私は、小学校の給食でいい思いをしたことがない世代に属する。昼食時は本当に憂鬱な時間だった。食べて旨いと思う食事に当たったことがほとんどない。コッペパン、脱脂粉乳、クジラの竜田揚げ、とんかつ、などなど。ほとんどが喉を通らなかった。
コッペパンは味がなく、脱脂粉乳は鼻をつき、クジラの竜田揚げの油がやはり鼻をつき、とんかつという名の「豚の脂かつ」に舌が怯えた。この小学校の給食で「脂恐怖症」が形成されたことは間違いない。
その後、長い間、とんかつを食べる習慣はなかった。脂身の少ないヒレ肉を使った「ヒレかつ」を知るまでは。今でも、たまに、すなわち、年に1-2回は「ヒレかつ」を食べることはあるが、「とんかつ」、すなわち、「ロースかつ」は決して食べない。
焼肉でも同様で、豚の三枚肉を焼くもの(サムギョプサルだったか、正しい名前は忘れた)には手を出さない。あれのどこが旨いのだろう。
このように、「脂恐怖症」から脱出できないでいるのだが、いつの間にか、そういう私の体に脂がまとわりつき、医師から「高脂血症」というありがたくない診断を下される始末だ。大学卒業時に53kgのガリガリの体だったものが、今では、68kg。その原因は、まぐろのトロや天ぷら・揚げ物などの過食にあることは明らかだ。
食材の脂の恐怖から、今では、体脂肪の恐怖へと変わってきた。いつまでも、「脂恐怖症」から脱出できる見込みは立たない。 (2011/3)