静聴雨読

歴史文化を読み解く

究極の本棚・2(コリン・デクスター)

2010-12-09 07:07:27 | 私の本棚
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老後の楽しみにミステリーを読むことを計画したのはいつでしたか? アームチェアに埋まって、のんびりと、頭の体操をするのは、時間の余裕のある時には無上の喜びとなります。

そう思っていたのですが、定年で現役を退く前に、この玉手箱を開いてしまいました。
ガイドブックを頼りに、ベスト100の50番くらいまで、片っ端から読みました。

その中では、レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』、マイケル・Z・リューイン『刑事の誇り』などのアメリカのミステリーやピーター・ラヴゼイ『偽のデュー警部』、アガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった』などのイギリスにミステリーに感銘を覚えました。
また、アメリカのミステリー(ハードボイルドのスタイル)とイギリスのミステリー(パズル・ストーリー)との味わいの違いを体得したように思います。

第2番:コリン・デクスターのミステリー

中でも最も気に入ったのが、ディック・フランシスとコリン・デクスターのミステリーでした。

ディック・フランシスは40冊ほどの作品を発表していますが、いずれも、競馬サークルをテーマにしています。騎手・調教師・装蹄師・予想屋など、競馬サークルに息づく様々な人々を取り上げて、ミステリーに組み込んでいます。

36冊まで読破しました。そこで、ディック・フランシスの断筆が発表されました。奥さんが亡くなったのです。彼はミステリーの構想を練るのに奥さんの協力を得ていたのではないか、と噂されていたのですが、彼の断筆は図らずもその噂を証明することになってしまいました。これも一つのミステリーでしょう。
その後、彼は執筆を再開しましたが、それは息子さんの協力を仰ぎながらのことだと、ご本人がいっています。

コリン・デクスターはオックスフォードを舞台にしたミステリーを14冊発表しました。いずれも格調の高いパズル・ストーリーで、私の読んだ中では、最高のミステリー作家であり、最高の作品群だと評価しています。
14冊発表したところで彼は断筆を宣言しました。ディック・フランシスと違って、コリン・デクスターが執筆を再開することはまずないでしょう。

今ではミステリーを読む楽しみを卒業してしまいましたが、コリン・デクスターだけは、機会があれば、再読してみたいと思っています。彼のミステリーは再読に耐えるだけの密度の濃さを持っています。いずれもハヤカワ文庫で容易に入手できます。 (2008/4)