私家版文集『歴史文化ふたたび』を出版するまでの経緯を記します。
私のブログのコラムを抜き出して編集したブックレット『歴史文化を読み解く』を始めたのが2007年4月。以来、このブックレットは第16集まで発行しました。
ブックレットに収載したコラムをさらに取捨選択・再編集して、私家版文集を発行することを計画したのは今年6月でした。
まず、私家版文集の書名を『歴史文化ふたたび』と決めた理由をお話しします。
元になったブックレットのタイトルが『歴史文化を読み解く』でした。かといって、ブックレットのタイトル通りにするのは、大人気なく感じていました。「歴史文化」は是非残したいと考えましたが、この言葉が厳つい響きがあるため、それにふさわしい言葉を添えるというのがなかなか難しかったのです。それで、「ふたたび」という添え言葉を思いついた、というのが実際です。
この「ふたたび」という言葉には、いわれがあります。
イーヴリン・ウォーの作品に『 Brideshead Revisited 』というのがあります。『ブライズヘッド再訪』とでも訳すのでしょうか? これを、訳者の吉田健一が『ブライヅヘッドふたたび』と訳して発表しました(現在は「ちくま文庫」)。この訳語が、日本語らしい柔らかさと「あいまいさ」を持っていて評判になりました。
種村季弘は、19世紀末から20世紀初頭にかけてブレーメン近郊のヴォルプスヴェーデ村に住み着いた芸術家群像を跡付けた著作のタイトルを、吉田健一のひそみに倣って、『ヴォルプスヴェーデふたたび』(筑摩書房)と名付けたのでした。
この場合も「再訪」の意を込めて、「ふたたび」としたのでしょう。
このような吉田健一と種村季弘の伏線があって、「ふたたび」という言葉を使わせてもらうことを思いついたのでした。
私の場合は、「再考」という意味です。「歴史文化について語ることは今は流行らないが、もう一度考えてみよう」ということです。 (2011/10)
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『歴史文化ふたたび』は、
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