静聴雨読

歴史文化を読み解く

幻想の庭園・12・沈丁花

2014-03-10 11:13:38 | わが博物誌

 

(11)沈丁花

 

3月1日。沈丁花がもう満開で、馥郁とした香りを漂わせている。

この花は小ぶりなので、「幻想の庭園」の選択基準に合致しないが、この香りは捨てがたい魅力だ。ここでは、節を曲げて、採用することにしよう。 (2014/03)


幻想の庭園・11・むくげ

2014-03-08 07:05:49 | わが博物誌

 

7月から9月にかけての夏の時期に「幻想の庭園」を賑わす花々として、前回紹介したノーゼンカズラ、それに、チョウセンアサガオとむくげを充てたいと思う。

ノーゼンカズラの開花期間は7月一ヶ月だ。そろそろ散り始めている。
以前紹介したチョウセンアサガオは、7月から初冬まで、間歇的に開花する。
それに比べ、むくげは7月から9月にかけて常に開花している。

むくげの花の種類は様々で、最もポピュラーなのが、今回の写真で紹介する白の花弁の一重花だ。花芯の部分に鮮やかなワイン・レッドが差しているのが特徴だ。花屋では、花名を「むくげ(レッド・ハート)」と表示している。これは英語かどうか怪しい。和製英語かもしれない。しかし、言わんとすることはわかる。
一重花には、ほかに、赤紫にワイン・レッドの花芯がある花や純白の花もある。八重花もいろいろあるようだ。

この写真のむくげから連想するのはタレントのジュディ・オングだ。そのわけは、省略するけれども。

赤い花芯が共通するのがハイビスカスだ。両者の違いは、花弁の厚さで、むくげは厚く、ハイビスカスは薄い。

むくげは、夏の間、次々に開花させながら、茎を伸ばしていく。夏が終わったら、剪定してやらねばならない。 (2008/7)


幻想の庭園・10・ノーゼンカズラ

2014-03-06 07:25:10 | わが博物誌

 

前回、名前のわからない橙色の花を載せたが、「ノーゼンカズラ」だということがわかった。中国原産で、ツル性。木などにまとわりついてツルを延ばしていくそうだ。

「花検索ソフト」の高級版で、次のようなことができないだろうか。

1.「花検索ソフト」を立ち上げる。
2.すると、「あなたの持っているディジタル写真をアップロードしてください。」と聞いてくる。
3.指示通りにディジタル写真をアップロードすると、たちどころに、探している橙色の花の候補を絞って表示する。(その裏では、「特徴による検索・マッチング」作業が行われたわけだ。花の色だけでなく、花の形状、葉の形状、茎の形状などの特徴を抽出して、データベースの花リストとマッチングさせれば、かなりの確率で、探している花の名が見つかる、という計算だ。)

あとは、その花の名で「植物図鑑」を検索すれば、その花の詳しい属性を知ることができる。

こういうソフトを切実に求める気持ちが湧きあがっているところだ。  (2008/7)


幻想の庭園・9・この花は何?

2014-03-04 07:19:48 | わが博物誌

 

この写真に写っている花は何という名なのだろう?
ちょうど、今7月、咲き誇っているところだ。
するすると伸びた茎と橙色の花がいかにも夏らしい。アロハ・シャツのプリントにピッタリではないか。

花の風情はジャカランダに似ているが、ジャカランダの花は紫色だ。
さて、この花の名は?

花の名の検索にはいつもとまどう。植物図鑑を持ち出すのも面倒だ。

PCがこれだけ普及したのだから、次のようなことができる「花検索ソフト」を誰か開発してもらえないだろうか?

1.「花検索ソフト」を立ち上げる。
2.すると、「お探しの花の色は?」と聞いてくる。あるいは、色見本が20ほど出てくる。
3.「橙色」を指定する。
4.すると、探している橙色の花の候補の写真がずらずらと出てくる。
5.通常は、その候補をスキャンすれば、探している花の名が見つかる。
6.もし、候補が300も500も出てくれが、検索対象を絞り込むために、「花は『一重』か『八重』か?」とか、「開花時期は?」とかの質問が出てきて、楽にスキャンすることが可能な数までに候補を減らすことができる。

以上で探す花の名はわかるだろう。あとは、その花の名で「植物図鑑」を検索すれば、その花の詳しい属性を知ることができる。

このような「花検索ソフト」があれば、どれほど重宝だろう。

さて、この花も「幻想の庭園」に加えたい花だ。  (2008/7)



幻想の庭園・8・あじさい

2014-03-02 07:24:13 | わが博物誌

 

梅雨の時期は一年で最も嫌いな季節だ。湿気に高温が重なるのだから、たまらない。
会社勤めのころは、汗を吹き出して電車に乗り、着替えもせずに職場に行くのがつらかった。背広にネクタイは、この時期、拷問のようなものだ。

この時期、唯一の救いがあじさいだ。

あじさいは、その種類(普通の「あじさい」と「がくあじさい」)とその花の色で、様々なヴァリエーションがある。

色についていえば、基調となる色が、白・紺青・ピンクとある上に、開花の進行過程で見せる様々な色のグラデーション(階調)があるので、何十・何百と色の種類が数えられる。
現在は開花からかなり経っているので、花の色が変化してきている。白・紺青・ピンクの花に、それぞれ紫色が混じってきている。あじさいの本当の因子が「紫」であることがよくわかる。漢字で「紫陽花」と書くのもうなづける。

これだけの色は、東山魁夷でも揃えられないのではないか?

あじさいは、花も見事だが、葉もそれに劣らず見事だ。
庭園の花の中では、薔薇と並ぶ品位を誇っている、と思っている。 (2008/7)


幻想の庭園・7・あじさい(開花前)

2014-02-28 07:44:55 | わが博物誌

 

これから梅雨の季節になると、あじさいが一斉に開花する。今は開花前であるが、あまりにきれいだったので、紹介する。

何がきれいかというと、その葉がきれいなのだ。大ぶりの葉だが、しっとりと水気を含んだ深緑の様は、花がなくても観賞に耐える。まことに珍しい存在だ。

大ぶりの葉では、チョウセンアサガオも負けないが、葉の質感と葉が群れあう量感で、あじさいに軍配があがる。

梅雨前の5月の強烈な光を受け止めながら、あじさいはてぐすね引いて出番を待っている。  (2008/5)

 


幻想の庭園・6・ツツジ

2014-02-26 07:40:44 | わが博物誌

 

ツツジは4月中旬から咲き始め、今、いたるところで満開だ。

ワインレッドと白の花が多い。これは、例えれば、風呂上りの、絣の浴衣の美人だ。さっぱりしているのが取り柄で、生垣にたくさん植えるには、このワインレッドと白の花の組み合わせが無難だ。

一方、数は少ないが、この写真のようなピンクの濃淡の花をつけるツツジもある。ロココ朝のフランスか世紀末のウィーンの妖艶な美女を思わせる。
花の艶がしっとりとして、マーガレットと違い、また、ワインレッドと白のツツジとも違い、入念に化粧を施した顔である。
 
花は大きく、花の数も多いが、例えば桜の花に感じるような狂気を感じさせないのがツツジの最大の美点だ。おそらく、桜と違って、花と葉が同じ比重で存在を誇示しているために、人を和ませる調和を生んでいるのだろう。

この花も開花期間が長いので、幻想の庭園にはなくてはならない役者だ。 (2008/5)


幻想の庭園・5・マーガレット

2014-02-24 07:32:30 | わが博物誌

花屋の店先で店番のおばさんに「これ、何という花?」と聞くと、一言「マーガレット」と答える。これ以上梃子でも答えぬという風情なので、退散した。

時々道端に大きな株についた黄色い花を目にすることがあったので、その名を知りたいと思っていたのだが、それがマーガレットだった。

マーガレットは、例えれば、スッピンの美人で、色気はないものの、清楚なたたずまいは捨てがたい。
一つの株に300ほどの花をつける。その群れの豊かさが売りの一つだ。
葉は雪の結晶を思わせる形がユニークだ。
また、花の開花期間が長いのが特徴だ。近くの例では、昨年12月に咲き始め、今5月でもまだ花が残っている。

幻想の庭園には是非ほしい便利な花だ。黄色以外に白い花もある。 (2008/5)


幻想の庭園・4・山茶花

2014-02-22 07:26:58 | わが博物誌

山茶花は冬の間長く愉しむことができる。この写真は11月に撮影した。もちろん、今でも咲いている。
山茶花の花びらは、八重で、この上なく、柔らかな感じがする。その気品の高さは、薔薇や牡丹に劣らない。

写真でわかるように、木のあちらこちらに花をつけるのが珍しい。根に近い部分にも花がつく。

東京・神田の女学校の塀に山茶花がずらりと植わっている。なかなか清楚でよろしい。
これを大川栄策が聞いたら、「女学校に山茶花? それはええ策やのう。」とでも感想を述べるのではないか。「それで、何本植わっているの?」「山茶花=九本です。」???  (2008/2)


幻想の庭園・3・蝋梅(ロウバイ)

2014-02-20 07:43:48 | わが博物誌

幻想の庭園の1月を飾る花は蝋梅(ロウバイ)だ。1月上旬から咲き始めた。2月の花とばかり思っていたので、ここに訂正する。
この写真は1月13日に撮影したもの。八分咲きだ。

この花はいい香りがする。
母を連れて散歩に出たとき、満開の蝋梅の下を通りかかった。
「この花は、いい香りがするんだよ。」
「今もいい香りがしているじゃない。」
「鼻が悪くなって、匂いが嗅げなくなってしまったの。」
それで母の鼻の障害を知らされた。そんなこともあった。

蝋梅は中国原産だそうである。  (2008/1)


幻想の庭園・2

2014-02-18 07:02:20 | わが博物誌

澁澤龍彦には『澁澤龍彦 空想美術館』(平凡社)という本もある。澁澤好みのレオノール・フィニー、四谷シモンなどの芸術作品を集めた図録である。

さて、澁澤龍彦の『フローラ逍遥』と『空想美術館』をヒントにしつつ、私の「幻想の庭園」を展開してみたい。
現在は団地住まいで庭がないので、庭が手に入った場合の「幻想の庭園」はどのようなものか?
庭に植える花の木をあれこれ考えてみる。

花の選定の基準は:
1.開花期間が長いこと(桜や夏椿は適さない)。
2.小さくて、チマチマした花は除く。
3.手入れの難しい花は遠慮する(薔薇などは泣く泣く諦める)。

以上の基準で、かつ、できるだけ、年中何かの花が咲いているのが理想だ。この理想に沿う花の木をラインアップすると次のようになる。開花期は南関東を基準にしている。

2月:蝋梅
3月:沈丁花(花は小さいが、姿が立派で、香りもいいので、採用する)
4月:ツツジ

5月:(ここだけが埋まらない)

6月:あじさい
7月-9月:チョウセンアサガオ・むくげ
10月:金木犀
11月-1月:山茶花

意識したわけではないが、蝋梅・沈丁花・チョウセンアサガオ・金木犀と、香りの馥郁とした花の木を多く選んだことになる。香りはあるに越したことはない。  (2007/12)


幻想の庭園・1

2014-02-16 07:13:16 | わが博物誌

フランス文学者でマルキ・ド・サドの翻訳者として著名な澁澤龍彦に『フローラ逍遥』という著作がある。現在は、「平凡社ライブラリー」に収録されている。文字通り、花の博物誌だが、マルキ・ド・サドの紹介者との親和性は思いつかない。しかし、次のようなエピソードを知ると、納得がいく。

澁澤は長らく「フランスを訪れたことのないフランス文学者」であった。「アームチェア・ディテクティブ」(書斎探偵)ということばがあるが、彼は、いわば「書斎フランス文学者」として長年過ごしてきたのだが、ある年、念願叶って、フランスに旅立つ。サドにゆかりの地などを確認するためだ。

ある古城に来て、感慨を込めて城を探索した後、澁澤は城の周りの花々と戯れていたというのだ。これは同行した知人(妹の澁澤幸子か妻の矢川澄子かは忘れたが)の証言だ。周りの人たちは、澁澤に、好きなだけ花々と遊ばせておいたという。澁澤の花好きの素地を証明するエピソードだ。(2007/12)


ヨーロッパ! ヨーロッパ! (3)EUとユーロの実験

2014-02-14 07:06:15 | Weblog

 

さて、現在のヨーロッパで最も注目すべきは、EUとユーロの行く末だろう。

1993年に発効したマーストリヒト条約によって誕生したEU(欧州連合)は、初めの「西欧諸国の連合」の性格を脱皮して、今や、27ヵ国が加盟する大連合に成長した。歴史・文化・言語・通貨が異なる国々がこれほどまで連合を組むとは予想できないことであった。

また、2002年には、欧州統一通貨として、「ユーロ」が発行され、EU加盟国のうち16ヵ国がユーロを採用し、ほかにも6ヵ国がユーロを導入している。「ユーロ」は、今や、ドルに次ぐ「第二の基軸通貨」と評されるまでになった。これもまた、大規模な通貨統合が実現するとは夢にも思わぬ出来事だった。

だが、統合地域が巨大化し、統合通貨が拡大するにつれて、その中で、歪みが否応なく露呈してくるのは避けられない。それは、EU内やユーロ圏内における国ごとの格差として現われる。上部に、旧「西欧」諸国が、そして、下部に、周辺の北欧・東欧・南欧諸国が、という二重構造が出来上がってくる。

そして、EUやユーロの安定を脅かしたのが、アイスランドに始まる周辺諸国であった。ギリシア、ポルトガル、ハンガリー、最近のアイルランド・スペインに見られるように、いずれも経済基盤の弱い国々が財政不安・金融危機・通貨不安の波に洗われた。これを解決するのは並大抵の努力では無理かもしれない。

改めて、EU統合と通貨統合の理念に各国が立ち返ることが求められる。それは何か、に答えることはできない。ただ言えるのは、現代のEUの実験・ユーロの実験は、はるか昔の中世期に、大西洋・地中海・カスピ海がとりまく広大な地域を「ヨーロッパ」として霧の中から浮かび上がらせた歴史的経験の再生のはずだ、ということだ。 (2010/11)

 


ヨーロッパ!ヨーロッパ! (2)中世への回帰

2014-02-12 07:37:50 | 異文化紀行

「ヨーロッパへの憧れ」の再燃を記したが、その憧れの内容は以前とはいささか異なっているようだ。

これまでの「ヨーロッパ」は、いわゆる「西欧」のことで、イギリス・フランス・ドイツなどの国々のことだった。
イギリスでいえば、ウィリアム・モリスなどの「アート・アンド・クラフツ運動」やカール・マルクスも通った大英博物館。フランスでいえば、フランス革命以来の華やかな近代史や印象派の絵画・フランス映画など。ドイツでいえば、バッハ・モーツァルト・ベートーヴェンなどのクラシック音楽やトーマス・マンの文学など。これらが関心の的だった。

それが、近年はやや関心の対象が変わってきている。

「ヨーロッパ」の起点は中世にあることを再認識したことが大きい。そして、中世とは、キリスト教とイスラム教とが共存し葛藤を繰り広げた時代で、その痕跡は、「西欧」だけでなく、周辺のヨーロッパ諸国にも数多く見られる。スペインのアンダルシアを旅して、このことを実感した。

中世の遺跡は、文字通り、ヨーロッパのいたるところにあり、私の訪れたところだけでも、スペインのアンダルシアのほかにも、ポルトガルのリスボン、チェコのプラハ、フランスのパリ左岸やシャルトル、オランダの田舎街、ドイツのケルン、などがある。これらの中世遺跡を訪ね歩くことは、「西欧」文化に触れることに匹敵する楽しみなのだ。

そして、中世への興味を引き出してくれた高校・大学の歴史教育に感謝する気持が大きくなった。 (2010/11)


ヨーロッパ! ヨーロッパ! (1) 憧れの地

2014-02-10 07:52:45 | 異文化紀行

人間は歳を重ねると小さい頃・若い頃に帰るようで、最近になって、高校時代に培った「ヨーロッパへの憧れ」が再び頭をもたげてきた。昨年はワーグナーの楽劇を聴くためにドイツを旅した。それは、私のヨーロッパ熱を再燃させるに十分だった。

そして、今では、行こうと思えば行けるのだが、なぜか前に踏み出せないでいる。萩原朔太郎の詠った「ふらんすに行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し」の状態に金縛りになっている。

そう、「ヨーロッパは遠い」のだ。これは、歳を重ねて、体力の衰えを自覚し始めた証しだ。これからは、何回もヨーロッパに行けないかもしれないと思っている。

それでも、是非行きたいところを3ヶ所挙げるとすれば:

ドイツ: ブレーメン近郊のヴォルプスヴェーデ村の芸術家コンミューンを訪ねる旅とワーグナーの楽劇を再び聴く旅を併せてしてみたい。季節はいつでもよい。今年2月のベルリン・ドイツ・オペラのワーグナー集中上演の例から推すと、冬になることも大いに考えられる。「ドイツ:冬の旅」の実現だ。

北イタリア:ミラノ・ヴェネツィア・フィレンツェの三都市は音楽・美術・文学の醸す垂涎のトライアングルだと思う。須賀敦子のミラノ、トーマス・マンのヴェネツィア、若桑みどりのフィレンツェは、どのようなたたずまいを見せていたのか? 通貨リラの恐怖から解放されて、イタリアも身近になった。

イスタンブールとブダペスト:ヨーロッパとアジアが交差し、キリスト教とイスラム教の歴史文化が交錯するイスタンブールは是非訪ねてみたい。
また、プラハ・ウィーンと歴史ある中欧の都市を巡った後には、ブダペストにも行ってみたいものだ。加えて、マジャールの面影をもたどってみたいし、温泉文化も興味あるところだ。

トルコ航空を使えば、イスタンブールとブダペストを一回の旅行で回れる旅程が組める。これを利用する。

以上、3回とも、ゆったりとした日程で、もちろんツアー旅行は使わずに、旅ができたら最高だ。
(2010/11)