売れ筋ビジネス書<ブックレビュー>3・26号

2009-03-26 | ブックレビュー
★「コンサルタントの習慣術/野口吉昭(朝日新書740円)」

個人的に本田直之氏と並んで敬愛するコンサルタント野口吉昭氏の新刊です。前作「コンサルタントの質問力(PHPビジネス新書)」がベストセラーになっての新作と言うことで、各書店ともかなり目立つ扱いをしているように思います。私は、「質問力」よりもさらに前作の「コンサルタントの現場力(同)」こそが、氏の真骨頂たる著作であると思っているのですが…。

本作は、自身の仕事術を「習慣」と言う切り口を軸にして解説する一種のノウハウ本と言えると思います。現在ベストセラーを続けている本田直之氏の「面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則」と同じ傾向の、人気コンサルタントが考える成功の「秘訣」を明らかにしているものです。内容的に、こちらのほうがややカタ目な感じはします。その分、大衆的なウケは本田氏の著作に劣るかもしれません。

全6章からなりますが、ポイントは第1章「習慣をマネジメントする」に集約されているように思います。「見える化」と「前倒し実行」と「継続」、これこそが習慣化のキーメカニズムであるとして、「思考力」「行動力」「創造力」「忍耐力」「牽引力」を鍛えるための「習慣」化すべき要素を継続章で解説しています。

この本、もちろんそれなりにおもしろさはあるのですが、1章に比べて2~6章は一部他の著作とのダブりありで目新しさはイマイチ、また「創造力」「忍耐力」あたりは他の引用事例が多くやや展開的な苦しさも感じさせられるかなという感じもあります。野口氏のコンサルタントとしての仕事術を解説したものとしては、「現場力」「人間力」「思考力」「実践力」という切り口で、ビジネス・シーンにおける成長のヒントを説いた「コンサルタントの現場力」に“軍配あり”と言う印象です。

そんな訳で、本作は10点満点で7点。
一連の著作の中で判断するとこの点数ですが、この1冊だけを単独で考えるなら8点以上。中身はさすが一流コンサルタントといえるレベル感に十分あると思います。

売れ筋ビジネス書<ブックレビュー>3・12号

2009-03-12 | ブックレビュー
★「いま、社長にしかできない60の仕事/内藤和美
                           (インデックス・コミュニケーションズ:1500円)」

大不況対策本です。この手の本の売れ行きはタイトルが勝負を決するケースが多いです。その意味では、まずまずの衝撃度。中小企業の経営者にはタイトルに引きつけられて、「多少でもヒントになれば」と購入する向きもあるのでしょう。そこそこ売れているようです。ただ、タイトルの呼びかけ相手を「社長」に限定したことは、読者層を狭めてしまうかもしれません。内容的には必ずしも社長だけが対象と言ういうようなものではなく、広く中小企業管理者全般を対象としていると思えます。

基本は見開きでワンテーマごと、60個のテーマを解説しています。明日香出版社のヒット企画「ルール」シリーズ中の「社長のルール」とも似た印象です。見開きワンテーマ方式の良さは、好きなところからその時の気分や関心事に合わせて“抜き出し”読みが可能なことですが、半面全60のテーマのうちどこがより重要なのかが分かりにくくなってしまい、取り組む優先順位がつけにくいという難点もあります。

内容的には、中小企業診断士的コンサルタントが不況の時代に限らず、中小企業経営者に指導的立場でよくお話をするような内容と言って良いかと思います。すなわち、タイトルの割にはかなりオーソドックスである訳です。それもそのはず、著者は経営コンサルタント業歴45年超という、大ベテラン。各見出しは「明確な目標を設定する」とか「人材育成は続けてこそ成果を生む」など、かなり古典的な匂いのするものが多いのですが、どの項目も書かれていることは著者自身の経験にもとづくことが中心であり。通り一辺の机上論的内容ではなく、説得力はあるように思います。

その分“目から鱗(ウロコ)”的話には乏しく、新進気鋭の経営コンサルタントが書いたマネジメント本を多数読んでいる人には、やや物足りなさを感じると思います。他方で、過去にコンサルタントの世話になったことがない、ビジネス書はほとんど読んだことがない、という経営者には入門書的に教えられることが多いかもしれません。

“吹っかけ”的に誇張された記述が一切ない点には好感が持てますが、切り口がやや古臭くもう少しMBA的観点も欲しかったかなと少々物足りなさを感じさせるので、10点満点で5点。本書は著者の以前の著作の焼き直し作であるようで、価格面も含めて文庫版として出版するのが妥当だったかなと思えます。まあ拾い読みには向くので、社長の机上に置いて時間のある時に力を抜いてパラパラ読むにはいいでしょう。

売れ筋ビジネス書<ブックレビュー>2・13号

2009-02-13 | ブックレビュー
昨日に引き続き最近の売れ筋ビジネス書の<ブック・レビュー>です。

★「テキトー税理士が会社を潰す/山下明宏(幻冬舎:1429円)」

仕事柄、普段から世間一般に問題のある“手抜き”税理士は多いと思っていただけに、このタイトルとそれを現役の税理士が書いたという内容に期待しました。

結論から言うと、税理士界に一石を投じるような良いことを言っているな、と思わせる半面、ポイントとなる話が繰り返し登場し中身はさほど深くないこと(簡潔にまとめれば、半分の100ページ程度で収まる内容です)、自身の税理士事務所のPR色が濃く出ていて最後まで読むとそこがやや“鼻につく”こと等、難点も多少あります。

著者の主張としては、「税務監査証明書」の存在を広く知らしめ本来の責任感ある税理士の仕事振りを強調している点や、経営者の「理念」こそが企業経営にとって最重要ポイントであり、会社経営はそれを軸にきっちり推し進めていくべきであるという部分には大変好感が持てました。また、著者が考える本来あるべき税理士の姿が明快に描かれているので、実際現在付き合いのある税理士をそれとの比較評価が簡単にできる点は、中小企業経営者の方々にはありがたいのではないでしょうか。

余談ですが、私自身常々クライアントに「コンサルタントと言えども税務は税理士でない者が指導することは法律で禁じられおり、その意味で税務を含めた総合的な税財務コンサルは税理士の専業領域です。税務対策抜きの中小企業財務コンサルは中途半端なものになるので、私は財務に関して(当然税務は除く)はあくまでアドバイス・レベルに留め、フィーをいただく仕事としてはお受けしません」とお話しております。

その意味で、本書に税理士の本来あるべき仕事の様を明確に書いていただいていることは、税理士と経営コンサルタントの担当領域の違いが読者である中小企業経営者の方々に、分かりやすくご理解いただけるであろうと思われ、その点とても喜ばしく読ませていただきました。(個人的には、お互いの力量が良く分かった税理士と中小企業コンサルタントが、協力しつつそれぞれの担当領域での企業の改善にあたるのが理想形であると思っております)

以上を踏まえ本書は、10点満点で7点。
税理士本来の役割をご存知でない中小企業経営者(特に新米経営者)の方々には、ぜひともお読みいただきたい1冊です。内容は軽いので2時間で十分読めます。

売れ筋ビジネス書<ブックレビュー>2・12号

2009-02-12 | ブックレビュー
最近話題の売れ筋ビジネス書のブックレビューです。

★「レバレッジ・マネジメント/本田直之(東洋経済:1600円)」
★「面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則/本田直之(大和書房:1000円)」

おなじみ「レバレッジ・シリーズ」の最新刊。今回は、「レバレッジ・マメジメント」と称して経営者向けに、その姿勢、考え方、戦略等について「レバレッジ」を利かせる行動のあり方を説いてます。私自身、本田氏のレバレッジ・シリーズは大半を読んでいますが、今回の切り口である「マネジメント」は言ってみればビジネスにおけるあらゆる要素を総括する存在であり、その意味では本書が今までのシリーズの総集編的なつくりになっているという印象が色濃く出ています。

初めて氏の著作を読んだ時のような新鮮さはありませんが、各著作のエッセンスが程よくブレンドされて、シリーズを読んでいる人には復習兼総仕上げ的存在になるでしょうし、初めてこのシリーズを読む人には比較的詳しいレバレッジ・カタログ的な存在になりうるものと思います。対象は中小企業経営者および管理者と起業希望者。レバレッジ・シリーズを初めて読む人には、経営全般にわたって言及されているだけに、けっこう“目から鱗(うろこ)”的な衝撃があるかもしれません。かなり好調な売れ行きのようで、発売以来アマゾンのビジネス書分野で上位を続けています。

もともと「レバレッジ(=梃子(テコ)の原理)」的発想をビジネスに持ち込む考え方は、私自身の起業時のスタンスにも共通するものがあり、氏の考え方は個人的に共感するところ大いにありであります。ビジネス・パーソンとして部分的にであれ私の目標になりうる人物であると再確認できた、非常に本田氏らしい著作でありました。

10点満点で9点。読む価値大いにありです。
マイナス1点は、他の著作を読んでいる人にとっては目新しさに欠ける点です。

一方、同時期に発売されやはり今売れている氏の著作「面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則」は、どちらかというと若手ビジネスマン向け。氏の考え方のエッセンスには触れられているものの、55の項目立てという箇条書き方式にしたことで、氏の論点を支える「レバレッジ思考」の重要なポイントがボケてしまい、ありがちな「行動啓発本」的になってしまったのが残念。むしろ、値段相応の仕上がりにおさめたという意味で、なるほど一流コンサルタントらしい仕事と言うべきなのかもしれません。

こちらは6点。サラッと読めます。多くを期待せず通勤電車向けにどうぞって感じです。

明日も引き続き<ブック・レビュー>やります。